2・3月度のベストアシストを受賞したのがこの山根だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 DAZNとパートナーメディアによる「DAZN Jリーグ推進委員会」は、今シーズンも「Jリーグ月間表彰」企画を実施する。スポーツ・サッカー専門メディアが独自の視点で、その月に印象的な活躍を見せた選手やチームを表彰する同賞。サッカーダイジェストWebは昨季に引き続き「Jリーグ月間ベストアシスト」を毎月選出する。

 その初回となる2・3月度のベストアシストには、横浜F・マリノスとの開幕戦で、川崎フロンターレの山根視来が、家長昭博の先制点をお膳立てした“ヒールパス”をセレクトした。加入1年目の昨シーズンに二冠達成に大きく寄与した右SBは、あの瞬間にどんなことを考えていたのか。開幕からここまでの戦いや、27歳にして待望の日本代表デビューを飾った日韓戦とともに、本人に振り返ってもらった。

【動画】「月間ベストアシスト」に輝いた山根のヒールパス(2分6秒〜)

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――開幕ゴールのアシストが「2、3月の月間ベストアシスト」に選ばれました。

「結果という形でチームに貢献するというのが今シーズンの目標でもあったので、一発目でそれが出せたというのは、シーズンに入るうえで自信になりました」

――その目標を設定したのは、どのタイミング?

「去年も得点+アシストで『10』は行きたいと思ってシーズンに入って、ギリギリ達成できた。でも、振り返ったら、たぶんもっと点を取れたし、アシストもできた。なので、今年も同じ数字を目標に設定しましたけど、それ以上にいきたいなとは開幕前から思っていました」

――開幕戦は横浜とのダービーでしたが、緊張感は?

「(ガンバ大阪との)フジゼロックス・スーパーカップをやっていたので、けっこうリラックスして入れたかな。でもマリノスは力のあるチームで、油断してたら絶対勝てないので、そこはかなり集中して入りました」

――実際にゲームに入って、どうでしたか?

「プレッシャーが速いチームですし、ラインもすごくコンパクトにしてくるので最初はちょっと戸惑いました。だけど、徐々に慣れてきて、前半で1点リードできたので、そこからはすごくリラックスしてできたかな」
 
――アシストの場面は、右サイドで味方がパス交換をしている間にするするとゴール前に上がっていきましたね。

「あそこで時間を作ってくれたので、センターバックが引き出されてスペースがあったのが見えた。あとはヤス(脇坂泰斗)が持った時のタイミングだけ間違わないように入って行って、最初はシュートを打とうと思ってたんですけど、カバーが来ていてコースもなかったので無理だなと。後ろにアキさん(家長)がいるのは追い越した時に分かっていたので、感覚ですけどボールを残す形でヒールパスみたいになりました。決めてくれなかったらこの賞もなかったので、枠に打ち込んでくれたアキさんに感謝したいですね」

――ヒールというアイデアで、守備側も意表を突かれたと思います。

「自分に何人か食いついてるのは感覚で分かっていたし、残せばいけるかなっていう、ほぼ感覚ですね」

――チームメイトからは何か声を掛けられた?

「ナイス、ナイスですね。第1節なので、みんな早く先制点が欲しかったと思うし、前半で決めれたので、ナイスって感じでしたね」
 
――今季は早くもアシストを連発していますが、他に印象に残っているのは?

「(小林)悠さんに出したやつかな、浦和戦の。悠さんが入っていく動きに合わせて、イメージ通りのボールを出せた。風も強かったので、そういうのも計算しながら出せて、自分のクロスの技術が自信になったアシストだったかなと」

――アシストする時にはゴールの道筋が見えている?

「そうですね。中にヘディング強い選手がいるので、そこに出せばそれなりにチャンスになると。浦和戦のアシストに関しては、ああいうボールを出せば、ヘッドで流しこんでくれるようなイメージがあった。決めた悠さんがすごかったですけど、自分の中でもイメージ通りに相手の穴を突けて正確にできたかなと思います」

――川崎は今季も圧倒的な強さをみせていますが、個人のパフォーマンスの手ごたえは?

「結果を残すという部分で、得点が取れていないという所と、代表に参加させてもらって、そこで得た経験で自分の基準が少し上がったという中では、もっとやらなきゃという思いはさらに強くなっていますね。代表から帰ってきてからの2試合もそうですけど、今シーズンは満足している試合はひとつもないですね、正直」

――シーズン開幕前、降格が4チームのため、川崎戦は勝点1でいいというチームも多いのではないかと予想されていました。実際に9試合を戦ってみての感想は?

「気持ちの面はすごく大事だと思う。1点差でのゲームが長い時間続くと、相手も『1点取れば同点』とパワーも残っていて、そこで追いつかれてしまった試合もあったし、決めきれなくて難しい90分間なってしまった試合もあった。相手も必死にやってくるけど、さらに自分たちの精度とか質のところで上回っていかなきゃいけないなと思ってやっています」
 
――昨シーズンと比べて、山根選手のプレーが研究されていると感じる?

「いや、それほど感じないですね。自分自身もできる事の幅がすごく広がったと思っているし、相手を見ながらサッカーするというのも徐々にできているので、やりづらいなっていうのはあまりないですね、自分次第だと思います」

――今シーズン、新たにプレーで意識しているところは?

「全部ですけど、しいて言うなら、目に入るのはやはり数字なので、そこは強烈に意識しながらやっています」

――三笘(薫)選手も、警戒されるなかで今季も活躍していますね。

「ドリブラーって一番わかりやすい特徴で、潰されやすいプレースタイルだと思うんですよね。オフ・ザ・ボールの動きが武器の選手なら相手を見てプレーできるし、ボールが良いところに来て、相手を外してしまえば、後はなにもできないですよね。ただ、ドリブルはオン・ザ・ボールなので、二人に来られると突破するのは大変ですし、パスで逃げるのはプライドが許さないという部分もあると思う。薫はすごく研究されていて、必ず二人で来られるので、大変だなと思いますけど、それでも結果を残してますし、警戒されてもその上を行く選手なんだろうなと感じています」
 
――日本代表についても聞かせてください。改めて代表デビューを飾った感想は?

「小さい頃から代表戦ばかり見ていたので、『プロサッカー選手=日本代表』みたいなところもあったし、プロでやらせてもらってる中で、J1でやっている以上は代表に入らなきゃいけないと思ってずっとやってきた。そういう小さい頃からの思いがあったので、かなり緊張しましたけど、その分良いプレーができた時とか試合に勝った時の喜びは大きい。アンダー世代も含めて、今まで一度も日本代表に選ばれたことがなかったので、国を代表する舞台に立てたことに、めちゃくちゃ興奮しました」

――外から見ていると、緊張しているようには見えませんでした。

「よく言われるんですけどね(笑)。たしかファーストプレーがディフェンスからだったんですよね、それが良かったと思います。相手も韓国だったので、球際の戦いになると思ってずっと準備していたので、そこで相手よりも上回れたというのが、あの試合は全てだったんじゃないかと思います」
 
――初の日韓戦の雰囲気は?

「韓国戦ということに対しては、代表に参加して改めて負けちゃいけない相手なんだというのを、短い準備期間でもすごく植え付けられましたね。外で見ているより、はるかに負けちゃいけないという思いになりました。(19年12月の)E-1選手権を見ていて、韓国の圧力はすごいなと思っていたので、お互いにそういう相手がいるというのはすごく良いことですし、日韓戦でデビュー戦できたというのは、自分の財産になるんじゃないかと思います」

――先制ゴールの場面は、なぜフォワードのような位置にいたのですか?

「流れの中で、あそこに入って行って残っていたんですよね。今年はキャンプからそういう所に入っていった時に結果を残せていたので、感覚としてあそこに入っていく事の大事さとか入っていけば何かがあるっていうのが自分の中にあった。あの時も、本当は(昨季にチームメイトだった)守田(英正)のパスを受けたかったんですけど。守田もあのタイミングで動けと思って出してくれたと思うし、あそこにいる人間の中で2人だけの関係だったんですけど、そういう感覚もできていた。結果的にこぼれ球でしたけど、あそこにいなきゃゴールは決められなかったので、いることが大事だったと思います」

――海外組とプレーでして感じたことは?

「インテンシティとかは、自分が想定した以上にまだまだ差があるなと。守田とも話をして、もっともっと激しいという事も聞いて。世界は広いなとすごく思いましたね」
 
――代表でプレーして得たもの、チームに還元できる部分があれば教えてください。

「インテンシティの部分で強度とか球際の強さとかJリーグでもっとお手本のようなクラブにならなきゃいけないと思っている。これだけ上手い選手が揃っている中で、激しくて強度の高い動きをしてるというフロンターレを、みんなが目指すようなクラブになりたいし、肌で経験してきた自分がそれを体現して、他の選手に『アイツがあれくらい行ってるなら、俺ももっと行かなきゃいけない』と思われるようなプレーを続けていきたいと思います」

――最後に今シーズンの目標は?

「チームとしては全ての試合に勝つこと、目の前の試合にひとつひとつ勝てば、残り全て勝利して優勝できるし、出た課題を次の試合で修正してどんどんレベルアップしていって、前の試合より強いフロンターレを更新していきたい。個人としては、その中でやはり圧倒的な存在でありたいし、上手さが最初に来るフロンターレの中で、強さとか量とかそういうところでみんなを引っ張っていける存在になりたいと思っています」

――ご自身初のACL(アジア・チャンピオンズリーグ)もありますね。

「出たことがないので、どういうものかは分からないですけど、みんなの話を聞くと、パワーで来たり、Jリーグみたいにつながずにバンバン蹴ってくるチームが多いみたいなので、そういうところも含めて強さは大事だと思うし、優勝したいですね」

取材・構成●サッカーダイジェストWeb編集部