新型コロナウイルス感染症が、開幕したばかりのJ1リーグを襲っている。ガンバ大阪に複数の陽性者が発生し、3月3日の名古屋グランパス戦、6日の鹿島アントラーズ戦、それに、10日の大分トリニータ戦が中止となったのだ。

 メディア上では「みなし開催」がトレンドワード入りしている。中止となった試合の代替開催日やスタジアムを確保できない場合、その試合は開催されたものとみなされることが、今シーズン開幕前に決定されている。今回のケースでは「一方のチームの責に帰すべき事由による中止」として、「帰責性のあるチームが0対3で敗戦」したこととして処理される。ガンバ大阪が0対3で負けたことになるのだ。

 Jリーグの村井満チェアマンは、「新型コロナウイルスに感染すること自体が責任を取らなければいけないもの、という認識は置いていません」と説明している。そのうえで、「チームには何が起こるか分からない、不測の事態に備えてチームを編成できるような準備をしてくださいということを、今シーズンのスタート前から重ねて申し上げている」とも語っている。感染のリスクは避けられないので、試合エントリーを満たす人員の確保に努めてください、ということだ。

 試合の開催基準を検討するJリーグ側からすれば、これ以上の要求も、これ以下の要求もできないと考えられる。一方で、「13人以上のエントリー」という試合開催の条件を担保するのは、「13」という数字の印象よりハードルが高い。

 感染予防の肝は「三密」を避けることだ。しかし、サッカーの練習では、「密」になる場面が避けられない。

 集団感染のリスクを避けるために、あらかじめ人数を少なくしたり、チームをふたつに分けたりしてトレーニングをすると、紅白戦の人数が足りない、セットプレーの練習ができない、といった弊害が生じる。シーズン開幕前ならともかく、シーズン中の対応としては現実的ではない。
練習以外の時間も選手を一括管理し、外部との接触をシャットアウトすれば、感染リスクをかなり抑えることはできる。しかし、1シーズンを通してキャンプのような生活を送ることもまた、現実的ではないだろう。

 だとすると、感染対策の徹底に行き着く。それでも感染者が出てしまった場合は、2種登録選手によって穴埋めしていくしかない。

 G大阪に話を戻すと、10日にはさらに3試合の中止が発表された。13日の北海道コンサドーレ札幌戦、17日のベガルタ仙台戦、21日の横浜F・マリノス戦までで、合計6試合である。

 今後の課題は代替日程の確保だ。Jリーグ側は「最終節以降に代替日をセットすることは原則ありません」との見解を示している。これは当然だ。リーグ戦終了のタイミングを合わせることは、不正を防ぐ意味でも欠かせない。

 だとすれば、現状では中断期間となっているオリンピック期間中の代替開催も、検討していくべきである。所属選手が五輪代表に招集されているチームと、されていないチームで戦力に差が生じる可能性が出てくるが、これを不公平とするよりも、「みなし開催」を避けることを優先したい。何人かの選手を欠くことになったとしても、試合を開催するほうが公平感を共有できると思う。

 昨シーズンも中止された試合はあったが、結果的に延期として対応することができた。「みなし開催」はあくまでも最終手段とし、全日程の開催を目指していくべきである。