入れ歯のはじまりは室町末期?徳川家康も使用した木製義歯とは。江戸時代の装着偉人も紹介
新型コロナウイルス感染症対策のためにマスクをするようになり、歯のお手入れが疎かになっている人が増えているようです。
気づいたときに、虫歯や歯周病(歯槽膿漏)になっていたらショックですね。
とくに歯周病は、糖尿病や脳梗塞といった病気との関係について研究が進められるなど、気をつけておきたい病気のひとつです。
実は、歯周病に悩まされて入れ歯となった歴史偉人たちもいますので、入れ歯の歴史とともにみていきましょう。
入れ歯のはじまりは室町末期?
日本に残っているいちばん古い入れ歯は木製で、「中岡テイ(通称:仏姫)」という尼僧が使っていたものです。
仏姫(ほとけひめ)が亡くなったのが1538年であることから、室町末期には入れ歯が広まっていたと考えられています。
この木製入れ歯のことを「木床義歯(もくしょうぎし)」と言い、仏姫が使用していたものは「お歯黒」の形跡もあり、実際に装着して食事にも使用されていたようです。
これは、歯が生えていない上顎部分に吸盤のようにくっつくよう作られていたためで、ヨーロッパより約200年も早い実用化だったとも言われています。
ちなみに、ヨーロッパで入れ歯に近いものが考えられたのは江戸時代中期以降とされていますので、日本の「入れ歯」歴史の長さには驚かされますね。
また、江戸時代に木床義歯を作っていたのは、歯とは無縁の「仏師」、仏像を彫る人だったと言いますから驚きです。
「木床義歯」について
画像:写真AC
木床義歯の材料となった木は「ツゲ」や「梅」、「黒柿」で、いちばん良い材料は「ツゲ」とされていました。
顎の型は、ミツバチのお腹から分泌した巣を構成するロウを精製した「密ろう」や松ヤニを混ぜたもので取っていたようで、材料こそ違うものの現代に近い過程と言えます。
画像:写真AC
また、食紅を使って入れ歯の当り具合をチェックしたり、当たって痛い部分を少しずつ削って直したりしながら仕上げていきました。
明治時代のはじめ頃までは、この木床義歯が使われていたようです。
明治以降に西洋から伝わったゴム製の入れ歯が伝わり、昭和のはじめには「アクリル系の樹脂」がドイツから伝わってきたことで、入れ歯は大きな進化を遂げました。
入れ歯の「歯」には驚きの素材も使われていた!
入れ歯の「歯」の部分には、ロウのように半透明でやわらかい「ロウ石」や動物の骨のほか、象牙や人間の歯も使われ、人工の歯が作られはめこまれていたようです。
人間の歯…!一体、誰の歯を使用するというのでしょうか…?
言い知れぬ恐怖や気持ち悪さを感じますが、当時の人々は威厳を保つために入れ歯を装着したとも言われていますので、そういったことは二の次だったのかもしれません。
歯周病に悩まされた歴史偉人たち
ここでは、歯周病に悩まされた歴史偉人たちについてみていきましょう。
徳川家康
画像:写真AC
戦国時代に終止符を打ち、江戸幕府を開いた歴史偉人。戦国時代から江戸時代はじめの武将であり、戦国大名。そして天下人でもあります。
源頼朝
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平安時代の終わり頃から鎌倉初期に、武将や政治家として活躍し、鎌倉幕府を開いた歴史偉人。異母兄弟にあたる源義経と力を合わせて平家と戦ったが、その後の兄弟確執は、お互いを討つまでに発展。悲しい兄弟の物語として語り継がれています。
真田幸村
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徳川家康を寸前まで追いつめた、安土桃山時代から江戸時代はじめにかけての武将であり大名。ゲームや小説では、ヒーロー的な扱いをされることが多いです。
豊臣秀吉
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戦国時代から安土桃山時代に活躍した武将であり大名。天下人でもある。農民出身とされていたが、現在では商人であったとも織田家の足軽であったともいわれています。
など。
このように見てみると、歯周病の歴史も長そうですね。
入れ歯を装着した歴史偉人たち
歯周病に悩まされていた徳川家康は、入れ歯を装着していたと言われています。
江戸時代には徳川家康のほかに、歴史に名を残した下記のような偉人たちも装着していたようですから、入れ歯をしていた人は意外と多かったのかもしれませんね。
杉田玄白
画像:イラストAC
「解体新書」や「蘭学事始」を手掛けた江戸時代の蘭学医。83歳と江戸時代にしては長寿だった玄白ですが、「耄耋独語(ぼうてつどくご)」には入れ歯を含む歯の悩みが多く綴られています。
滝沢馬琴
画像:イラストAC
「南総里見八犬伝」や「椿説弓張月」などを手がけた人気作家であり、原稿料だけで生計を立てていたとも言われるヤリ手。甘いものが好きだったことや自律神経が乱れてドライマウスとなっていたことから歯周病を発症、57歳で総入れ歯となりました。
本居宣長
画像:イラストAC
江戸時代の終わりに、「国学」という学問を形にし、古事記を研究して古事記伝を完成させた国学者であり、医師。入れ歯については、「老いた口の中にもういちど歯が生えてくるとは…」という喜びを綴った内容の和歌を詠んでいます。
など。
「歯」や「歯茎」を大切に
歯の汚れや多少の口臭はマスクで隠せても、虫歯や歯周病を誤魔化すことはできません。
東日本大震災のときには、口の中の衛生状態が悪くなり、唾液の減少による誤嚥のほか、誤嚥による肺での歯周病菌の増殖などがカラダに悪影響を及ぼし問題となりました。
歯磨きが難しい場合には、デンタルリンスやキシリトールガムなど、口の中を清潔に保つオーラルケア用品の携帯をおすすめします。