12月29日に第97回箱根駅伝区間エントリーが発表された。今回は当日変更できる人数が4人から6人に増えたことで、各校とも様子見のエントリーになった。ただ、前回優勝の青学大、2位の東海大、全日本大学駅伝優勝の駒澤大の3強のほか、全日本3位の明治大など有力校は1区と2区に、このまま変更なしと見られる選手の配置だ。


区間エントリーに変更がなければ、田澤廉(駒澤大/左)と名取燎太(東海大/右)の対決が再び見られる

 青学大の1区は前回も走った吉田圭太(4年/前回1区7位)。東海大は、今年5000mで13分48秒35の自己新記録を出している市村朋樹(3年/全日本2区19位)、駒澤大は加藤淳(4年/全日本1区3位)、明治大は児玉真輝(1年/全日本1区5位)。ともに1区でトップに立つことを目指すより、他校の出方を見つつ、終盤のスパート合戦から上位で2区につなぐという作戦だろう。

 このほか、1区には注目の順天堂大の三浦龍司(1年)や、今年は1万mを28分19秒26まで伸ばしている創価大の日本人エースの福田悠一(4年/前回4区4位)がエントリーされている。

 福田は集団になれば相手の力をうまく使うクレバーな走りができる選手で、区間賞候補のひとりだ。1区では確実に上位でつなぎ、2区にエントリーした留学生のフィリップ・ムルワ(2年)でトップに立つのが創価大の描いている作戦だろう。今回のムルワは最初から突っ込めるタイプ」と榎木和貴監督は期待している。ムルワは11月の1万mの自己記録を27分50秒43に伸ばしているだけに期待される。

 続く2区に、駒澤大は意外にもエースの田澤廉(2年)をエントリーしてきた。調子を見ての起用と見られるが、多少のタイム差なら逆転してトップに立てるという自信を持っているのだろう。

 東海大は、前回は流れに乗って2区をしっかり走った塩澤稀夕(4年/前回2区7位)ではなく、主力の名取燎太(4年)がエントリーされた。11月の全日本ではアンカー対決で田澤に敗れたが、前回の箱根は4区で区間2位になっているように、終盤の上りにも対応できる力に期待がかかる。田澤が抜け出したとしても、許容範囲のタイム差で抑えてくれるという読みもあるようだ。

 青学大は、前回2区5位の岸本大紀(2年)がメンバーから外れて、エントリーしてきたのは中村唯翔(2年)。全日本では3区を区間3位で走り、チームを6位に上げた選手だ。

 明治大は前回と変わらず加藤大誠(2年)を2区にエントリーしてきた。駒澤大が田澤で勝負をかけているのに対し、他の3校は集団走にうまく対応して走り、最後のきつい上りで、なるべくタイム差を開けられないようにつなごうという狙いだろう。

 駒澤大は、1区の加藤がそれほどタイム差のない順位で2区の田澤につなげられれば、田澤は創価大のムルワを最初から追えるはず。序盤のうちに上位集団から抜け出し、ムルワに追いつくことができれば、競り合いながら1時間6分台前半の走りができるだろう。トップ争いはともかく、他の大学と1分以上の差を築ける可能性もある。

 駒澤大の3区には青柿響(1年)、4区は酒井亮太(2年/全日本5区2位)、5区は円健介(2年)がエントリー。青柿は1万m28分20秒42を持っている選手で、酒井とともに今のエントリーのまま走る可能性もあるが、控えには小林歩(4年/前回7区5位)や、鈴木芽吹(1年/全日本3区5位)もいるだけに、往路優勝を優先すれば当日変更も十分あり得る。

 青学大は3区に大澤佑介(2年)、4区に脇田幸太朗(2年)と大学駅伝の経験がない選手をエントリーしているが、どちらかには全日本を走っている佐藤一世(1年/全日本5区1位)を起用してくるはず。

 また、5区には前回も走った飯田貴之(3年/前回5区2位)ではなく、前々回まで2年連続で5区を走っていた竹石尚人(4年)をエントリーしている。それは、飯田を平地区間で使いたい狙いがあるからだろう。そう考えれば3区には勢いのある佐藤で、4区は飯田に変更して前を追いかけるという形になりそうだ。

 東海大は、3本柱のうち唯一補欠になっている塩澤や、全日本の4区で区間新の石原翔太郎(1年)をどこで使ってくるかが注目される。順当なら3区と4区に石原と塩澤を並べて、駒澤大を逆転する形もありそうだ。

 そうなれば3区で青学大の佐藤と石原の対決にも注目が集まる。その結果、東海大はここでトップに立って、前回少し苦しい走りだった5区の西田に余裕を与えられれば、往路優勝も可能になってくる。前回は往路4位、復路で青学大をとらえ損ねての2位だっただけに、今回は往路から勝負をかけてきそうだ。

 駒澤大の復路には、6区が花崎悠紀(3年)、7区は花尾恭輔(1年)がエントリーした。花尾は全日本2区で区間11位だったものの、主要区間を走ったことを考えれば期待されている選手だ。ただし、7区には前回走った小林を当てることも考えられる。2区で田澤が独走す流ようなことになれば、他校が駒澤大を追いかける展開になる可能性もある。

 区間エントリーを見る限り、田澤を他の区間にしてタイム差を稼ぐという奇襲作戦を取らなかったのは、ほかの選手たちも十分に戦えるという手ごたえがあるからだろう。

 青学大の6区には郄橋勇輝(3年)がエントリー。7区の近藤幸太郎(2年)は、1万mで28分35秒28のタイムを持ち、8区の岩見秀哉(4年)も、前回も8区で区間2位と、ともに力のある選手。9区と10区に、補欠になっている神林勇太(4年)と湯原慶吾(3年)の順で前回と同じように並べれば万全になる。

 明治大は、主力の小袖英人(4年)と鈴木聖人(3年)、手嶋杏丞(3年)、櫛田佳希(2年)を補欠にして様子を見てきた。だが、青学大、東海大、駒澤大の有力3校が往路から攻める気配のなかでは、明治大も主力を入れてついていけるようにしなければならない。当日は、3区が小袖で4区は櫛田、5区は鈴木で7区に手嶋と主力を配置する可能性が高い。

 爆発力という点で他の3校と比較すれば、明治大が往路で主導権を握るのは難しそうだが、4区までの粘りに加え、5区と6区で前回より上積みできれば、大きな差をつけられ流ことなく、7区の手島で先頭争いに割り込むこともできるだろう。

 有力とされる4校が、復路にも選手をそろえていることを考えれば、優勝争いはかなり混戦になりそうだ。