『空に住む』より
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 「これは経費で落ちません!」(2019・NHK)、「私の家政夫ナギサさん」(2020・TBS)とドラマも好調つづきの女優・多部未華子が、公開中の映画『空に住む』では孤独を抱えたヒロインを演じている。

 両親が急死した現実を受け止めきれないまま、おじ夫婦の計らいでタワーマンションの高層階で暮らすことになった直実を主人公に、周囲のさまざまな人々とのかかわりを通じて、葛藤しながらも未来へ歩き出そうとする現代女性の姿を描く本作。EXILEら人気アーティストの楽曲を手掛けてきた作詞家・小竹正人による小説を基に、『共喰い』などの青山真治監督が長編映画7年ぶりのメガホンを取った。

 多部ふんする直実は、両親の死にも涙を流せずにいた。長年の相棒である黒猫ハルと暮らし、気心の知れた職場の仲間やおじ夫婦に囲まれながらも、喪失感を抱え、浮遊するように生きる、そんな直実の前に現れたのは、同じマンションに住むスター俳優・時戸森則(岩田剛典)だった。しかし、彼との夢のような逢瀬に溺れながら、先は見えないことはわかっている。

 井上鉄大プロデューサーは「直実の抱える悩みや不安定さという、つかみどころのない心の内面をちゃんと観客に感じてもらえる女優」を探していたところ、「ナチュラルな雰囲気を持ちながらも、生身の女性としての美しく強い芯を感じさせてくれるという、非常に稀有な魅力を持つ女優、多部未華子さんしか考えられない」と強くオファーしたという。

 原作者の小竹も「多部未華子さんは、令和の女優さんではなく、映画という娯楽がもっと活き活きとしていた昭和の時代からタイムスリップしてきたような独特の雰囲気のある女優さんだと思いました。『私、演技が上手でしょ?』的なわざとらしさが皆無なのに、何とも言えない味わい深い表情をしたり、さりげないセリフを絶妙なニュアンスで言ったり」とその自然な表現力を絶賛。

 「原作で主人公の直実が持っている救いようのない生ぬるさや陰鬱な感じが、多部さんが演じることで軽減されていたのがありがたかったです。言い換えると、私が上手に描けなかった直実の魅力を青山監督と多部さんが引き出してくれた気がします」と感謝の思いを明かしている。(編集部・中山雄一朗)