クーペスタイルが主流で区別が曖昧になっている

 クルマ好きが使う専門用語は、門外漢の方には通じないことが多いといいますが、それなりのクルマ好きであっても「ノッチバック」と「ファストバック」の定義を明確にいえる人は少ないのではないでしょうか。

 まず「ファストバック」から。英語表記では“fastback”となり、直訳すれば「速い後ろ姿」といったところでしょうか。おそらく、この言葉が広まったのは1964年式のフォード・マスタングが、そのクーペボディのバリエーションとして採用したのがきっかけ。

 語源の通り、速そうに見えるシルエットを示すもので、ルーフからリヤウインドウにかけてのラインが斜めになっていて、トランクリッドが短めなスタイルを示します。しかし、1964年式のマスタングを現代的な視点で見ればわかるように、じつはそれほどトランクリッドが短いわけではありません。あくまでも、当時の標準車やトレンドに対してリヤがなめらかなフォルムになっていることを「ファストバック」としてアピールしたといえます。

 また、現行の国産車ではマツダのMAZDA3の5ドアハッチモデルが、自らファストバックと名乗っていますが、こちらはハッチバックモデルであって、クーペボディではありません。つまり、ファストバックと呼ぶのに明確な定義はないといえます。ルーツであるマスタングに倣い「後ろ姿がスポーティで、速そうに見える」ことがファストバックの定義といえるでしょう。

ノッチバックは明確な折れや段差が特徴だ

 一方、「ノッチバック」は英語では“notchback”と書きます。ダイヤルを回したときのカチッカチといった感触をノッチと呼びますが、notchが示すのはそうした刻み目といった意味です。そのほか切れ込みやくぼみといった意味があります。ですからノッチバックというのは、リヤウインドウとトランクリッドの分かれ目が明確になっているスタイリングを示します。

 古典的な説明では「3ボックスと呼ばれるセダン型スタイル」を示すといいますが、そうとは限りません。リヤウインドウとトランクリッドの分かれ目が明確であればノッチバックといえますから、クーペであってもノッチバックと分類することも可能です。たとえばAE86レビン/トレノの2ドアクーペは典型的なノッチバッククーペといえるフォルムですし、その伝統はAE92、AE101へと受け継がれました。

 そして現代は典型的なセダンだからといってノッチバックとはいえない時代になっています。現行型のトヨタ・クラウンのシルエットを、ルーツといえるマスタングと比べれば、十分にファストバックと呼んでふさわしいといえることがわかるでしょう。

 世界的にクーペフォルムが人気で、ほとんどの4ドアセダンがファストバックに分類されるのが最新のトレンド。というわけで、最近ではノッチバックと呼べるクルマがずいぶん減ってきています。現行モデルの国産車で間違いなくノッチバックに分類できるのはトヨタ・センチュリーくらいかもしれません。

 まとめると、ファストバックの定義は速そうに見えることで、リヤウインドウとトランクリッドがなめらかにつながっているスタイルを示します。そのためセダン、クーペだけでなくハッチバックボディのなかにもファストバックと名乗るモデルが存在するなど増加中です。その反対に、古典的なセダンに多いとされていたノッチバック・スタイルのモデルは少数派になりつつあるのが現状です。

 いずれにしても、ノッチバック、ファストバックとも何らかの厳密なルールがあるわけではありません。ですから、こうした呼称について、それほどこだわる必要はないのかもしれません。