ソシエダ戦で81分までプレーした久保。(C)Mutsu FOTOGRAFIA

写真拡大 (全2枚)

 プレシーズンマッチ4戦目、ビジャレアルはフランシス・コクランとパコ・アルカセルのゴールでレアル・ソシエダに2−0で勝利を収めた。

 ウナイ・エメリ監督はこの日も4−4−2を採用。スタメンはGKがセルヒオ・アセンホ、DFラインが右からルベン・ペーニャ、ラウール・アルビオル、ソフィアン・チャクラ(パウ・トーレスはスペイン代表に帯同中)、ハウメ・コスタ(アルベルト・モレーノは故障)が並び、中盤はビセンテ・イボーラとコクランがダブルボランチを形成。左右両サイドはモイ・ゴメスとサムエル・チュクウェゼが入り、そして2トップはアルカセルとタケ・クボ(久保建英)が務めるというベストに近い布陣だった。対するソシエダは怪我人と新型コロナウイルスの陽性者と合わせて合計12人が欠場するという手負いの状態だった。

 ただ4−4−2といっても、タケはアルカセルと基本的に縦の関係を築き、モイ・ゴメスとチュクウェゼとほぼ横一線に並ぶことが多かったので、実質は4−2−3−1といってもよかった。タケにとってはプレシーズン初戦のカルタヘナ戦と同じトップ下での出場だった。周囲と思うように連携、連動できずボールになかなか絡むことができなかったその時と比べて、この日は、前線と中盤のつなぎ役を見事に果たした。
 
 とりわけ実力者同志がお互いの持ち味を出し合った前半は見応えがあったが、その時間帯、タケはチュクウェゼとモイ・ゴメスとともにチームを牽引。相手のビルドアップの邪魔をしたり、スペースを埋めたりと守備に奔走しながら、攻撃では正確なパスで試合のコントロールに寄与し、さらにカウンターでもスピードに乗ったドリブルで起点になった。

 タケのプレイヤーとしての資質の高さを感じさせるのが、ボールを呼び込む動きとそこからのプレーの選択肢の豊富さだ。相手2ライン(DFとMF)間を動き回りながら、積極的にイボーラやコクランのパスの受け手となり、そしてボールを受けると素早いターンからドリブルやワンツーを駆使したり、サイドにパスを出して展開したりと、敵陣の攻略を試みた。

【動画】久保建英が2点に絡んだソシエダ戦のハイライトはこちら
 
 最大のハイライトは、アルカセルのPKによる2点目に繋がったプレーだろう。密集でボールを奪うやモイ・ゴメスにパスを送り、相手のファウルを誘発した。自らも得点のチャンスはあったが、トラップが流れてしまい、初ゴールはお預けになった。利き足ではない右足だったので一旦ボールをコントロールしたうえでシュートを狙ったのだろうが、ダイレクトで合わせてほうがよかったかもしれない。

 この日のタケのプレーからはとにかく、自分がチームを引っ張っていこうという強い意志が伝わってきた。サイドの選手とのポジションチェンジを巧みに織り交ぜながら、局面に応じて適切なプレーを選択し、相手DFにとって危険な存在であり続けた。

 後半に入ると、相手のソシエダがメンバーを落としたこともあり、試合のリズムが低下した。その中で、タケは81分まで出場した。右サイドのチュクウェゼとポジションを入れ替えるシーンが目立ったが、そのナイジェリア人アタッカーが交代で退く(63分)と、変わって右サイドを主戦場にプレー。パスワークの起点となって3点目のチャンスを創出したが、角度がなかったこともありフェル・ニーニョのシュートはGKの正面を突いた。

 
 献身的にアクティブに動き回りながら、危険な場面に顔を出して、得点機を演出。ゴールを挙げることはできなかったとはいえ、ラ・リーガ開幕のウエスカ戦を11日後に控えた中で自らに期待されているプレーを見せた意義は大きい。

 とりわけ自慢のスピードとテクニックは大きな脅威となり続けており、ドリブルで抜け出そうとしてアリツ・エルストンドに後ろからユニホームを引っ張られイエローカードを誘発させたプレーに象徴されるように、ソシエダのDF陣がファウルでしか止められない場面も少なくなかった。

文●ハビエル・マタ(アス紙ビジャレアル番)
翻訳●下村正幸