最新版「財政が健全な都市」全国トップ10

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3年連続1位だったみよし市から首位を奪取したのは、同じ愛知県の刈谷市だった(写真:いお/PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、各地の自治体の対応に世間の関心が集まっている。平時には住民サービスの向上や人口増加に向けた取り組みに目が向きがちだが、非常時に住民の生命と暮らしを守れるだけの財政的な備えができているか、という視点も忘れてはならない。


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東洋経済『都市データパック』編集部では、以下の5つの視点(カテゴリー)から自治体の財政を評価し、財政健全度ランキングを算出している。
(1)支出が収入の範囲内に収まっているか(収支)
(2)外部環境の変化があっても柔軟に対応できるか(弾力性)
(3)支出を税収で賄えているか(財政力)
(4)税収には安定した裏付けがあるか(財政基盤)
(5)財政上の負担を将来世代に先送りしていないか(将来負担)

『都市データパック2020年版』では、掲載対象に新たに町村を加えた昨年から引き続き、全国の市町村を対象として財政健全度を算出した(他市と比較可能な指標がそろわない東京23区は除外)。

ただし、市と町村には、歳出の多くを占める福祉事務(生活保護や障がい児、母子家庭の支援など)の実施が義務付けられるか否かといった違いがあり、財政状態について単純に比較することはできない。そのため、算出指標は同一でも、ランキングの基となる偏差値は市と町村で別々に算出している。

3年連続1位だったみよし市は2位に

市の財政健全度では、1位刈谷市、2位みよし市、3位安城市と、トップ3を愛知県内の市が独占した。いずれの自治体も市内にトヨタ自動車関連の事業所が多く、ベッドタウンとしての性質も併せ持つ。

これら3市は共通する点として、弾力性のカテゴリーで評価が高く、強固な産業基盤を背景とした潤沢な財政収入がある半面、財政規模に対して固定的な支出が十分に抑制されていることが挙げられる。

一方、町村の財政健全度では、テレビ番組などで「日本一裕福な村」として取り上げられることもある飛島村(愛知)が、昨年に続いて1位となった。同町南部には臨海工業地帯が整備され、工場、倉庫、発電所などが多く立地している。

2位の忍野村(山梨)は、コンピュータ数値制御や産業用ロボットで世界首位のファナックの本社が所在。自然豊かな観光地としても人気が高い。

3位の川越町(三重)は、交通利便性が高く、町東部の臨海工業地域に多くの企業が立地。中部電力・川越火力発電所も擁する。

上位3町村はいずれも、収支カテゴリーでやや順位が下がるものの、財政基盤と将来負担のカテゴリーの評価が高い。豊かな税収をため込むことなく住民に還元しつつも、将来世代に負担を先送りしていない状況がうかがえる。

なお、今回の財政健全度ランキングでは、主として、公表されている最新値である2018年度の財務情報を用いたことから、新型コロナによる影響が考慮されていない点には留意いただきたい。程度の差はあれ、いずれの自治体でも今後、新型コロナによる財政への悪影響は避けられないだろう。

「財政健全度ランキング」算出指標 (末尾に※を付した指標は小→大の順に算出)

■ ランキングの対象
2020年6月時点で全国にある1718市町村(792市、926町村)を対象とし、市と町村それぞれで偏差値を算出して順位を算出。他市と比較可能な指標がそろわない東京23区は除外。

■ 算出指標
「収支」、「弾力性」、「財政力」、「財政基盤」、「将来負担」の5つの視点から、20のデータを用いて算出。

■ 算出方法
各指標について平均値を50とする偏差値を算出。すべての指標の偏差値を平均したものを「総合評価」としている。偏差値は、特異数値による過度の影響を避けるため、各指標の最高を70、最低を30に調整している。

A. 収支
(1)実質収支比率(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(2)人口当たり財政調整基金残高(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(3)人口当たり歳入決算総額(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(4)人口当たり人件費・物件費等歳出総額(※)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」

B. 弾力性
(5)経常収支比率(※)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(6)公債費負担比率(※)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(7)義務的経費比率(対歳出総額)(※)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(8)自主財源比率(対歳入総額)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」

C. 財政力
(9)財政力指数(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(10)人口当たり地方税収入額(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(11)納税義務者1 人当たり課税対象所得(2018年):総務省「市町村税課税状況等の調」
(12)平均地価(全用途)(2019年7月):国土交通省「都道府県地価調査」

D. 財政基盤
(13)人口増減率(3年前比)(2019年1月/2016年1月):総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
(14)生産年齢人口比率(2019年1月):総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
(15)生産年齢人口当たり民営事業所数(2016年6月):総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
(16)事業所当たり売上(収入)金額(2015年):総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」

E. 将来負担
(17)将来負担比率(※)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(18)人口当たり地方債残高(※)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(19)地方債依存度(対歳入総額)(※)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」
(20)実質公債費比率(※)(2018年度):総務省「市町村別決算状況調」