コロナ禍でいつも以上に幸せな時間が増えたというご夫婦の「幸せの秘訣」を紹介します(写真:Yagi-Studio/iStock)

「コロナ禍で夫が1カ月休業になってしまいました。私の仕事も不安定で生活不安はあるのですが、夫がお休みのお陰で家庭的にはすごく助かっているというか、いつも以上に幸せな時間が増えた感じがしているんです」

ふんわりとした口調でそう話すのは、恵子さん(仮名、29歳)です。

ここ2カ月ほど、コロナ離婚やコロナうつの悩み相談が多かった私にとって、“コロナが幸せに結びつく”というのはとても新鮮に感じたひとことでした。

お悩みを抱え気持ちがふさぎ込んでいる世間のご夫婦に、こんな時こそ改めて「幸せってなんだろう」「幸せな関係ってなんだろう」ということを感じていただきたく、恵子さんご夫婦の「幸せの秘訣」をご紹介したいと思います。

出会いはSNS、初対面の瞬間に交際の申し込み

恵子さんのご主人は1つ年下の28歳外食産業勤務のサラリーマン。普段はハードワークで夜遅くに帰宅するため、家族そろって過ごせる時間は、起床する朝8時ころからご主人が出勤する12時までの4時間ほどだそうです。

この限られた時間で夫婦の会話、2歳になる1人娘との時間を過ごした後ご主人は仕事へ出掛け、恵子さんは娘さんのお世話をしながら、自身のお仕事であるイラストレーターの作業に取り掛かるのという毎日だと言います。

恵子さん夫婦は現在結婚3年目で、そもそもの出会いはSNSでした。

5年前、恵子さんはSNSでたまたま見つけた美しい桜の写真へ思わずにコメント。その桜の写真を投稿していたのが今のご主人でした。

そこからコメント交流が始まり、毎日電話をするようになったと言います。ご主人から「東京へ遊びに来てくれたら案内しますよ」という誘いもあり、桜コメントから2週間後に恵子さんはふるさとの三重県から東京へ遊びに来てすぐに交際がスタート。毎日の電話で心の距離は縮まっていましたので、恵子さんが東京に到着しお互い会った瞬間、彼から交際の申し込み。恵子さんは人生初めての東京で彼氏をゲットしたのでした。

当時恵子さんは、三重県で歯科クリニックの受付の仕事をしながらせっせとイラストを描いてはSNSへ投稿という毎日でした。しかし、彼から「遠距離恋愛はなるべくしなくない。イラストの仕事をしたいなら東京のほうがチャンスがたくさんある」と促され、その2カ月後に上京したのでした。

出会いから2カ月足らずで東京で2人暮らしがスタート。当時芸人を目指していたご主人はアルバイト生活で、手取りは10万円にも届かないほど。恵子さんも上京したものの、すぐにイラストレーターの仕事があるわけもなくアルバイト生活で同じく手取りは10万円に届かないほどだったと言います。東京で暮らすにはとても厳しい経済状況です。

そこで、生活を切り詰めるために、「減らせるのは食費だ!」と、恵子さんは一念発起。なんと月たったの2万円で2人ごはん生活をスタートさせたのです。

「お金を残す」意識で節約の達成感を楽しむ

買い物と料理は主に恵子さんが担当し、根菜類や大豆、納豆などの安くて高たんぱく質の食材やカサ増しのために使う卵は多めにストックし、冷凍の利く野菜、保存の利く食材を買うようにしていったそうです。

月食費2万円の節約生活をスタートさせてから、ご主人が飲み会で4000円ほど使ってくれば「うちの食費の6日分じゃん!」と怒ることもあったと言いますが、生活のためにも節約をしっかりしてくれている恵子さんにはご主人も理解を示し、ご主人自身も月2万〜3万円のお小遣いの中でしっかり節約を実践するようになっていったと言います。

筆者自身も上京間もなく在宅介護の仕事をしていた20年前は、超が付くほどのブラック企業にもかかわらず月給の手取りは15万円ほどで、アパートの家賃が6万円、食費は頑張っても月3万円の節約が限界でした。

食べたいものへの我慢や外食を控えるなどかなりストレスがあったことを思い出し、我慢によってストレスを感じたことはないのか恵子さんに尋ねてみると、「食費を削ったからといって栄養を削るわけではないのでカラダの負担はないですし、何より、目に見えてお金がこれだけ浮いた!とわかるので、達成感のほうが先に来て楽しくなるんです」と、貧しさや節約を恨むどころか清々しいまでのスーパーポジティブな恵子さん。

「節約」というより「お金を残す」というポジティブな意識転換がそうさせているのでしょう。苦しいときこそ発想の転換は気持ちを豊かにしてくれるものです。

とはいえ、何かけんかとか、2人の間にネガティブな時間が流れることがないわけはないだろうと根ほり葉ほり聞いてみると、「うーん……」としばらく沈黙の後に、「主人が芸人の道を諦めてから、主人の精神状態が不安定になった時期はありましたね。今の飲食店の仕事にたどりつくまで本当にいろんな仕事をしてきたのですが、やりたくもない仕事、好きになれない仕事をしなければならない時間がつらかったみたいで、カラダも壊して大変でした。その時期には私も主人と一緒によく泣いていました。なるべく主人と気持ちを共有しなければならないと思っていました」と。

お話を聞けば聞くほど、恵子さんはそもそも“人の心の源や癒やし方”を知っている人でした。

ただ状況や感情に流されるのではなく、「大変な状況を頑張ってくれている」と思える人や、「感情を共有することでお互いの絆を深めていく」ということが自然とできる人は、不毛な感情のぶつかり合いは起こさないものです。

それに加え、恵子さん曰くご主人は、“イエスマン”で、けんかがないのもご主人のおかげなのだそう。ご主人もきちんと恵子さんに感謝の気持ちを持っており、お互いによい時間を共有できるように、「お互い意見は必ず言うこと」「もしけんかをしても次の日には持ち越さず、寝たら忘れること」の2つを絶対の約束事としているとのこと。

苦境も「発想の転換力」で心豊かなコンテンツに

ご主人は芸人の道を諦め、現在の飲食店にたどり着き恵子さんと結婚。
今の職場が大好きで、生きがいを感じていると言います。

ご主人も飲食店に勤め始めてから料理に興味を持つようになり、時々恵子さんに「料理の基本を教えてほしい」といって台所に一緒に立ったり、お休みの日には買い物にも同行し、一緒に節約レシピを開発したり、自身の開発レシピを披露するようになったりと、「月2万円の節約レシピ開発」を通して、夫婦の共有する時間がとても濃密なものになっていったそうです。

もちろん、娘さんが生まれてからは、娘さんの栄養を一番に考えてのメニュー開発をしており、“2人ごはん”は“2.5人ごはん”へ。

恵子さんも今ではイラストレーターとして大活躍されており、経済的な生活苦もない状況ですが、月2万円の節約レシピは継続中です。

「食費を抑えていてもおいしいものはできますし、娘とうどんをこねるとか、家族全員で一緒に作れたり、何かを共有できる時間がとても幸せなんです。しかも今主人はコロナの影響で1カ月休業になってしまって、今後の不安はもちろんゼロではないのですが、休業のおかげで毎日娘と仲良く遊んでくれるので、私が仕事しなければいけない時間はとくに助かっているんです」

節約にしろ、コロナ休業にしろ、一見ネガティブなイメージが先行してしまうものでも、それは必ずしも苦しさや貧しさではないのだと、恵子さんを見ていて感じます。「発想の転換力」を持っていれば、どんな状況でも、むしろ心を豊かにもできるコンテンツになってしまうのです。

「2万円の中でおいしいものを作る」「お金を残す」という“同じ目標を持つこと”により、お互いの結束力も高まりますから、恵子さん家族にとっては、“月2万円の節約”が幸せのアクセントになっているのですね。