オス化したタマカイ(体重8.0kg)。(画像:近畿大学発表資料より)

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 タマカイという高級魚がいる。大ぶりな雌雄同体の魚で、50kg以上のサイズになると雄に変化するとされているのだが、近畿大学の研究グループは、生簀で養殖していた3歳(3〜9kg)のタマカイを雄化させることに世界で初めて成功した。

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 タマカイはスズキ目ハタ目に属する魚類である。大きさは魚類の中でも最大級の部類で、2メートルから3メートルほどの全長になり、体重は最大で400kgにもなる。

 ハタ目の魚と言うと、幻の魚とも言われる高級魚のクエも同じハタ目に属する。近畿大学水産研究所では、このクエとタマカイの交雑種(クエタマ)の養殖の研究も行っている。

 タマカイ自体も美味な魚であり、東アジアから東南アジアにかけて高級魚として流通している。特に台湾では珍重され、魚の王などと呼ばれる。日本でも、主に沖縄で食用にされている。しかし、上記のことから所与の必然として乱獲が進み、絶滅危惧種となっている。

 タマカイはまず、みなすべて雌として生まれてくる。5歳くらいで30kgを超える体重になると、雄に性転換する。つまり、繁殖に使う雄のタマカイを入手するのが困難なのである。

 今回の研究は、2015年に台湾から導入した稚魚を早い段階で雄化させることを目指し、雄性化ホルモンを投与したところ、3歳のタマカイ17尾から精液を輩出させることに成功したというものだ。

 タマカイの養殖技術は存在しないわけではなく、台湾などでは広く行われているのだが、これまで日本国内でタマカイの雄化を成功させたのは50kg以上の個体においてしか例がなく、また3〜9kgという大きさでの雄化となると世界的にも例のない成果となる。

 今後、今回の技術がタマカイと国内産ハタ類の交雑養殖魚の作出などに繋がっていくことが期待される。