「HOOTERS」は現在、日本では6店舗を運営している(写真:Splash/アフロ)

チアリーダーをイメージしたコスチュームを着たスタッフによる接客を特徴とする飲食店「HOOTERS(フーターズ)」を日本で運営するエッチジェーは3月25日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。

カジュアルなバースタイルの店舗で、東京では赤坂や銀座などに展開している。もともと「フーターズ」はアメリカで生まれ、そして、同じスタイルで世界展開している。このエッチジェーはアメリカから営業ライセンスを取得して日本で営業していた主体だった。

直近の決算は営業赤字

なんといってもそれを有名にしたのは、女性店員のスタイルにある。ショートパンツに、タンクトップ。ある意味、わかりやすい格好で、日本人男性客に訴求していた。筆者が独自に入手した情報では2016年9月期に17億円を超えていた売上高は、2018年9月期に15億1400万円に下落していた。かつ、その期は営業赤字。本業で儲けが出ていなかった。負債額は約5億6000万円ほどだという。

現時点では、詳細がわかっていない。なお、私は個人的に、5回の訪問経験がある。そのすべてが取引先との訪問だった。また、海外を含めれば10回ほどの経験となる。しかし私のような例がある一方で、リピート客の創出が容易ではなかったようだ。

近年では福岡店をオープンしたものの、業績はふるわなかった。既存店も苦戦していた。日本全体で人材確保が困難であるのにくわえ、昨今では、料理の食材仕入れ価格も上昇していた。

この騒ぎで法人登記簿を取り寄せてみたら、この状況を予期していたためか、ほとんどの取締役は辞任していた。趣旨ではないので、この取締役の方々の個人名はとりあげない。

ただ、最後に残ったのは、監査役と1人の取締役を除けば、社長とその肉親だった。筆者が独自に入手した情報によるとエッチジェーは役員報酬もほとんどとっておらず、この数年は苦しい闘いを強いられていたようだ。現預金は大幅に減少し、それは建物や設備の投資に使われたが、結果は芳しくなかった。前述のとおり、店舗の不振が続き、そして、赤字が累積し、自主的な再生は難しいとして、今回の判断に至ったと思われる。

何か1つの致命的なものがあったというよりも、民事再生は複合的な理由による。

ところで、繰り返すと、日本では「フーターズ」がアメリカの営業権を獲得して拡大していった。だから、本国と直接的なつながりはない。ただ、ここであえてアメリカの様子から、後付けの理由を考えてみたい。

アメリカ本国でもフーターズは失速

まず、事実として、アメリカのフーターズ拠点数は2012年から2016年にかけて7%以上も減っており、さらに売上高も縮んでいる。これはフーターズ自体の店舗運営が特別に悪かったというよりも、女性を売り物にしているコンセプトが、なかなか社会にそぐわなくなってきた結果と思われる。

フーターズガールは、もちろん、男性のある種の理想を体現していたには違いない。しかし、そのフィクショナルな偶像は、もはやセクシャルハラスメント的な色合いも帯びる。特に若い世代には顕著になってきている。

かつてフーターズでは女性店員たちのマニュアルが暴露されたことがあったが、そこには大文字で「SMILE!!!」と記されていた。笑顔であることは、特にフーターズの店員だけの要求項目だけではないはずだが、そこには、男性客から何らかの言動があった場合にも許容すべきとする文化がにじみ出ていた。

フーターズは、これまでも何度かビジネスモデルや、主要な収入源を変更しようと試みてきた。その1つが航空会社だった。しかし、それもうまく行かず、3年後にはビジネスの終わりを迎えた。

ネット記事を検索すると、かつては、フーターズガールになったら高い時給を得て、学費を稼ぐには最高の手段だったと語った当事者の回想録も見つかる。自分の美しさゆえに、学位を取得する前の自分自身の資産を最大限に活用するためには最良の方法だったというような話だ。

アメリカでフーターズはそもそも1983年に設立された。そして、多くの模倣者も生んでできた。注目したいのは、フーターズがある種のカウンターとして誕生した点だ。1980年代といえば、フェミニズム運動が盛んになってきた時代だ。そのときレーガン大統領が共和党から出て、保守的な家族構成を賞賛したときだった。革新に対する、保守的なものの逆襲。フーターズと、その流れをあわせるのは、いささか気が引けるが、アメリカ的な伝統といえるものの、ある種の象徴だった。

そして、そこから30年以上が経って時代は変わった。今や世界的な「#Me Too運動」の影響も受けざるをえない。さらに、あのわかりやすい女性たちからの接待は、さほど、訴求性をもたなくなってきた。

世間の建前と矛盾する

もちろん、フーターズガールは勤勉だろうし、その魅力は私も認めるところではある。これまた繰り返すと、あくまでも日本は、フーターズの直営ではなく、エッチジェーによる営業権の取得による営業にすぎない。

しかし、私は、エッチジェーの民事再生とフーターズの不調に、ある種の傾向を感じずにはいられない。それは、つまり、女性をわかりやすく商品化することの終焉である。もちろん、これはキャバクラなどの商業施設が敗北を迎えることを意味しない。そうではなく、メジャーな形態で営むことが、世間の建前と矛盾するのではないか、ということだ。

人間は、そして男性は本質を変えてはいないが、大きな転換点を迎えている。日本におけるフーターズの行き詰まりは、それを示唆しているようだ。