プレーだけではなく、精神面でもチームを引っ張っていかなければいけない年齢になり、新たな役割を担うことになる。まさに、その立場の変化が、香川に責任感を芽生えさせた。「引き締めるところは引き締めてやらないといけないことは非常にあります。自分も年齢が上なので、その自覚は積極的に持っていきたいと思っています」という言葉が、それを証明している。
 
 スタメンに名を連ねたボリビア戦では、森保一監督にキャプテンマークを託された。
 
「ある程度自分がやるだろうなと予想はしていました。だからと言って、何かを変えるわけではない。しっかりとやることはひとつです。ただ、よりチームに自信や勇気を与えなきゃいけないポジションではあるので、先頭に立って、新たなチャレンジだなと思いながらやっていました」
 
 キャプテンの命を受けた香川は、『しっかりと辛抱強く、うまくいかないこともあると思うけど、やり続けて、どんどん前に勢いを持ってやっていこう』とチームを鼓舞したという。
 
 2011年1月から約9年間、日本代表の10番を背負ってきた男だ。若手への影響力は小さくなかっただろう。その存在の大きさは南野拓実の言葉からも分かる。
 
「ピッチ内では、みんな知っているとおり、一番実績のある選手です。練習からも、例えば乾君とのコンビネーションだったり、ターンで前を向く技術だったり、そういうところは僕も参考にする部分はいっぱいありました。それにピッチ外でも気さくに後輩と同じテーブルに着いて色々喋ってくれました。今回のチームにとって重要な存在だった」
 
 ピッチ内外でチームをまとめながらも自分の価値もアピールする。香川はそんな難題に挑んでいたのである。ボリビア戦のあと、優先すべきはチームの機能性か、自身のアピールか、どちらを重視していたかを訊かれた香川はこう答えている。
 
「両方です。もちろん僕は攻撃の選手なので、ベテランになろうが、奪いに行くものは奪いにいかないといけない。そこはしっかりとバランスを持ちながら、もちろんチームとして戦うことも大事ですけど、そこは絶対に忘れちゃいけないところではあるので」
 
 そして、今後もその重責を負い続けることになるだろう。それでも香川は新たなチャレンジを前向きにとらえている。
 
「(現チームには)非常に良い選手が多いなと感じた。ただこれからもっと厳しい戦いがたくさん待っているなかで、自分自身も必ず、このチームの力になりたいですし、それは個人的にはもっと証明していかなければいけない。そういう意味ではこの2試合、初めてこの体制で呼ばれて一緒にやれたことはポジティブです。次につなげるためにまたベジクタシュにプレーし続けないといけないと感じている。まずはあと2か月。5月までやり切っていきたい」
 
 円熟期を迎えながら、これまで以上に責任感を強める香川は、再び森保体制に戻り、地位を確立できるか。奮起に期待したい。
 
【PHOTO】日本対ボリビア戦を彩った「美女サポーター」たち

取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)