仕事は15分単位で区切るべし。“朝令暮改”孫正義の元秘書に聞く「超効率仕事術」
「今日こそは、早く帰るぞ!」と意気込んだものの、予定外の仕事を頼まれたり、仕事の修正依頼がきたり…結局定時までに終わらない!
もっと効率よく仕事をこなすには、一体どうしたらいいの?
というわけで今回は、“朝礼暮改”で知られるソフトバンク孫社長の秘書として9年間活躍し、孫社長の 度重なる“むちゃぶり”を期限内に解決。独立後は自ら経営する会社で“ほぼ残業時間ゼロ”を実現したという三木雄信さんに、効率よく仕事をこなすためのワザを聞いてきました!
【三木雄信(みき・たけのぶ)】東大経済学部卒。三菱地所を経てソフトバンク社長室長に就任。孫正義氏のもとで、マイクロソフトとのジョイントベンチャーや、日本債券信用銀行(現・あおぞら銀行)買収、およびソフトバンクの通信事業参入のベースとなった、ブロードバンド事業のプロジェクトマネージャーとして活躍。2006年に独立後、ラーニング・テクノロジー企業「トライオン株式会社」を設立。長時間労働が多くなりがちな語学教育業界の中で、残業が月平均約4時間を実現。自身も「残業ゼロ」に成功。著書に、『孫社長のむちゃぶりを解決してきたすごい時間術』『孫社長のむちゃぶりを解決してきたすごいPDCA』(ダイヤモンド社)など多数
〈聞き手=ライター・星佑貴〉
優先順位を明確にするために、「10秒以上悩むもの」はやらない
ライター・星:
効率よく仕事をするためには、「仕事の持ち球をすぐ打ち返す」と、『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごい時間術』(ダイヤモンド社)にも書いてありました。
効率よく仕事を打ち返すには、どうしたらいいんでしょうか?
三木さん:
上司はいつだってむちゃぶりしてきます。孫社長なんて、「今すぐ!」「大至急!」しか言いませんから(笑)。
でも、そういうときこそ冷静に、“やるべきこと”よりもまず、“やらないこと”を決めて、優先順位を明確にすることが大切です。
三木さん:
自分のなかだけで優先順位をつけるのではなくて、持っている仕事が自分でできることなのか、人に頼む(相談する)べきなのかを仕分けするといいですよ。
ライター・星:
頼んだら、他の人に迷惑をかけてしまうと思って、なかなか頼れなかったりするんですよね…
三木さん:
真面目な人ほどそう考えてしまうと思うんですけど、逆ですよ。
会社員で、チームを組んで仕事をしている以上、組織が目標を達成することがゴールじゃないですか。できないことを溜めこんである日突然「終わってません!」となったほうが大きな迷惑(笑)。
三木さん:
孫社長は日頃、「戦略とは、“戦いを略すこと”」とよく言っていて。いかに最短距離でゴールに行けるかを考えるべきなんですよね。
ライター・星:
自分でやることと、人に頼むこと、正確に見極める方法ってあるんですか?
三木さん:
自分で考えて、10秒以上悩んでしまうものは、すぐに誰かに相談してください。
ソフトバンクの会議では、何か問われたときに「検討します」は禁句だったんですよ。そんなこと言ったら、もう次の会議に呼ばれないです。検討するんじゃなくて、すぐに相談する。そうしないと、どんどんゴールが遠くなっちゃうんですよね。
仕事を一度で完結させるために大切なのは、15分単位で動くこと?
三木さん:
そういう僕も、入社して早々結構なミスをやらかしたこともありました。
ちょうどソフトバンクに転職したての、社会人3年目、25歳のころですかね。
ライター・星:
その話、詳しくお伺いしたいです。
三木さん:
孫社長ってゴルフが大好きなんですけど、ある時72っていう驚異的なスコアを出したんですよね。(72以下ならプロ顔負けと言われている)それで、記念にスコアを印刷した「テレホンカード」を配りたいってスコア表を持ってきたんです。私が受け取って、あとで業者に頼もうと思っておいてたんですけど。
どういうわけか、そのスコア表をなくしちゃって。
本当に笑えなかったそう
ライター・星:
それは、相当やばい状況では…
三木さん:
クビを覚悟しました(笑)。
このときね、 “仕事を一次完結させる”ことの重要性に気がついたんです。「ひとつの作業は一度で完結させること」。これ、意外とできてない人が多いんですよ。
ライター・星:
耳が痛い…。つい、後回しにしちゃうんですよね。
三木さん:
そういう人はね、意識するだけじゃなくて作業を15分ごとに区切るといいですよ。
ライター・星:
それって、30分や1時間じゃダメなんですか?
三木さん:
最初から大きい単位で予定を組むと、ムダな時間を含む可能性があるんです。
そうすると何が起きるかって、スピードが遅くなるのはもちろん、余裕ができちゃうので他の作業に目移りしちゃうんです。
ライター・星:
なるほど。ほかの作業を見る余裕がないぐらいの短時間のほうが集中できて、一気に完結させやすいんですね!
ムダな仕事が多いのは、品質過剰でアウトプットしているから
三木さん:
あと、ムダな仕事をしないためには、「期待値のすり合わせ」をしておくことです。
期待されてることはする、されてないことはしない。その線引きができないと、いつまでたっても効率よく仕事が回らないんですよ。
三木さん:
僕も最初のうちは、いつもダメ出しされてばかりでした。
孫社長がプレゼンで使う資料はすべて僕がつくっていたのですが、直前になって「使えないからやり直し!」とむちゃぶりされ、徹夜することもしょっちゅうでした。
ライター・星:
そこから、効率よくこなせるようになったきっかけはなんだったんでしょう?
三木さん:
このままじゃ自分の身体が持たないと思って(笑)。資料をつくる過程で、細かく孫社長に確認してもらうようにしたんです。
「ラフ段階ですが、タイトルはこれでいいですか?」「ざっと目次を書いてみたので、一度確認お願いします」って。
そうしたら、これまで修正に追われていた時間がウソのようになくなった。
ライター・星:
この確認作業が「期待値のすり合わせ」なんですね。
三木さん:
そう。そこから、これまで品質過剰でアウトプットしていたことに気がついたんですよね。
たとえば、気合いを入れてパワポで企画書を提出したら、「ワードでまとめるだけでよかったのに」とか言われたことありませんか?
ライター・星:
あります! しかもつくり込んだぶん、指摘された修正をするのもヘビーで、すごく時間かかってしまうんですよね…
三木さん:
部下からしたら、「こんなに手をかけてつくったのに文句を言われる」とやる気がなくなる。上司からしたら、「アウトプットが遅い」という気持ちになる。お互い不幸になるじゃないですか。
だったら、不完全で構わないので、最速のアウトプットでまずは確認してみることが大事です。
ギブアップしそうになったら、最終奥義「イタコ回避術」
ライター・星:
働いていると、「どうしても無理!」ってギブアップしたくなる瞬間もあると思うんです。
そういう、本当にキツいときの最終奥義ってあるんでしょうか?
三木さん:
孫社長になりきるんです。
「僕は孫社長のイタコみたいなものだったので(笑)」
ライター・星:
…え!?
三木さん:
僕の場合は孫社長ですが、自分の尊敬する人や、優秀な上司ならどうするか、どう思考してこの困難を乗り越えるのかを徹底的に考えてみるんです。
ライター・星:
でも、能力が及ばずなりきれないんじゃないんですかね…? 考えるだけでいいんですか?
三木さん:
うまくコピーできているかどうかは、孫社長にはなれないから、実はあまり重要じゃないんですよ。
人って追い詰められると、気がつかないうちにマインドブロックがかかってしまうんです。思考の幅が狭くなって、「自分には出来ない、才能がない」と思いこんでしまう。
だから、演じてみるという感覚に近いんですけど、一旦別の人になりきって問題と向き合ってみる。そうしてマインドブロックを解いていくんです。
ライター・星:
新しい考えを見つけるために、誰かになりきることでスイッチを切り替える感じなんですね。
三木さん:
そうそう。ただ、身近な人じゃないと「この人ならどうするだろう」というイメージが湧きにくいので、“最も身近にいる優秀な人”になってみるといいです。
今、独立して会社を経営していますが、困難なことだらけです。僕もその度に、孫社長になってますよ(笑)。
取材中、三木さんがたびたび「孫社長は超人だけど、自分には特別な才能があったわけではない」と語っていたのが印象的で、多くの読者もそう思っているんじゃないかと思います。
だからこそ大切な、“優先順位・一次完結・仕事の仕分け・期待値のすり合わせ”。この4つを意識して、明日からムダな残業とはおさらばしましょう。
〈取材・文=星佑貴(@yknk_st)/編集=宮内麻希(@haribo1126)/撮影=森カズシゲ〉
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