麻酔は植物にも効くと判明
手術に欠かせない「麻酔」が、植物にも効くことが明らかになりました。麻酔薬の調査研究での検体に、動物の代わりに植物を用いることで動物実験を減らせる可能性があります。
Anaesthetics stop diverse plant organ movements, affect endocytic vesicle recycling and ROS homeostasis, and block action potentials in Venus flytraps | Annals of Botany | Oxford Academic
Something really fascinating happens when you give plants anaesthetic
http://www.sciencealert.com/turns-out-plants-susceptible-anaesthetics-humans-movement-action
Scientists Discover Plants Respond to Anesthetics - Which Could End Animal Testing
https://futurism.com/scientists-discover-plants-respond-anesthetics-end-animal-testing/
ドイツ・ボン大学のヨカワ・ケンさんと蔭西知子さんの研究チームが、動物と同じく植物も麻酔に反応することを実験で明らかにしました。
実験では、手で触れると反応することで知られるMimosa pudica(オジギソウ)や、ハエを捕らえる食虫植物のDionaea muscipula(ハエトリグサ)に、麻酔作用のあるジエチルエーテルやキセノン、リドカインなど数種類の麻酔効果を持つ化学物質を付与すると、麻酔作用よって反応が鈍ることが確認されました。
麻酔薬としてのジエチルエーテルにさらされたオジギソウは、筆で触れても反応しない状態になっています。なお、約7時間で麻酔の効果が切れ、通常通りオジギソウは触れられると葉を閉じるようになるそうです。
ハエトリグサはジエチルエーテルにさらされると、ハエを捕まえるために葉を閉じる能力を15分間失い、粘着力のある毛で虫を捕らえる食虫植物Drosera capensis(アフリカナガバナモウセンゴケ)もエーテルにさらされることで葉を曲げる能力が失ったことが確認されています。興味深いことに、実験で使用した麻酔作用を持つ化学物質は、化学的な構造に類似性があるわけではないため、植物の反応は偶然ではないとのこと。
研究者たちは、植物が活動を停止した理由について、植物が動くきっかけを与えるのに必要な活動電位が発生するプロセスが麻酔による化学反応で阻害されるからではないかと推測しています。
意外なことに、手術の際に人間にも用いられる麻酔のメカニズムについてはよくわかっていません。そのため麻酔薬の開発では効果を調べるために動物実験が必要となっていますが、麻酔に反応する植物をモデルとして麻酔試験を行うことで、動物実験を減らせるのではないかという指摘があります。