ごく一般的な殺虫剤に含まれている

写真拡大

殺虫剤に含まれる「ピレスロイド」に曝露した子どもは行動障害リスクが高くなる可能性を示唆する研究結果が、仏レンヌ大学のジャン・フランソワ・ヴィエル博士らの研究チームによって発表された。

「ピレスロイド」はハエや蚊、ゴキブリ、ダニなどの駆除に使われる家庭用殺虫剤に一般的に含まれている成分で、世界各国で広く利用されている。神経細胞に作用して麻痺を起こす神経毒で、昆虫などには高い効果がある一方、哺乳類や鳥類への影響は極めて低いとされていた。しかし、神経に影響を与える成分のため人体に影響を与える可能性も懸念されていることから、ヴィエル博士らは検証に取り組んだという。

研究では2002〜2006年に仏ブルターニュ地方で出産した母子287組を対象に、子どもが6歳の時点で子どもの精神的健康状態を評価する「Strengths and Difficulties Questionnaire (SDQ)」という調査票に回答してもらった。さらに妊娠中から現在までの母親の尿分析と、現時点の子どもの尿分析を実施。子どもの行動とピレスロイドの関係性を分析している。

尿中からピレスロイドを検出することはできないため、調査ではピレスロイドが分解されて生じたと思われる5種類の成分濃度を測定した。

その結果、妊娠中にピレスロイド由来成分の尿中濃度が高かった母親から生まれた子どもは、そうでない子どもに比べ「不安感が強い」「他者と関係を嫌がる」「一人でいることを好む」といった「内在化問題行動」をとるリスクが高くなっていた。

また、ピレスロイド由来成分の尿中濃度が高い子どもはそうでない子どもに比べ、「人や物に攻撃的」「かんしゃくを起こす」「注意散漫」といった「外在化問題行動」リスクが高かった。

ただし、リスクの高低はピレスロイド由来成分によって大きく異なり、今回測定した5種類の成分のうち1種類は外在化問題行動リスクの低下に関連しているとわかった。今回の研究では因果関係は不明だが、ヴィエル博士は「ピレスロイドが行動障害の原因となりえることを示しており、曝露を避けることが子どもの行動障害予防にはよいのではないか」とコメントしている。

発表は2017年3月1日、環境医学分野の専門誌「Occupational & Environmental Medicine」オンライン版に掲載された。

参考論文
Behavioural disorders in 6-year-old children and pyrethroid insecticide exposure: the PELAGIE mother-child cohort.
DOI: 10.1136/oemed-2016-104035 PMID: 28250046

医師・専門家が監修「Aging Style」