いつまでも「ワル」を続けると…(イラスト・サカタルージ)

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「理由なき反抗」「俺たちに明日はない」......。く〜っ、カッコいいね〜。突っ張って青春時代を生きるのは若者の特権だが、50代になった自分を考えたことがあるだろうか。

ヤボを承知でアドバイスすると、20代で攻撃的な性格だった人物ほど、50歳になった時点で物忘れが激しくなり、思考能力が衰えることが明らかになっている。

「我慢できない人」は50歳の認知テストが30%悪い

この研究をまとめたのは、米国立老化研究所のチームだ。米国神経学会誌「Neurology」(電子版)の2016年3月2日号に発表した。論文によると、研究チームは1985〜1987年の調査開始時点で25歳だった男女3126人を対象に、若い時の性格が中年になってからの認知能力にどんな影響を与えるかを調べた。

具体的には次の方法で調査が行なわれた。

(1)25歳の時点で性格テストを行なった。「クックとメドレイの敵意スケール」という他者への攻撃性や思いやりなどの度合いを測る国際的な標準テストだ。たとえば、「物乞いにおカネをあげるか」「性的に不道徳な人を見た時どう思うか」「自分の嫌な噂話を聞いた時どう対応するか」「嫌いな人間がひどい目にあっているのを見た時どうするか」「不当なことをされると仕返しをしたくなるか」など膨大な質問項目に答え、性格を評価する。

(2)性格テストの結果から、参加者の性格を「攻撃的」(hostile)と「努力する」(effortful)の面から評価した。参加者を「攻撃性がとても弱い」「弱い」「強い」「とても強い」の4段階に分類した。また、「大いに努力する」「努力する」「努力しない」「まったく努力しない」の4段階でも分類した。

(3)その後、参加者が50歳になった2010〜2012年に、言語記憶力・注意力・集中力テストなどを行ない、認知能力を検査した。

その結果、25歳の時に「攻撃性がとても強かった人」は、「とても弱かった人」に比べ、認知能力テストの成績が平均で21%低かった。また、「まったく努力しなかった人」も「大いに努力した人」に比べ、成績が30%も低かった。これらは人種や性別、経済状態、受けた教育やかかった病気、親しい人を亡くすなどの不幸の要因を調整しても変わらなかったという。

「性格が悪い」と認知症になるリスクが2倍

研究チームは論文の中で、「若い頃の2つの性格要因がその後の認知障害に影響を与えることがわかりました。つまり、攻撃的かどうかと、我慢強くてストレスに対処できる能力があるかどうかです。攻撃的でストレスに対処できない人は中年になってから思考能力が衰えます。青年期の性格を和らげることが老齢期に入っても高い認知力を維持できる可能性につながります」とコメントしておる。

今回の研究は「観察研究」なので、因果関係は明らかにしていないが、同様の研究が東フィンランド大学によって、同じ「Neurology」(電子版)の2014年5月28日号に発表されている。同大学のプレスリリースによると、研究チームは、「攻撃的性格」(hostile)ではなく「皮肉っぽい性格」(cynical=シニカル)と認知症の関係を調べた。健康な平均年齢71歳の男女1449人の「皮肉っぽさ」の度合いと認知症の発症リスクを分析すると、皮肉屋の度合いが一番高い人は、低い人に比べ、認知症を発症するリスクが2倍高かった。

東フィンランド大学の研究も「観察研究」なので理由は明らかではないが、いずれにしろ、性格の悪さは早いうちに直した方がよさそうだ。