春日部東vs山村国際
沼田（春日部東）
本来、秋の大会は割と全体的に日程に余裕があり、日程が順調に進めばエース一枚で勝ち進むことも可能だ。だが、今大会は県大会一回戦が雨の影響でいきなり二日順延した。その影響もあり日程が詰まってしまった。二日あった休養日はなくなり、一回戦を突破しても次は連戦となる。さらに、その連戦を仮に突破しても三回戦のまでの休養日は一日しかない。三回戦からベスト8の休養日も一日だ。つまり、一回戦からベスト8まで6日で4試合を戦うこととなる。もちろん、既に県大会であり、良い投手を温存することは難しいが、次の試合で投げさせられない状態になるも避けなければならない。春日部東、山村国際両ベンチが共にそのことを頭に入れながら勝ち上がるという難しいハンドリングが求められる試合となった。
注目の先発は、山村国際はエースの福田 航介(2年)、一方の春日部東は右サイドハンドの沼田で試合が始まる。
序盤は、この両投手が落ち着いた立ち上がりを見せたこともあり、静かな展開となる。
だが、春日部東打線は二巡目に差し掛かったあたりから徐々に山村国際・福田を捉え始める。それでも、3回、4回と共に2塁に走者を進めながら、山村国際の外野が浅く守っていたこともあり、ヒット1本では返せず、結果4回で6安打を放ちながら無得点に終わる。
そんな中先制したのは山村国際であった。
4回裏、山村国際打線も二巡目を迎え徐々に春日部東・沼田を捉え始める。この回先頭の前田 琳太郎(2年)が四球で出塁する。続く柳志宏(2年)は送れず一死となるが5番・大野がライト前へポトリと落ちるヒットを放ち一死一、二塁とする。ここで、続く櫻田 将也(2年)がレフト前タイムリーを放ち1点を先制する。さらに、7番・石井がライト前へポトリと落ちるヒットを放ち一死満塁と追加点のチャンスを迎えるが、続く福田はピッチャーゴロ併殺に倒れこの回の攻撃は1点で終える。
一方の春日部東もすぐに反撃を開始する。
5回表、先頭の廣瀬 大樹(2年)がライト前ヒットを放ち出塁し、すぐに二盗を決めると、さらに相手キャッチャーがファンブルする間に三塁へと進み無死三塁とする。一死後、3番・福田知弥(2年)がレフト越えのタイムリー二塁打を放ちまず同点とすると、続く齊藤力(2年)も左中間へタイムリー二塁打を放ち逆転に成功し山村国際・福田をマウンドから引きずり降ろす。代わった二番手・飯塚に対しても春日部東は攻撃の手を緩めず、5番・土屋 壱成(2年)のポテンヒットと続く仲井間 嵩(2年)の四球で一死満塁とすると、ここで7番・高橋 隆斗(2年)がライトへ犠飛を放つなどこの回3点を奪い、一気に試合をひっくり返すことに成功する。
福田（山村国際）
その後は山村国際・飯塚と春日部東は5回からマウンドに上がった背番号18の二番手・白畑が好投を見せゲームは3対1のまま終盤へと進む。
迎えた8回裏、2点を追いかける山村国際が猛反撃を開始する。
この回先頭の田嶋が一塁線を破る二塁打を放ち出塁すると、続く森田 拓真(2年)もセンター越えの二塁打を放ちまず1点、さらに、2番・川原がセーフティバントを決め無死一、三塁と絶好の同点機を演出する。ここで、一死後、4番・柳がレフト前タイムリーを放ちついに山村国際が3対3の同点とする。さらに一死一、二塁、山村国際は一気に逆転のチャンスという所で春日部東ベンチはエース南野をマウンドへ立てる。
このピンチを南野が冷静に併殺で切り抜けると、9回表、春日部東は先頭の廣瀬が四球で出塁すると、すぐさま二盗を試みる。これが見事に決まると、さらにキャッチャーの悪送球の間に一気に三塁を陥れ無死三塁とすると、続く高野がライト前タイムリーを放ちすぐに4対3と勝ち越しに成功する。
それでも、粘る山村国際は、その裏南野を攻め立てる。この回先頭の櫻田がショートへの内野安打で出塁し無死一塁とする。ここで一気に逆転サヨナラを狙った山村国際は強攻に出る。一死後、代打山田(冴)がセンター前ヒットを放ち一死一、二塁とチャンスを広げるが、後続が倒れ万事休す。最後は春日部東が4対3で逃げ切り二回戦へ駒を進めた。
まずは、山村国際だが、打線は一気に畳みかける事が出来ればなお良いが、それでも新人戦の頃のような劣勢になり淡泊になる姿はこの日は見られず、最後まで喰らいついていった所は成長の跡が見られた。悔やむべくは、むしろ、先制してもらった後と、同点に追いついた次の回、共に簡単に先頭を出し失点してしまった投手陣であろう。投手陣は6枚と豊富だが、同じようなタイプの投手が多く、ややバリエーションに欠ける印象を受けた。左腕や変則投手などが一本立ちしてくると状況も変わってくるのではなかろうか。
一方の春日部東も、決して柱になる投手がいる印象は受けなかったが、バリエーションは豊富であり過密日程に耐えられるだけのメンツは揃っている。打線も、特に内野手はすべて今夏のレギュラーとして出場するなど経験は豊富だ。最終回1点を勝ち越した後、尚続くチャンス無死一、二塁で、フライを三つ打ち上げてしまった所はややいただけないが、秋の時点ではその優位性を保つことはできるであろう。勢いに乗れば面白い存在になる可能性を秘めている。
（文＝南 英博）
