“鬼ポジティブ”は新しい世代の心を整えるか。日本代表DF太田宏介「ぼくの道」
日本代表DF太田宏介の 「ぼくの道」がぴあ株式会社から発売された。太田宏介は、著書の中で自分は運が良いと語っている。しかし、こういってはなんだがそうは見えない。むしろ悪い方にさえ見える。
おそらく誰が見ても、太田宏介の第一印象は今時の若者といった感じだろう。喋り方、雰囲気、失礼ながら顔の作りなどから判断するとかなりチャラそうに見える。現にあるバラエティ番組でも驚きのチャラさを披露している。女の子に向かって「俺めっちゃ晴れ男だから」なんてチャラい男じゃないと絶対に言わない。
オランダ移籍が決まった当時、在籍していたFC東京のサポーターをしている友人に太田選手の印象を聞いた事があった。その答えは少し意外で 「素直。涙もろい。超がつく真面目」 といったチャラいイメージからかけ離れたものだった。
しかし、よく考えるとその言葉たちは本当にかけ離れている物なのだろうか?自分の過去を振り返ると、体育祭や文化祭の打ち上げでもバイトの送別会でもワンピースを読んでも、思いっきり泣く奴は決まって少しチャラい奴だった気がする。チャラくないやつほど素直じゃないし、人前で泣くのを拒む気もする。実はチャラいと、素直と涙もろいと真面目は同居しやすいものなのかもしれない。そしてそれは常に自分と向き合っているスポーツ選手にとって、必要不可欠なことは間違いない。
サッカー選手の著書と言えば、少し前に流行った日本代表キャプテン長谷部誠の「心を整える」が有名だ。日々の小さな行いからメンタルをコントロールする術がつまったベストセラーだ。心を整える、なんてキャッチーで良い言葉なのだろうか。品行方正な長谷部選手にピッタリの最高のフレーズだ。
対するは「ぼくの道」。本書の中の数少ない “” に入った言葉は 鬼ポジティブ だ。なんてチャラい言葉なのだろうか。長谷部選手と同じく素直で真面目なはずなのに、そこにチャラさが入るとこういう印象の言葉になる。本書を読めばわかってもらえるが、太田選手は感動してしまうほど真面目で素直な好青年だ。しかしそこに混じ入るこのチャラさは、この男の愛すべきポイントの一つ なのだろう。
自身を運が良いと語っている一文がある。しかし、読み進めるとそんな事はない。むしろ悪い方だ。中学一年にして腰椎分離症を患っているし、川崎フロンターレユースには落選、家庭環境の急変で私立の強豪高校進学も断念している。
それでも運が良いと語るのは、良い出会いをしてきたという自覚があるから。今までのキャリアを通して出会った人物の意見を素直に聞き入れ、苦難があってもそれを乗り越えることで成長してきた。この人は 親の離婚問題でさえも成長のきっかけにする力を持っている。
例えば自分が落ち込んでいる時に、「ポジティブになれよ」と言われるとうるせーよと反発してしまう気持ちが出てしまうことがある。しかし「鬼ポジティブになれよ」と言われると、なんだか軽い感じがして 素直に受け入れることが出来る気もする。チャラさと真面目さと素直さが入り混じったこの言葉は、すごく優しい。
本人はそんなつもりはなく書いたのかもしれないが、実はこの本には「心を整える」とはまた違ったメンタルコントロール術が詰まっている。一見ただの自著伝に見えるこの本から学べる事は、数限りなくあるだろう。
(沢野奈津夫)
俺めっちゃ晴れ男だから
おそらく誰が見ても、太田宏介の第一印象は今時の若者といった感じだろう。喋り方、雰囲気、失礼ながら顔の作りなどから判断するとかなりチャラそうに見える。現にあるバラエティ番組でも驚きのチャラさを披露している。女の子に向かって「俺めっちゃ晴れ男だから」なんてチャラい男じゃないと絶対に言わない。
しかし、よく考えるとその言葉たちは本当にかけ離れている物なのだろうか?自分の過去を振り返ると、体育祭や文化祭の打ち上げでもバイトの送別会でもワンピースを読んでも、思いっきり泣く奴は決まって少しチャラい奴だった気がする。チャラくないやつほど素直じゃないし、人前で泣くのを拒む気もする。実はチャラいと、素直と涙もろいと真面目は同居しやすいものなのかもしれない。そしてそれは常に自分と向き合っているスポーツ選手にとって、必要不可欠なことは間違いない。
キーワードは鬼ポジティブ。タイトルもこれでいいと思う
サッカー選手の著書と言えば、少し前に流行った日本代表キャプテン長谷部誠の「心を整える」が有名だ。日々の小さな行いからメンタルをコントロールする術がつまったベストセラーだ。心を整える、なんてキャッチーで良い言葉なのだろうか。品行方正な長谷部選手にピッタリの最高のフレーズだ。
対するは「ぼくの道」。本書の中の数少ない “” に入った言葉は 鬼ポジティブ だ。なんてチャラい言葉なのだろうか。長谷部選手と同じく素直で真面目なはずなのに、そこにチャラさが入るとこういう印象の言葉になる。本書を読めばわかってもらえるが、太田選手は感動してしまうほど真面目で素直な好青年だ。しかしそこに混じ入るこのチャラさは、この男の愛すべきポイントの一つ なのだろう。
運が悪いなんて思わない!だって鬼ポジティブだから!
自身を運が良いと語っている一文がある。しかし、読み進めるとそんな事はない。むしろ悪い方だ。中学一年にして腰椎分離症を患っているし、川崎フロンターレユースには落選、家庭環境の急変で私立の強豪高校進学も断念している。
それでも運が良いと語るのは、良い出会いをしてきたという自覚があるから。今までのキャリアを通して出会った人物の意見を素直に聞き入れ、苦難があってもそれを乗り越えることで成長してきた。この人は 親の離婚問題でさえも成長のきっかけにする力を持っている。
鬼ポジティブになろうぜ!
例えば自分が落ち込んでいる時に、「ポジティブになれよ」と言われるとうるせーよと反発してしまう気持ちが出てしまうことがある。しかし「鬼ポジティブになれよ」と言われると、なんだか軽い感じがして 素直に受け入れることが出来る気もする。チャラさと真面目さと素直さが入り混じったこの言葉は、すごく優しい。
本人はそんなつもりはなく書いたのかもしれないが、実はこの本には「心を整える」とはまた違ったメンタルコントロール術が詰まっている。一見ただの自著伝に見えるこの本から学べる事は、数限りなくあるだろう。
(沢野奈津夫)