女の本分は、お国のために子を産み増やすことだ「とと姉ちゃん」57話
連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第10週「常子、プロポーズされる」第57話 6月8日(水)放送より。
脚本:西田征史 演出:大原拓
常子(高畑充希)がついに武蔵(坂口健太郎)からプロポーズされた。
嬉しさしかないはずの求婚も、なにやら難しい問題をはらんでいるようだ。
武蔵は大阪に行くという。つまり、常子に大阪に行ってほしいということだろう。
どうする常子?
おりしも、常子は、自分の生き方を考えざるをえない状況に追い込まれていた。
ひとつは、小橋家の問題。
美子(杉咲花)の常子に対する苛立がピークに。
美子の本心は、常子に父親代わりの自己犠牲でなくやりたいことをやってほしいと願っているのだと鞠子(相楽樹)が代弁する。
この出来事は、常子が本当はなにをしたいか考えるきっかけになったはず。
さらに、会社の問題。
不倫で退社に追い込まれた諸橋道子(野村麻純)に関して、責任はどちらか一方じゃなく双方にあるはずだと
早乙女(真野恵里菜)は山岸(田口浩正)にもの申す。よかった真野ちゃん、また、正論吐いてくれて。
「解せません」という言葉も古めかしくてすてき。
対して山岸は「女の本分は お国のために子を生み増やすことだ」と言っちゃう。あーあ。
不倫両成敗問題、女の出産問題と2016年に大問題になっていることばかり。この脚本、いつ書いたのか気になる。
山岸の話から女の本分とは何かと常子が考えた時、子を生むことだと言ってたからそうだ結婚しよう、大阪行こうとなって、ちゃんちゃん。となったら驚くが、そんなふうになるわけはない。
予告を見ても、この後、木金土の流れに悲しい予感しかしない。でも、武蔵が良いキャラクター過ぎて、彼が出なくなるのは大打撃だ。ここはなんとかしてほしい。モチーフになった実在の人物のように生涯独身ではなく、常子は武蔵と結婚したほうがいいと切に願ってしまう。
57回はこの、常子、プロポーズされる問題に尽きるとはいえ、ほかにもちょっと気になる場面があった。
美子が常子に反抗して部屋を出ていく時、「私だけじゃないよ。まり姉だって言ってるもん。」と捨て台詞を吐く。取り残された鞠子と、彼女をじっと見る常子と君子(木村多江)。気まずいだろう、これ。だめだろ、美子。ここは、鞠子に「おーーい!」「残されたわたしの立場は!」とかなんとか言ってほしいところだが、あくまで生真面目に、前述した美子の常子への本心を語るのみ。
「とと姉ちゃん」はおしとやかなのだ。それはラストにも現れていた。プロポーズされてびっくりする常子のアップの後、沸騰しかかった鉄瓶が映る。ベタな想いのメタファーなら、もっとヌケヌケと、ぴー!って鉄瓶が沸騰するくらいでもいいのに、なんかもうおしとやか。それが常子の性格と重なっている。ところが、高畑充希の表現力の押し出しは強い。大阪話で眼がうるうるしているところなど、少女漫画のひとこまのようだった。
(木俣冬)
脚本:西田征史 演出:大原拓
常子(高畑充希)がついに武蔵(坂口健太郎)からプロポーズされた。
嬉しさしかないはずの求婚も、なにやら難しい問題をはらんでいるようだ。
武蔵は大阪に行くという。つまり、常子に大阪に行ってほしいということだろう。
どうする常子?
おりしも、常子は、自分の生き方を考えざるをえない状況に追い込まれていた。
ひとつは、小橋家の問題。
美子(杉咲花)の常子に対する苛立がピークに。
美子の本心は、常子に父親代わりの自己犠牲でなくやりたいことをやってほしいと願っているのだと鞠子(相楽樹)が代弁する。
この出来事は、常子が本当はなにをしたいか考えるきっかけになったはず。
さらに、会社の問題。
早乙女(真野恵里菜)は山岸(田口浩正)にもの申す。よかった真野ちゃん、また、正論吐いてくれて。
「解せません」という言葉も古めかしくてすてき。
対して山岸は「女の本分は お国のために子を生み増やすことだ」と言っちゃう。あーあ。
不倫両成敗問題、女の出産問題と2016年に大問題になっていることばかり。この脚本、いつ書いたのか気になる。
山岸の話から女の本分とは何かと常子が考えた時、子を生むことだと言ってたからそうだ結婚しよう、大阪行こうとなって、ちゃんちゃん。となったら驚くが、そんなふうになるわけはない。
予告を見ても、この後、木金土の流れに悲しい予感しかしない。でも、武蔵が良いキャラクター過ぎて、彼が出なくなるのは大打撃だ。ここはなんとかしてほしい。モチーフになった実在の人物のように生涯独身ではなく、常子は武蔵と結婚したほうがいいと切に願ってしまう。
57回はこの、常子、プロポーズされる問題に尽きるとはいえ、ほかにもちょっと気になる場面があった。
美子が常子に反抗して部屋を出ていく時、「私だけじゃないよ。まり姉だって言ってるもん。」と捨て台詞を吐く。取り残された鞠子と、彼女をじっと見る常子と君子(木村多江)。気まずいだろう、これ。だめだろ、美子。ここは、鞠子に「おーーい!」「残されたわたしの立場は!」とかなんとか言ってほしいところだが、あくまで生真面目に、前述した美子の常子への本心を語るのみ。
「とと姉ちゃん」はおしとやかなのだ。それはラストにも現れていた。プロポーズされてびっくりする常子のアップの後、沸騰しかかった鉄瓶が映る。ベタな想いのメタファーなら、もっとヌケヌケと、ぴー!って鉄瓶が沸騰するくらいでもいいのに、なんかもうおしとやか。それが常子の性格と重なっている。ところが、高畑充希の表現力の押し出しは強い。大阪話で眼がうるうるしているところなど、少女漫画のひとこまのようだった。
(木俣冬)