「壁ドン」は世界で流行るのか:日本企業が販売する女性向けゲーム

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2014年9月18〜21日に開催されていた東京ゲームショー。そこで耳目を集めたのは、女性向けのデートシミュレーションゲームだった。最近アメリカでも聞かれるようになった「Kabedon」(壁ドン)という言葉をキーワードに、女性を熱狂させたそのイヴェント内容を、米記者が追った。

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日本、千葉県。ふだん東京で働いているミホは、その会場で、壁に寄りかかって立っている。スーツ姿の男性が2人、彼女に近づいてきた。「驚かせたかな?」と一方が聞く。もう一方が突然、腕を伸ばす。ドンッという音とともに壁に手をつく。ミホは彼が寄りかかってくる間、なす術もなく…。

この過激な動作は、「Kabedon」(壁ドン)と呼ばれ、架空の“タフな”日本人男性が行う、いま流行りの行為である。もしこれが幕張メッセ外の路上で見知らぬ人物にされていたら、ミホにとって相当な恐怖となっていただろう。しかし幕張メッセで開催されている東京ゲームショウにおいては、これも文字通り“ショウ”の一部、なのだ。むしろ、彼女は過激な壁ドンを体験するために並んでいたのだ。

「とっても刺激的でした」と、彼女はコメントした。同僚のアヤカも同じ意見のようだ。「とろけるようなセリフを言ってくれるんですよ」。

2人が東京ゲームショウを訪れたのは初めてのことだったが、この“体験”を提供するボルテージ社が開発したデートシミュレーションゲームのユーザーだったため、足を運んだという。

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ボルテージ社はすでに「悪戯なキス」の英語バージョンを開発している。来場者のほとんどはゲームの体験よりもブースへと足を運んでいた。

ボルテージ社のブースが位置するロマンスゲームコーナーでは女性向けデートシミュレーションゲームが紹介されている。

日本が生み出した、女性をターゲットとした分野、デートシミュレーション。昨年から始まったロマンスゲームコーナーでは、会場の大きさに反してブースはまだ小さく、会場の端の方に位置していた。しかし今年は、メインホールの中央部に構えている。展示各社はさらに、魅力的な男性モデルを投入することで目を引くブースを用意した。

ロマンスゲームコーナーで提供されるロマンチックなファンタジーは、商品販売のために性を用いているが、よくあるセックスアピールのようなものとはまた明らかに異なる。

というのも、東京ゲームショウの他のブースでは、必ずといっていいほど女性たちが男性陣の目の保養のためだけに用意されているが、ロマンスゲームコーナーは確かにセクシーだが淫らなものではなく、事前に宣言されている通りのゲームコンテキストに沿っている。

ゲームそのものの存在感もほとんど無い──彼らのゲームの多くはスマートフォンアプリなどで無料プレイできるため、実際に試したいと思って列に並ぶ人は少ない。開発者は、むしろゲーム内で提供したファンタジーを再現する事に重点を置いていた。

ボルテージ社のブースではコーナー毎に違うシナリオを提供している。そして、各“イケメンとの交流”に合わせた男性モデルが待機しているのみならず、来場者はお気に入りのイケメンを、ブースで投票できるのだ。

トークショーイヴェントでは、ボルテージ社のホームページに寄せられたファンからのロマンチックなセリフを、有名なテレビタレントが読み上げていた。

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しゃべることもできず、顔を覆って笑っているだけ

壁ドンブース以外でも、ある女性はさらにエキゾチックなファンタジーを求めて列に並んでいた。ニューヨークで金髪のアメリカ人に出会う設定だ。

テレビドラマ「ゴシップガール」になぞらえたアプリのプロモーションのため、ボルテージ社はイケメン男性をカウチに座らせブースにやってきた女性をピンクの照明やクリスタルのヴェール、そしてミラーボールでもてなしていた。

「基本的には、ナンパしているようなものです」と、東京在住の俳優兼モデル、カイル・カードは言う。「彼女たちのリアクションのほとんどは、しゃべることもできず、顔を覆ってただ笑っているだけですよ。黙っていることが多いですね」。

来場者のすべてが恥ずかしがっているわけではない、と彼は言う。「目を見つめ返して、すぐに愛想を振りまくような風変わりな女の子もいました」。

「このゲームで遊んでみようと思います」と、毎年東京ゲームショウに来場する千葉県在住のプログラマー、トモミはソファ体験の後、そうコメントした。

別のブースでは「アメリカ人男性」が女性来場者と雑談していた。

すべてぼくに任せて

ゲーム販売のサンソフト社は、これまでとはまったく異なるファンタジーを展開するべく、「ごくメン!」という、男性キャラクターが実は女性だという設定のゲームをベッドつきのブースで宣伝していた。ブースで待機しているのは、男装した女性たちだ。

ゴクメン体験はボルテージ社のシナリオよりもタッチを伴うものとなっている。来場者はモデルと一緒に座り、幾ばくの会話をしながら果てにはモデルによってベッドに押し倒される。

「ぼくを愛してる?」と女性モデルがそっと耳にささやく。「すべて僕にまかせて」。

ボルテージ社の代表によれば、彼らはすでにアメリカ支部を設立し、日本語のアプリを英語化しながら、なおかつアメリカ人女性に向けたゲームの開発も始まっているという。

壁ドンは日本国外でも流行るのだろうか? ゲームショーで壁ドンを体験した、ルアンというブラジル人学生に出会った。壁ドンされながら役者に何を言われたのか聞いてみた。

「分からない、彼は日本語で何か言っていたわ」と彼女。「でも、彼は美しかったわ」。

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