先週末、とても面白い試合がありました。昨季の王者、広島に進歩した浦和が臨む一戦です。僕も実際現地に行って取材しました。
 
浦和には広島在籍経験のある選手が多く、ペトロビッチ監督も広島を率いていたため、お互いに手の内を知り尽くした戦いです。結果は2-0で浦和が勝利を収めました。決して広島が弱くなっているのではなく、浦和の強さが目立つゲームになりました。

浦和の勝因は「前線からの守備」。試合開始当初こそ慎重な立ち上がりを見せた両チームでしたが、次第に人数をかけて浦和が攻め込みます。そして広島にボールを取られたら、もうそこから浦和はプレッシャーをかけるのです。後半、広島も攻め込もうとしたのですが、ビルドアップの時に潰されてしまい、形をなかなか作れませんでした。

浦和は今季のテーマを「守備」にしているのでしょう。昨季までは攻めたぶん、守備が疎かになって失点が増えていました。ですが、今年は攻撃の良さを残しつつ、守備を強化しようとしているのだと思います。
 
他にも「前線からの守備」を得意としているチームがあります。ところがそんなチームを広島は押さえて連覇しています。浦和と他のチームの「前線からの守備」は何が違うのか。
 
それは「バランス」です。一人ひとりが全体のバランスを意識しながらプレーしています。だから選手間の距離がうまく調整されていて、単に攻めているだけではなく、いざ相手のボールになったとき、追い込みやすいのです。
 
ただ、この素晴らしいゲームが試合内容よりも先週の差別横断幕事件がらみでしか注目されなかったのが残念でした。
 
試合後、槙野智章に話を聞くことができました。「今節は大事だった」とナーバスな気分で試合に臨んだことを教えてくれました。事件があったことで、選手は試合に臨むとき、対戦相手の広島とともに、自分のクラブが置かれている状況に対して神経を使ったことでしょう。
 
もしこの事件で、浦和が勝てなくなったら、それは一番もったいないことです。せっかく今年は進歩しているのに、その実力を発揮できなければ残念という以外にないでしょう。
 
そしてファンやサポーターのみなさんも、今回のことをいいきっかけにして、新たな浦和の応援席を作っていってほしいと思います。これであの迫力のあるスタジアムが静まりかえるなんて寂しすぎる。道は大変かもしれませんが、今こそ団結して持てる力を発揮してください。