溺死体に隠された数々の謎



事件概要


 静かな川岸でジョギング姿の女性の遺体が発見された。名前はアンジェラ・スワンソン(32)。職業は弁護士で、勤務先はペイジ法律事務所。独身で、恋人ナシ。後頭部に外傷と口から泡を吹いた形跡アリ。

主な登場人物

  
左:ピーター・ダンロップ(医療捜査官)
中央:ミーガン・ハント(検死官)
右:バド・モリス(殺人課刑事)

ミーガンによる検死

 死亡推定時刻は、朝8時半。後頭部の外傷は打撲によるもので、溺死する前にできた怪我。抵抗した跡は無く、殴られてから川に落ちたと推測されるが、死因は後頭部を殴られたせいではない。左前腕に昔、犬と思われる動物に噛まれた歯形と、前頭部に古傷アリ。2年前に側頭部の扁桃体を強打し、障害が残ったと思われる。扁桃体とは感情を司る器官のため、性格はすっかり変わったハズ。また髪の毛先の形状から、切れ味の悪いハサミでカットしたか、指輪などに絡まって切れたと考えられる。首の付け根に良性の腫瘍アリ。

アンジェラの両親からの情報

 最後に娘と話したのは先週。寝る前に電話が掛かってきて、「溶連菌の感染症で、喉が痛い」と訴えていた。腕の傷は、家の犬を守ろうとしてアメリカン・ピット・ブル・テリアに噛まれたもの。私達は娘を愛していたが、反抗期になると手に終えなくなった。でも頭を打ってからは素直な良い子に戻って、夢のようだった。

ピーターからの情報

 アンジェラの主治医によると、彼女はA型溶連菌で、エリスロマイシンを処方されていた。胃の内容物から、スポーツドリンクを飲んでいたことも分かった。膣内からはペッサリーが発見され、精液を検出したが、精子は一匹もいない。彼女はトム・ハンソンという男と付き合っていた頃、階段から落とされ、頭をぶつけて意識不明になっていた。ハンソンは3週間前に仮釈放になり、今は復帰訓練所にいる。

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