巨人OBで前中日監督の落合博満氏との接近もその一つ。巨人監督について渡辺会長は「巨人の監督は生え抜きじゃないといけない。落合も巨人OB? でも生え抜きじゃない。ワンちゃん(王貞治氏)、原クンはジャイアンツそのもの」と否定していたが、'05年に巨人とは無縁の星野仙一氏の招聘に動いたことを思えば、渡辺会長が思い描く意中の人物が落合氏であることは想像に難くない。
 「生え抜きにこだわったのは、原監督を慮ってのこと。しかし、その意中の落合氏も微妙になってきた。お盆の時期に脳梗塞の疑いで入院したという情報が流れているからです。大事には至らなかったとのことですが、このオフにユニホームを着るのは難しい」(スポーツ紙デスク)

 そんな落合氏に代わって渡辺会長が期待を寄せるのが、今年10月で39歳を迎えるイチローである。
 原監督が今季の優勝を花道に辞任を考える一方で、イチローもまた「世界一」を花道に現役引退を思い描いているからだ。今年7月末にマリナーズを離れ、ヤンキースに移籍したのもそのためである。
 「日米で数々の個人タイトルを獲得してきたイチローにとって、世界一のタイトルを取れれば、もう現役に未練はないのでしょう。その意味では年齢的にも今年が最後のチャンス。そうみたからこそレギュラーの確約も、来季以降の契約もないままヤンキースに移籍したのです」(大手広告代理店幹部社員)

 スポーツ紙などでは、来季の日本球界復帰も報じられているが、これは現実的ではない。
 巨人OBのプロ野球解説者が続ける。
 「先日も1試合に2度も送りバントを失敗したように、イチローは両目の視力が0.4まで落ちている。これが安打製造機のイチローが2割6分台の打率に低迷している原因です。視力調整すれば、打席には立てるでしょうが、動体視力は戻らない。だれより本人が限界を感じている。イチローは来年40歳ですが、長嶋茂雄氏が38歳、星野仙一氏が40歳で監督になったことを思えば、イチローが巨人の監督になっても少しも不思議ではないのです」

 イチローが不慣れな左翼守備をこなし、東地区首位をひた走るのは、すべてはヤンキースでワールドチャンピオンに輝き、電撃的に引退して巨人の監督−−というこの男一流の美学がそうさせているのだ。
 渡辺会長は松井について「年齢的(38歳)に(現役は)難しいだろうが、コーチなら申し分ない。しかし、コーチならイチローが上だ」と話したことから、一部では来季は原監督の下でコーチ兼任でプレーし、翌年に監督という情報もあるが、そのような動きを察知すれば、原監督はなおさら辞意を固めることになる。

 政界は10月解散、11月総選挙にむけて臨戦態勢に入ったが、球界もまた大混乱劇が勃発する。