彼女たちは中高生の頃、同じ系列のヴォーカル&ダンススクールに通っていた。その頃は安室奈美恵やSPEEDに憧れ、メンバー全員、それぞれが歌って踊れる“アイドル”を目指していた。ところが、そんなある日、そのスクールの先生から楽器を演奏することを薦められる。アイドルを目指していたのとは違い、これと言って憧れるプレーヤーもバンドも無いまま、言われるがまま楽器を始めた彼女たちは、やがて大阪城ホールの前にある通称「城天」と呼ばれるストリートで演奏するようになる。

その後、インディーズに時代にアメリカ6大都市でのライブツアーを行い、約2年後「DOLL」でメジャーデビュー。それからもライブハウスでの活動を中心にキャリアを重ね、結成から5年7ヵ月、ガールズバンドとして史上最速で武道館ワンマンライブへと辿り着いた。

こうやって一まとめにすると、大人たちの指導のもと、とんとん拍子で駆け上がって来たかのように聞こえるが、ここで注目したいのはバンド結成時、「メンバー誰一人、自発的に楽器を始めていない」という点だ。こういったケースは非常に珍しい。個人が楽器を始める場合、友達の影響も含め、その殆どが特定のプレーヤーやバンドに憧れて楽器を手にし、拘りを持ってスキルを磨いて行く。しかし、この憧れや拘りと言うのは同時にプレーヤーとして“呪縛”でもある。スキルが身についていない中高生のうちから、方向性の違いなどという理由で解散してしまうバンドが多いのは、幼いながらもこの呪縛に囚われているためだ。

ところが「SCANDAL」にはそれが無かった。ロックに対する先入観が何もないまま、メンバー4人がほぼ同時に楽器を始め、バンド内で切磋琢磨することにより、自分たちのスタイルだけを追求し続けた。すなわち純粋培養だ。一頃は言われるがまま楽器を始めたことや、アイドル視されることにコンプレックスを感じた時期もあったようだが、今はそれらも自分たちの持ち味として受け入れれている。そして、迷いがなくなった彼女たちは、ライブを中心に幅広い世代を取り込めるようになったいった。中でも前述した40歳前後のバンドブーム世代には特別な感慨を与えている。

なぜなら、「SCANDAL」のライブには「ロックに対して無垢な彼女たちが、新たなロックを生んでいる」という事実があるからだ。そこには回りくどい理屈や計算など無い。あるのはこの4人でライブをやれるのが楽しくてしょうがないという、極めて単純明快な姿だけだ。そして、その姿は、拘りを持ってロックに対峙してきたバンドブーム世代特有の既成概念を、心地よいほど一瞬にして塗り替えてしまう。

ガールズバンドに焦点を絞るとより顕著だ。黎明期に活動していたガールズバンドの多くが、良くも悪くも「女の子なのに〜」という枕詞付きで見られていたのに対し、「SCANDAL」は「女の子だからこそできるライブ」を見せる。普通の女の子たちが肩ひじ張ることなくロックを演奏するライブ。その姿を目の当たりにした時、彼女たちによってガールズバンドの新しい時代が来たことを教えられるのだ。

そして、そのルーツを手繰り寄せた時、バンドのベースに、かつて彼女たちが憧れと拘りを持っていたアイドルの姿を見つけることができる。トレードマークのミニスカート、ライブやPVで見せるダンスなど、既成のロックバンドの形に囚われている者なら絶対に受け入れないようなことを、彼女たちは進んで受け入れ、心から楽む。その拘りの無さが「SCANDAL」最大の魅力なのだ。

今回、発売されたベストアルバム「SCANDAL SHOW」は、そんな彼女たちがライブを意識して作り上げた珠玉の一枚。そして、5月19日からは鹿児島を皮切りに、1か月間で全国17ヵ所のライブハウスを回るツアーが予定されている。にわかに囁かれ始めたガールズバンドブームが本格的になった時、けん引役になるのは間違いなく「SCANDAL」。そんな彼女たちのベストアルバムは必聴の一枚だ。

■「SCANDAL SHOW」曲目リスト
1. HARUKAZE
2. 少女S
3. DOLL
4. BEAUTeen!!
5. 太陽と君が描くSTORY
6. LOVE SURVIVE
7. Pride
8. スイッチ
9. 瞬間センチメンタル
10. ハルカ
11. スキャンダルなんかブッ飛ばせ
12. EVERYBODY SAY YEAH!
13. カゲロウ -album mix-
14. SAKURAグッバイ
15. SCANDAL BABY
16. SCANDALのテーマ (Bonus Track)

(文/矢沢隆則)

■関連サイト
・SCANDAL Official website
・超SCANDAL-公式ブログ-
・SCANDAL MANIA Official website