ダルビッシュは掛け値なしに、NPB史上最高の投手である。これまでも偉大な記録を残したNPB投手は枚挙にいとまがないが、MLBのレベルに最も近付いたという意味で、他の投手と懸絶している。

プロ入り後の公式戦の記録を並べてみる。
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甲子園では12試合に登板し7完投、4完封、92回を投げて奪三振87、四死球27、自責点15、7勝3敗、防御率1.47。すでに超高校級であり、即戦力として日本ハムに入ったが、そのスタートは芳しいものではなかった。 
卒業前の喫煙が発覚し、5月まで公式戦に出られなかったのだ。5月5日、2軍のインボイス戦で3番手として登板したダルビッシュは2回を投げて3安打1四球。失点はなかった。5月31日の楽天戦で9回3安打完封をしたダルは6月には1軍にあげられる。 
以後、ローテーション投手として1軍に定着。2006年からはエースとして活躍。さらに2007年からは投手の主要タイトル争いの常連となる。急成長したのだ。 
 
彼はtwitterでファンの 
投手は勝ち星で評価されるべきではないと言ったのは本当ですか? 
という質問に対し、 
本当ですよー。投手としての本当の実力はWHIPとDIPSで評価されるべきなんです。ただ金田さんや上原さんは言うまでもなく凄いです。 
という答えを返している。 
 
ダルビッシュは、セイバーメトリクスの論客、ボロス・マクラッケンの「投手が自分の力でコントロールできるのは、与四球、被本塁打、奪三振」だけである」という考えに共鳴していたのだ。そしてこの3つの数値の向上を考えて=DIPSを上げることを目標として、野球をしてきたのだ。意識の転換があったのは2009年頃だと思うが、ここからすごい投手へと、ステップアップしたのだ。 
 
数値目標を掲げることは誰でもできる。しかしそれを実現するのは至難だ。ダルビッシュは、目標を達成するために、トレーニング、体調管理、栄養管理、恐らくはメンタル面まであらゆる努力を惜しまなかった。その意識レベルの高さこそが、ダルビッシュの偉大さだと思う。 
 
2011年をダルビッシュは、NPBの集大成の年にしようと考えていたのではないか。大胆な肉体改造も、そうした覚悟で行ったのだろう。その結果、ダルはNPB史上空前のDIPS1.47を記録。 
うがった見方をすれば、今年のダルビッシュはMLBの関係者に見せつけるために野球をしていたのかもしれない。彼らが最も評価するDIPS、K/BBなどの数値が急上昇している。最終戦の登板回避をして、投げていれば確実だった最多勝(タイ)を放棄したのも、NPBの記録はもはや眼中になかったからだと思う。 
 
ダルビッシュに対するMLBの評価は、これまでの日本人投手とは全く異なるはずだ。ダルビッシュ自身がMLBが考える理想の投球法を理解し、それに則った投球をしてきたからだ。それは、数字が明確に物語っている。だからMLB、メディアは(大物投手が市場に出ていないとはいえ)ダルをストーブリーグの最大の目玉としたのだ。 
 
75年の歴史を重ねて、NPBはダルビッシュという「傑作」を生んだ。そしてその傑作をMLBというステージに「出品」しようとしているのだ。