「評価されないから…」と出社拒否して彼女と旅行!?企業で問題化している「未熟型うつ」の実態
私は大学における教育研究活動の成果の社会還元として、いくつかの公的機関や民間企業で精神科の産業医を務めている。その中で、近年、私たちが取り扱っているメンタルヘルス問題の質が変化をしてきているように感じる。臨床医学的な表現をすればうつ病の軽症化と遷延化という一見矛盾した病理の増加であり、社会医学的には従来の過重労働を背景とする燃え尽き型のうつ病から、個人のストレス脆弱性を背景とした適応障害型のうつ病へのシフトである。
彼らを未熟でダメなヤツと切って捨ててしまう職場も少なくないが、私は彼らを会社にとって貴重な人材に育て上げることが可能であると考えている。それには単に投薬や自宅療養といった従来型のうつ病に対する支援だけではなく、本来であれば学生時代にさまざまな失敗や理不尽な出来事を通して獲得すべき情緒的共感性を養うといった、人材育成の視点が必須といえる。日本が経済的に豊かになり、個々の自立の先送りが許される未成熟社会においては、これまで学校や家庭が担ってきた人格的成長支援を企業が担う必要がでてきたのではないかと考えている。
もちろん、民間企業は営利事業であり、公的機関は国民全体の奉仕者であるため、成長支援においても一定の限界が存在することは言うまでもないが、企業もせっかくお金と時間をかけて、どこかにキラリと光るダイヤモンドの原石が隠れているはずと思い採用した人材なのだから、きちんとした成長支援を行なったうえで、その後の処遇を判断してもよいのではないかと思う。
そこで、今回は特別編として、3回にわたり、私が最近経験した事例を取り上げながら、どのように企業が成長支援を行えばよいのかについて産業精神医学的な見地から概説してみたいと思う。
続きはこちら
■関連記事
・職場の若手人材に急増する「未熟型うつ」の正体
・自分の意見が通らないと上司は無能扱い!?半年で会社を辞めた「ゆとりちゃん」の思考回路
・旅行には行けるのに、会社には行けない 大人の「引きこもり」が急増中!
・「私は絶対に間違ってない!」上司をうんざりさせる自己チュー女性部下
・あなたの部下はワガママちゃん?質問すればみえてくる支援のポイント