真夏に汗を流す青少年は野球部員だけじゃない。
サッカー界もユース年代の大会が盛り沢山だ。
高校総体にクラブユース選手権。
更に各地で国際大会も開催される。
今はU-16、U-19の両代表がアジア最終予選を控えている。
この手の大会は貴重な発掘、強化、調整の機会だ。

ただ日本「だけ」を見るのは勿体ない。
相手チームに後の世界的選手が混ざっていることもある。
03年の豊田国際でMVPに選ばれたのはリオネル・メッシ。
私は見に行かなかったことを今も悔いている…。
最終日を選んで見に来たのはこの対戦が見たかったから。
日本とアルゼンチンが戦う機会なんて一生に何回もない!
両チームここまで2連勝。「勝った方が優勝」である。
しかし世界ランク5位を引っ張ってこれたのは「メッシの縁」かな?
「彼がMVPを取った大会」と伝えればいいくすぐりになるだろう(笑)
ちなみに再来週のSBSはスペインが来日する。
今夏の東海地方は熱いな!

U-16日本代表
GK  1 岩脇力哉  94.03.19 182/71 磐田Y
DF 16 川口尚紀  94.05.24 175/67 新潟Y
    5 植田直通  94.10.24 185/70 大津高
    4 鈴木隆雅  94.02.28 178/63 鹿島Y
   11 早川史哉  94.01.12 170/66 新潟Y
MF  8 野沢英之  94.08.15 175/61 FC東京U‐18
   15 望月嶺臣  95.01.18 172/66 野洲高
   10 楠美圭史  94.07.25 170/56 東京V・Y
   14 菅嶋弘希  95.05.11 175/62 東京V・JY
FW  6 井上丈   94.05.21 156/55 新潟Y
    9 鈴木武蔵  94.02.11 183/67 桐生第一高

−−−−−井上丈-−−−−鈴木武蔵-−−−−
−−菅嶋弘希−−−−−−−−−楠美圭史−−
−−−−−-望月嶺臣−−野沢英之-−−−−−
−早川史哉−鈴木隆雅−植田直通−川口尚紀−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−-岩脇力哉-−−−−−−−−

■リザーブ:
GK 18 中村航輔  95.02.27 179/66 柏U-18
DF  3 岩波拓也  94.06.18 185/67 神戸Y
   13 堀米悠斗  94.09.09 165/57 札幌U-18
    2 高木大輔  95.10.14 168/64 東京V・Y
MF 12 秋野央樹  94.10.08 174/58 柏U-18
   17 石毛秀樹  94.09.21 166/64 清水Y
FW  7 松本昌也  95.01.25 166/55 JFAアカデミー福島

U-16アルゼンチン代表
GK  1 ニコラス・セケイラ  94.08.30 ラヌス
DF 16 ホアキン・カナルス  94.08.01 ティグレ
    2 エドゥアルド・バエス 94.06.28 ラシン
    6 アリアン・プチェタ  95.03.08 ボカ・ジュニオルス
    3 マルコス・ピント   94.01.25 ラヌス
MF  5 ガスパル・イニイゲス 94.03.26 アルヘンティノ・ジュニオルス
   11 マティアス・モンテロ 94.05.07 リーベルプレート
    4 エンゾ・ベロソ    94.02.20 ニューウェルズ
   14 ジョナサン・シルヴァ 94.06.29 エストゥディアンテス
FW  9 ルカス・オカンポス  94.07.11 リーベルプレート
   19 レアンドロ・パレデス 94.06.29 ボカ・ジュニオルス

−−−−オカンポス-−−−パレデス-−−−−
−−シルヴァ−−−−−−−−−-ベロソ-−−
−−−−−-モンテロ-−イニイゲス−−−−−
−ピント−-プチェタ−-バエス−−カナルス−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−セケイラ−−−−−−−−


アルゼンチンの右サイドはスキンヘッドでやや肌が浅黒い。
背が175cmくらいで「ミニ・ベロン」な風貌だ。
ふと名前を確認して吹き出してしまった。
「ベロソ」ってそりゃ酷いバチモンだ(笑)

日本は新潟国際と布陣が違う。
あれは実験だったのかな?
各年代あれで行くのかと早合点してしまった。
今日はオーソドックスな4−4−2である。
ただ最終ラインの「攻撃性」は同じ。
植田直通は所属チームで見たことが無いけど、
他の3人は中2、中3の時点でアタッカーだった。
中盤が速いテンポで細かくボールを動かす意図も同じだ。

12分、アルゼンチンが好位置のFK。
右に小さく動かしてレアンドロ・パレデスが強烈ミドルシュート。
枠内だったけどGK岩脇力哉がブロックした。

18分、日本は望月嶺臣が左サイドから縦にクサビを当てる。
鈴木武蔵がポストに入って菅嶋弘希が右をサポート。
ただ菅嶋のミドルはいい形だったけど枠外。

18分、アルゼンチンはガスパル・イニイゲスに警告。
井上丈の脛を足裏で踏む危険なプレーがあった。

22分、日本は望月嶺臣が中盤で反転して縦に叩く。
井上丈がドリブルで少し運んで右に開く。
楠美圭史のクロスはDFに引っかかるが却って幸い。
鈴木武蔵が潰れてファーに一人余っている。
しかし菅嶋弘希のシュートはGKセケイラがブロックして外。

29分、アルゼンチンはパレデスがオカンポスとワンツーパス交換。
パレデスはエリア左に抜け出してシュートを狙う。
これがゴール右隅を捉えて決定的だった。
しかしGK岩脇力哉が辛うじて触って枠外。

27分、アルゼンチンはオカンポスが前線でキープ。
左中間から30mほどの右足ミドルシュートを狙う。
ゴールの左隅に向かっていたけどGK岩脇力哉が触って外。

31分、日本は楠美圭史が右から中に当てる。
望月嶺臣はワンタッチで裏に絶妙スルーパス。
鈴木武蔵が仕掛けてエリア内に切れ込む。
抜け出せば決定的だったけどマルコス・ピントのファウルに阻止された。

32分、アルゼンチンは前線にロングフィードが入る。
日本のCBが背中に当てて跳ね返しきれない。
オカンポスがセカンドボールを拾ってエリア左から切れ込む。
GK岩脇力哉がよく飛び出してナイスブロック。

36分、日本は野沢英之が左サイドにスルーパス。
菅嶋弘希は縦に抜け出して折り返す。DFがブロックして外。

36分、アルゼンチンはパレデスがラボーナ左サイドに展開。
オカンポスが縦に切れ込んでシュートを狙う。決定的だったけど枠外。

前半40分はスコアレスで折り返しとなる。
アルゼンチンが攻勢に出た前半戦だった。
2トップの突進、突破が強烈だ。
特にレアンドロ・パレデスの仕掛けは強烈。
バディーの渡辺力樹くんを思い出した(笑)
ボールタッチが良くて足元からボールが離れない。
足の裏を使ったボールの「出し/引き」がスムーズ。
右足の内、外でボールを捏ねるのも憎らしい。
身体のサイズやバランス、スピードにも恵まれている。
ただパレデスは笑ってしまうほどプレー強引だった。
とにかくドリブルで仕掛けてしまう。
相手に奪われるまでボールを離さない。
あと基本的には「右半身」しか使えない選手。
右側を切れば威力が急減する。
日本のDFは振り切られずに食い下がれば何とか対応できていた。
しかしここまで極端に球離れが悪くて許されるところに、
アルゼンチンの「プライド」を感じましたね。

ちなみに今大会のアルゼンチンは「10番」が不在。
何しろマラドーナの番号だから特別扱いである。
公式戦以外では常に欠番なんだそうな。
代わりにエースが身に着けるのは19番。
それを背負うのがレアンドロ・パレデスである。

日本も善戦していた。
まず岩脇力哉が獅子奮迅の好セーブ連発。
攻撃面もアクションを起こせていた。
新潟国際に比べると中盤の組み立てが大きく改善した。
望月嶺臣のプレーは初めて見たけど凄いじゃないですか!
セゾン、野洲という経歴で技巧派だろうとは想像していた。
ただむしろ「野洲っぽくない」選手である。
ドリブルよりパスが際立っていた。
日本のユース年代で一番足りないのはパスセンスのある選手だ。
これは世評と逆だけど確信を持って言いますよ。
身体能力の高い素材はどの種目より豊富だ。
ただ「上手い子」がいない。
遠藤保仁のような感覚を持った選手は皆無に近い。
望月嶺臣はそういうセンスがありますね。
ボールを受ける段階で「次」を意識できている。
だからワンタッチ、ノールックパスが次々に決まる。
あと「強弱」を蹴り分けられる選手だ。
縦の狭いパスコースに楔を入れられる。
敢えて食いつかせるような「ヤット的パス」も使える。
「ブロックの中」でボールを動かせる選手だ。

試合は後半。
40分、日本は井上丈→松本昌也。
松本はそのまま2トップの一角に入る。
中盤の構成が少し変わってこういう布陣↓
−−−−-鈴木武蔵−−−−松本昌也-−−−−
−−菅嶋弘希−−−−−−−−−野沢英之−−
−−−−−-楠美圭史−−望月嶺臣-−−−−−
−早川史哉−鈴木隆雅−植田直通−川口尚紀−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−-岩脇力哉-−−−−−−−−


井上丈は前半だけで退いたけど悪くなかった。
中盤に落ちてパスを引き出せる。
そこから「変化」を加えられる選手だ。
国際試合では彼の「小ささ」「細かさ」が武器になるんじゃないかな?

43分、日本は川口尚紀が右サイドにフィードを入れる。
菅嶋弘希が受けて望月嶺臣とワンツーパス交換。
菅嶋はエリア内に切れ込むがDFに潰された。

47分、日本は川口尚紀が縦にフィードを入れる。
鈴木武蔵が抜け出して折り返す。
菅嶋弘希はニアに飛び込んでボレーシュート。
決定的だったけど枠外。

53分、アルゼンチンは2人入替。
ガスパル・イニイゲス→アグスティン・アリオネ。
ホアキン・カナルス→レオナルド・ヴィジャルバ。
布陣がこうなる↓
−−−−オカンポス-−−−パレデス-−−−−
−−-シルヴァ-−−−−−−ヴィジャルバ−−
−−−−−-アリオネ−−モンテロ-−−−−−
−ピント−−プチェタ−−バエス−−ベロソ−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−セケイラ−−−−−−−−


60分、日本は川口尚紀?が右サイドから折り返す。
菅嶋弘希が裏に抜け出して胸トラップ&シュート。
ゴールイン!と喜んだらハンドで取り消しとなる。

62分、アルゼンチンは前線で細かいパス交換。
オカンポス、パレデスと絡む。
ヴィジャルバが右サイドから折り返す。
ニアに飛び込んだFWがスルーしてファーに抜ける。
シルヴァのシュートは決定的だったけどGK岩脇力哉の正面。

68分、アルゼンチンはジョナサン・シルバ→フェデリコ・アンドラダ。
布陣がこうなる↓
−−−−オカンポス-−−−パレデス-−−−−
−−ヴィジャルバ−−−−−-アンドラダ-−−
−−−−−-アリオネ−−モンテロ-−−−−−
−ピント−−プチェタ−−バエス−−ベロソ−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−セケイラ−−−−−−−−


72分、日本は楠美圭史→秋野央樹。
この大会は交代枠が多い。
第一試合の名古屋は全員入れ替えてんじゃないかな?
しかし今日の日本は入替が控えめ。
残り13分の段階で2人目のリザーブ投入である。
おそらく公式戦を想定した采配だったんだろう。

日本の布陣はこう↓
−−−−-鈴木武蔵−−−−松本昌也-−−−−
−−菅嶋弘希−−−−−−−−−秋野央樹−−
−−−−−-野沢英之−−望月嶺臣-−−−−−
−早川史哉−鈴木隆雅−植田直通−川口尚紀−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−-岩脇力哉-−−−−−−−−


終盤はアルゼンチンが猛攻だった。

75分、アルゼンチンのカウンター。
パレデスが中から左に切り返して左足シュート。
強烈なミドルが枠を襲ったけどGK岩脇力哉がブロックして外。

75分、アルゼンチンは左CKをピントが左足で入れる。
アンドラダのヘッドは決定的だったけど枠上。

76分、アルゼンチンはヴィジャルバに警告。
川口尚紀へのラフな当たり。

試合は80分+αを終えてスコアレス。
大会規定によりPK戦で最終決着となる。
これを取ったチームが優勝だ。

PK戦の先攻はアルゼンチン。
アルゼンチン1本目。レアンドロ・パレデスが成功。
日本1本目。早川史哉が成功。
アルゼンチン2本目。ルカス・オカンポスが成功。
日本2本目。松本昌也が成功。
アルゼンチン3本目。フェデリコ・アンドラダが成功。
日本3本目。野沢英之が左を狙って失敗。
GKニコラス・セケイラがよくブロックした。
アルゼンチン4本目。エンゾ・ベロソが成功。
日本4本目。川口尚紀が成功。
アルゼンチン5本目。レオナルド・ヴィジャルバが成功。
ここで勝負あり。
アルゼンチンがPK戦を5−3で制して今大会の優勝を決めた。

アルゼンチンの喜び方が凄まじかった。
歌う、騒ぐ、踊る!
次から次へとチャントを熱唱し感情を燃やしていた。
ラテン系のチームは「熱い」けどアルゼンチンは別格だ。
あのパッション、勝負へのこだわりが彼らたる所以なんでしょう。
地球の片隅のこんな大会で喜んでもらえて何か嬉しい(笑)

日本はいい試合、今後に繋がる試合をしたと思う。
一昨年はブラジル戦に引き分けた。
でも相手が「当日入り」でコンディションが最悪。
対して今日のアルゼンチンは切れ切れだった。
アルゼンチンの個人技に圧倒される展開ではあった。
でもやることをやれば封じられる。
スペースを空けない。振り切られずに付いていく。
シュートは打たれても「一番危険なコース」を切る。
そういう原則を実行すれば無得点に抑えられる。
日本は経験の浅いDF陣が健闘を見せた。
攻撃への貢献度も低くない。
特に川口尚紀はフィード、攻め上がりで決定機に絡んだ。

中盤はマイボールの時間帯が決して長くなかった。
でも少ないタッチ、速いテンポで前線に運んでいた。
鈴木武蔵はハードなDFにかなり苦しんだけど…。
菅嶋弘希が昨日ハットトリックの好調を今日も持続。
いい形でフィニッシュに絡んだ。
あとは「決めるだけ」だったんだけどなぁ…。

なお大会MVPにレアンドロ・パレデス、MIPは菅嶋が選ばれた。

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