スペインの初優勝で、2010年南アフリカW杯は幕を閉じた。決勝戦は日本国内でも非常に注目されたね。日本にとって今回のW杯は、日本代表が決勝トーナメント進出を果たしたことで、2002年大会に近い盛り上がりとなったね。多くの日本人が他国の試合でも積極的に観ようとしていた。
改めてW杯のコンテンツとしての力には驚くよ。同時に、日本代表が生み出すエネルギーの大きさも実感する。

さて、優勝したスペインだが、この栄冠は最後まで自分たちのサッカーをコツコツと貫きとおした結果だと思う。初戦で負けて批判を浴びても、曲げなかった。ボールをポゼッションすることで消耗を抑え、相手を疲れさせる攻撃的なサッカーだ。フェルナンド・トーレスの不調もあって決して派手なチームではなかったけど、最後まで曲げなかったメンタリティの勝利といってもいい。

一方のオランダは、個人の力に頼ったサッカーで決勝まで進んできた。タフな選手をそろえ、美しいサッカーよりも結果を重視するという、これまでのオランダとは違った姿で勝ち進んできたわけだけど、バランスのいいチームではなかったね。優勝してもおかしくなかったと思うけど、トータルの力ではスペインに及ばなかったという印象だ。

約1か月に及ぶ壮大なパーティが終わり、各国はそれぞれ「祭りのあと」をどうしていくが問われていく。次のW杯に向けた戦いは、もう始まっているということだね。
それは大会主催者のFIFAも同様だ。今大会では勝敗を決定付けるような誤審が目立ち、しきりにテクノロジーの導入が叫ばれている。これに対してFIFAはどういう判断を下すのかな。

個人的には、以前にもこのコラムの中で述べたが、テクノロジーの導入には反対している。FIFA主催の大会、あるいはW杯など大きな大会だけに特別なビデオカメラを入れるというのは、やはり疑問が残るね。世界中で、同じルールの下で行われるのがサッカーだ。そこがサッカーの魅力だと思う。
それに、ゴールラインを割ったかどうかだけを判断できるようになってもしょうがない。PKや好位置でのFKにつながる場面でのファウルや、オフサイドにもビデオ判定が導入されるようになると、1試合終わるのに何時間かかるだろう。肉眼だからこそのスピーディさが失われてしまうよ。
誤審で運命を狂わされた当事者たちにとっては、到底納得できるものではないだろう。でも、やはり審判も含めてサッカーなんじゃないかな。いずれにしろこの問題は簡単には解決しない。だからこそFIFAの対応には注目だね。

今回は歴史上初めてアフリカ大陸で開催されたW杯だった。クオリティの高低はあるにせよ、結果的にいえば、大成功だったといえるだろう。南アフリカの経済成長を実感させたし、国の勢いを対外にアピールできた。僕も現地へ行ってみて、もちろん目に見えない部分に関してはわからないし、人種や経済格差の問題などは深くあるのだと思うけど、大会を通じて外国から見た南アフリカのイメージは大きく変わったのではないかな。
彼らにとって、大きな前進となったW杯だったのは間違いない。こちらも、「祭りのあと」に注目だね。

日本で眠い目をこすりながら観戦した皆さんも、1か月間お疲れ様でした。(了)