(第2回の続き)6月17日のアジア最終予選からおよそ2か月半後の9月上旬、日本代表は岡田監督のもとで初めての欧州遠征を敢行する。5日にオランダ、9日にはガーナと対戦した。

「いよいよ本大会へのスタートとなる」とオランダ戦は、“ケンゴ・システム”の4−2−3−1でスタートした。後半からは本田を「3の左」に配し、二人の中村と本田を同時起用するが、その後半に3失点を浴びて0−3で敗れてしまう。

 69分、43分、87分という失点時間が示唆に富んでいる。前半からハイプレッシャーをかけていた日本の運動量は、後半に入ると緩やかに低下していたのである。交代選手の投入による連動性の低下も失点の一因となったが、根本的な原因は違うところにあった。

 日本がプレッシャーをかけると追い詰められてミスをするアジアの国々と異なり、オランダはプレッシャーを撥ね除ける強さと技術を持っている。〈狙ったところでボールを取れない〉状況が続き、アジア相手より多くの運動量を強いられ、70分前後で燃料が枯渇してしまった。そう考えるのが妥当だった。

 試合後の岡田監督は、「いままでやろうとしたことを90分やり切る、やり通さない限り、なかなか勝ち目はないのではないか、と感じています」と語った。「僕らはあれを続けるしかない。続けることで90分できるようになると思っている」と、長谷部も話した。

 稲本、本田、森本、徳永、佐藤寿、岩政、石川直ら、新旧の戦力がテストされた9月以降の試合で、チームとしての選択肢は増えてきた。ポジション争いは激しくなっている。オランダ戦以降は5勝1分けと、ひとまず結果も残した。

 だが、11月の南アフリカ戦では準備万端とは言えない相手を攻めきれず、逆に相手のボール回しにエネルギーを削ぎ取られてしまった。その延長線上として、ゴール前での迫力を出せないというオランダ戦同様の課題が浮き彫りとなっている。本田や森本の決定力をチームに落とし込む作業も、ワールドカップイヤーへ持ち越された。

 攻守の切り替えを早くし、数的優位を保つというコンセプトは間違っていないはずだ。傑出した「個」を持たない以上、グループで優位性を作り出していくしかない。日本人にもできるという出発点に立ち、日本人らしさを生かすためのコンセプトで世界に挑むのは、野心的で価値あるチャレンジである。今後につながっていくのは間違いない。

 しかし、来年6月までに「90分間やり通せるようになるのか」となると、疑問符を打たざるを得ないだろう。ベスト4という目標は、いままだ輪郭を帯びるに至っていない。(了)

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖