観衆7850人。これはいったい多いのか少ないのか。東京ヴェルディ対甲府の一戦だ。J2の試合ではあるけれど、舞台は日本のスタジアムの中で、もっともアクセスが良い国立競技場。それを考えると、圧倒的に少ない気もするが、そのうちの5千人以上を占めたアウェーチーム、甲府のサポーターは元気をみなぎらせていた。

勝てば3位。J1昇格圏内をキープすることになる。甲府はJリーグに加盟する36チームの中で、いま、いちばん燃えているチームと言っていい。

でも、サッカーそのものは、決して僕好みではなかった。先制点を奪い後半に突入すると、5バック気味になり、いわゆる「ベタ引き」のサッカーを繰り広げたのだ。

かつての甲府はそうではなかった。甲府に縁もゆかりもないこちらまで、興味そそられるサッカーをしていた。これでは、第3者の共感は呼ばない。「出し物」をご披露する感覚が決定的に欠けているのだ。

それは甲府に限った話ではない。そうした意味での全国区のチームが少ない点こそが、いまのJリーグに共通する問題だ。どんなことがあっても応援に駆けつける熱狂的な地元ファンだけのものになってしまっている。それはそれで、悪い話ではないのだけれど、人口の割にチーム数の数が少ない日本の特殊性を考えると、歓迎すべき話ではない。いわゆるサッカー好きの中で「マイクラブ」を持たない人は、圧倒的に多数派を占めている。

実際、そうした第3者的なファンは、国立競技場にほとんどいなかった。東京の真ん中にある、日本でもっともアクセスがよいスタジアムで行われた試合にもかかわらず、だ。

昼間、テレビで見たゴルフはこうではなかった。男子のトーナメントも女子のトーナメントも、コースは溢れんばかりの人で埋め尽くされていた。普段ゴルフをしなさそうなファンまで、大挙詰めかけていた。ゴルフ人気の凄まじさを思い知らされた次第だが、試合の中身もそれに伴う充実ぶりだった。第3者にも見応え十分の試合内容だった。

男子のトーナメントは、最終18番まで、最終組の3人がトップを併走する大接戦。石川遼君が、その第2打で放ったショットがまた凄かった。ラフからの残り190ヤードを。7番アイアンでピンそば50センチにピタリと寄せて見せたのだ。

優勝はその石川遼君の頭上に輝いたわけだが、だが僕にとっては、それほど劇的ではなかった。遼君が優勝することを、事前に知っていたからだ。超能力者だからではない。

この中継が生ではなかったので、インターネットのニュースで、事前に結果を知ってしまっていたのだ。

チャンピオンズリーグの結果とか、最近、この手のありがた迷惑に遭遇することたびたびだが、遼君の優勝も例外ではなかったのだ。

その点、NHKが中継した日本女子オープンは文句なしだった。こちらは生。宋ボベと横峯さくらのプレイオフを、結果を知ることなく楽しめた。

民放が中継するトーナメントが録画なのに対し、これに限らず大抵生だ。再来週の男子の日本オープンも、たぶん生でやってくれはずだが、生の良さは、結果を知ることなく観戦できるだけではない。ゴルフ競技特有の「間」までちゃんと楽しめる。ゴルフ場に行った気分が味わえるのだ。

それはともかく、日本の場合はサッカーシーズンとゴルフシーズンが見事に重なっている。両者はライバル関係にあると言っていい。

かつてはサッカー優勢だった。だが、いまはどうだろうか。サッカーの旗色は明らかに悪い。固定客しか望めないJリーグに対し、ゴルフは浮動層を取り込むことができている。サッカーは、今週から来週にかけて日本代表が3連戦を行うが、あまり盛り上がっている気はしない。前売りチケットの売れ行きも芳しくないという。Jリーグや協会関係者で、不人気に危機感を抱いている人は、いったいどれほどいるのだろうか。

東京ヴェルディ対甲府の一戦を見ていると、日本サッカー界の将来がますます心配になるのである。

■関連記事
取り込めていない浮動層
サッカー報道の激しいギャップ
長谷川健太への期待
足を引っ張ってるのは監督
オランダの深み