今シーズン途中の昨年12月に現役復帰し、2部落ちの危機にあるナントに加入した元フランス代表GKのファビアン・バルテズが、あと4試合を残したままクラブを離れる決意をした可能性がある。29日夜、レキップ紙がウェブサイトの速報で「バルテズ、クラブを去る」と伝えた。このニュースは30日付同紙の一面トップで報じられる模様。

 同紙やその他の報道によると、ナントが0-2で敗れた28日のレンヌ戦の後、バルテズが車でスタジアムの駐車場を出る際、ナントのサポーター数人が車を叩く、蹴るなどして通行を妨害した。サポーターの1人が車に執拗に食い下がってバルテズに罵詈雑言を浴びせると、バルテズは運転席から降り、報復のパンチを浴びせたとされる。すぐに警察官が制止したため乱闘には至らず、バルテズはそのまま帰宅した。

 バルテズは翌29日、クラブのミーティングに参加しなかった。ナントの家から荷物をまとめて家族とともに出て行き、実家のあるトゥールーズに向かったと報じられている。

 ナントを2部降格の危機から救う大きな期待を背負って入団したバルテズだが、数字的には十分に応えられていない。ナントは今季34試合で45ゴールを喫しているが、バルテズが出場した14試合の失点は、その半数以上の23点にのぼる。28日のレンヌ戦敗北で1部残留がいっそう厳しくなり、ナントのサポーターはピッチを去るバルテズに激しいブーイングを浴びせた。

 選手の控え室でもバルテズの周りの空気は冷たいようだ。チームメイトからは、バルテズに対するクラブの“特別扱い”や本人の“自分勝手な行動”(第30節のスダン戦では、自分のミスに腹を立てて試合途中で帰宅した)に不満が出ており、数人の選手とは険悪な仲とも伝えられる。

 レキップ紙の報道にもかかわらず、クラブからも本人からも退団の発表はまだない。ナントのルシヨン会長は、カナル・プリュス局のインタビューに答え、「彼(バルテズ)はきょうの練習に出なかった。試合後の出来事にショックを受け、トゥールーズの実家に帰りたいという申し出があった。彼に起きたことは異常な出来事で、申し出は理解できる。彼にもう一度やる気を出してもらうよう努めている。クラブと彼の関係がここで終わらぬことを望む」と語るにとどめた。