妻を殺害しその様子を動画に収めていた夫(画像は『BBC News 2018年9月28日付「Killer husband filmed wife’s last moments before murder」(NOTTINGHAMSHIRE POLICE)』のスクリーンショット)

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今年4月に英ノッティンガムシャー州で起こった家庭内暴力の果ての殺人事件についての裁判が9月に行われ、妻を刺殺した夫には少なくとも19年の実刑判決が下された。ルーマニア国籍の夫は結婚後、妻を虐待し続けていたようで事件当日には殺害直前の瞬間を動画に収め、その後妻の母親に「すみません」と謝罪のメッセージを送っていたことが明らかになった。娘を亡くした母親は、「もっと早くに気付いていれば」と悲しみを露わにしている。『The Sun』『BBC News』『Nottinghamshire Live』などが伝えた。

ノッティンガムシャー州ベストウッド・ヴィレッジで今年の4月28日、3児の母フェイ・カリマンさん(30歳)が結婚して3年になるルーマニア人の夫マリアン(32歳)に顔や首、腹部などをキッチンナイフで刺されて殺害された。12か所の刺し傷のうち、致命傷となったのは心臓への一突きだった。

フェイさんとマリアンは2013年にパブで知り合い、2015年に結婚した。フェイさんには前のパートナーとの間に9歳と11歳になる娘がいたが、マリアンと結婚後に娘(2歳)をもうけた。しかし幸せだった結婚生活は長くは続かず、2016年のクリスマスイブに口論になったフェイさんを階段から投げ落とすなど、マリアンは妻に対してしばしば暴力を振るうようになった。

フェイさんの母ステラ・ウィリアムズさん(50歳)が、娘が受けている虐待に気付いたのは2017年4月のことだった。目に痣ができ、首に絞められたような痕があったことから娘を問い質すも、フェイさんは「いろいろ問題はあるけどなんとかやっている」と答えていたという。しかし今年の3月ついに2人は別居、フェイさんは新しく見つけた仕事をしながら子育てに励んでいた。

ところが4月28日、2歳の娘が自宅2階でTVを見ている間にやって来たマリアンとフェイさんは口論になった。マリアンの弁護士によると、マリアンは「もう子供に近付かないで」というフェイさんの言葉に逆上し、殴って暴言を吐き始めたようだ。その様子を自らスマホの動画に収めていたマリアンは「お前を殺してやる」と言い放った後、フェイさんにナイフを突き立てた。「妻を殺した」とマリアンからの通報を受けた警察と救急隊員がフェイさんの自宅に駆けつけると、リビングに血まみれで倒れているフェイさんを発見、午後11時半に現場で死亡が確認された。

現場から姿を消していたマリアンはその後、逮捕された。警察には「自分も死のうと思っていた」と供述したようだ。事件前後にマリアンは友人男性に数回電話をしており、午後11時20分頃の電話で「妻を殺した。自分も死ぬ」と聞かされた友人は、マリアンに自首を勧めて警察にも通報した。

ノッティンガム刑事法院で行われた裁判では、マリアンが撮影したフェイさんの最期の姿とみられる動画が公開された。マリアンの狂気に怯え「やめて!」と叫ぶフェイさんの姿が映し出されると、フェイさんの家族や友人は号泣した。最愛の娘を失ったステラさんは、悲しみをこのように語った。

「私には息子と娘が1人ずついますが、フェイは私にとって親友のような存在でもありました。最初、あの男のことを聞かされた時には利用されているのではと思ったのですが、会ってみればいい人ですぐに打ち解けました。ですがそれはあの男の裏の顔だったのです。2歳の子の父親であり、家族を守らねばならない立場のはずなのに、あの男は子供たちから母親を奪い、私たちから大切な娘を奪いました。娘は、これから味わうはずだった子供たちの成長を楽しむ機会を奪われてしまったのです。2歳の孫は『パパがママの頭を叩いたのを見た』と話しており、今後孫にどのような影響を与えるのかがとても不安です。あの男は娘を殺害した後、私に『子供たちをよろしくお願いします。ごめんなさい』とメッセージを送ってきました。娘の命を奪っておいて、あんなメッセージを送るなんて冷酷で邪悪以外の何物でもないと思いました。」