W杯で注目している強豪国について語った宮澤ミシェル氏

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サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第51回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、ついに開幕したW杯で優勝候補とされる強豪国について。特に注目しているフランスとドイツ、それぞれのチームのストロングポイントがどこにあるのかを語ってもらった。

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ワールドカップ(W杯)がいよいよ始まった。日本代表の戦いは気になるが、やっぱり強豪国がどんなサッカーを見せてくれるのかも楽しみたいよね。

今大会で私が注目しているのは、フランスとドイツ。そして開催国のロシアだ。W杯はやっぱり開催国が勝たないことには盛り上がらない。

2010年南アフリカ大会は、開催国の南アフリカがグループリーグ敗退。W杯史上初めて開催国が決勝トーナメントに進出できなかったけれど、初戦でメキシコに引き分けて、2戦目でウルグアイに0-3で負けて、最終戦はフランス。誰もが南アフリカが未勝利でW杯を終えると思ったら、ミラクルなシュートが決まって2-1で勝った。

得失点差で決勝トーナメントに進めなかったけれど、あの試合の後、現地でタクシーに乗ったら運転手がご機嫌だったよ。「まったく期待していなかったのに、あのフランスに勝利だ!」って大騒ぎしていたからね。

今回のロシアも死に物狂いでグループAを勝ち抜きにきている。オープニングゲームでサウジアラビアと対戦して、5−0で勝利という見事な結果だったけれど、次はエジプト、ウルグアイが手ぐすねを引いて待っている。

エジプトには快足FWのサラ―がいて、ウルグアイには千両役者のスアレス、カバーニらがいる。強力なストライカーをなんとか封じ込めて決勝トーナメントに進んでもらいたい。

私の父の母国、フランスにももちろん期待している。CBはDFリーダーのコシェルニーが5月に故障して欠場。守備陣に少し不安はあるけれど、それでもレアル・マドリードのヴァランと、バルセロナのウムティティがいるんだからすごいよ。攻撃陣はグリーズマンがいて、デンベレがいて、ジルーがいて、トマ・レマルがいて、フェキルがいて、そしてムバッペ。アトレティコ・マドリードのケビン・ガメイロがメンバーに入れないほどの選手層の厚さだ。

この豪華メンバーをデシャン監督がどう生かすのか楽しみだよ。初戦オーストラリアに2−1で勝利して、2戦目がペルー、3戦目がデンマーク。対戦国にも対戦順にも恵まれた印象がある。余程のことがない限り、グループ1位は確実だね。

フランスにとっての本番は決勝トーナメント1回戦から。C組1位ならD組2位と対戦するけれど、D組はアルゼンチン、アイスランド、ナイジェリア、クロアチア。どこがきてもシンドイね。

そして前回優勝のドイツは今大会もいいチームだ。2チーム作れるくらい戦力が揃っているからね。昨年のコンフェデ杯で優勝したメンバーから11人が今回のW杯代表に入ったけど、GKとDF陣を除けば、MFのルディとブラント、FWのヴェルナーの3選手以外は全員がコンフェデには出ていなかった選手たち。

主力でないメンバーでコンフェデ杯に優勝できちゃうドイツが、主力を揃えた今大会でどんなサッカーを見せてくれるのか考えただけでワクワクするね。

初戦でメキシコに負けてしまったのは予想外だけれど、2戦目がスウェーデン、3戦目が韓国。巻き返しできるかに注目したいね。決勝トーナメントはF組1位ならE組2位との対戦で、E組はブラジル、コスタリカ、スイス、セルビア。ドイツにしろ、ブラジルにしろ、決勝トーナメントでの対戦は避けたいだろうから、ドイツもブラジルも第3戦まできっちり勝ち点を奪いにくるはずだ。

W杯史上初の連覇を成し遂げても不思議はないけれど、気がかりは日程面。W杯は8組に分かれてグループリーグを戦うけれど、E〜H組の後半4組に入ったチームが優勝したのは過去1ヵ国しかない。2010年のスペインだけだ。グループリーグが終了して決勝トーナメントが始まるまでのインターバルがA〜D組よりも1、2日少ないというハンディを乗り越えられるのかも興味深い。

ドイツ対イングランドも見たいし、ドイツ対ベルギーも見たい。そして、もし決勝戦でフランス対ドイツが実現したら興奮ものだよ。私の世代は、82年W杯スペイン大会や86年W杯メキシコ大会での名勝負を知っているからね。

ただ、W杯は何が起こるか誰にもわからないし、予想どおりの展開になったらそれはそれで面白くないからね。ロシア大会で生まれる新しいフットボールの歴史を、皆さんもしっかりと胸に刻み込んでほしい。

(構成/津金壱郎 撮影/山本雷太)

■宮澤ミシェル

1963年 7月14日生まれ 千葉県出身 身長177cm フランス人の父を持つハーフ。86年にフジタ工業サッカー部に加入し、1992年に移籍したジェフ市原で4年間プレー。93年に日本国籍を取得し、翌年には日本代表に選出。現役引退後は、サッカー解説を始め、情報番組やラジオ番組などで幅広く活躍。出演番組はWOWOW『リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』NHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』など。