NBAプレーオフ2018 カンファレンス・セミファイナル展望@ウェスタン編

 ウェスタン・カンファレンスのNBAプレーオフは早くもファーストラウンドが終了し、ヒューストン・ロケッツとゴールデンステート・ウォリアーズの2強が順調にセカンドラウンドへと進出した。その2強に挑むのは、第5シードのユタ・ジャズと第6シードのニューオーリンズ・ペリカンズ。下位シードの2チームに勝算はあるのか?


1ヵ月以上離脱していたステファン・カリーがようやく復帰しそうだが......

ヒューストン・ロケッツ(1位/65勝17敗)
vs.
ユタ・ジャズ(5位/48勝34敗)

 今季のロケッツは強い。エースのジェームズ・ハーデン(SG)は変わらず絶好調で、ミネソタ・ティンバーウルブズ(8位/47勝35敗)とのファーストラウンド第1戦ではスリーポイントシュート7本を含む44得点をマーク。もちろん、ウルブズのディフェンスが甘かったわけではないが、ジミー・バトラー(SG)やアンドリュー・ウィギンス(SF)といったディフェンスの得意な選手がマッチアップしても、今のハーデンは止められなかった。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 圧巻だったのは第4戦。ロケッツは第3クォーターだけで、ハーデンの22得点を含む50得点を挙げている。この数字はプレーオフにおける1クォーターの最多得点記録(51点)に1点及ばないものの、NBA史上2位の記録だ。また、単に大記録だったというだけでなく、「噛み合えば1クォーターで50得点できる」という意識は、今後もロケッツの選手には大きな心の余裕を、相手チームの選手にとっては大きなプレッシャーを生むことになるだろう。

 ただし、ハーデンが好調なら好調なほど、昨季の悪夢を思い出すロケッツファンも多いはずだ。昨シーズン、カンファレンス・セミファイナルで対戦したサンアントニオ・スパーズはハーデンにプレッシャーをかけ続け、第6戦でついにハーデンはガス欠を起こして失速。チームも敗れ去っている。

 しかし、今季のハーデンとロケッツが同じ轍(てつ)を踏むとは思えない。ハーデンのプレータイムにさほど変化はないものの、クリス・ポール(PG)の加入でボールを預けられる時間が増加し、肉体的にも精神的にもハーデンの疲労は大きく軽減されているからだ。

 そもそも今季開始直後、ロケッツのダリル・モレイGMが「どうすればウォリアーズに勝てるかに執着している」と発言したように、カンファレンス・ファイナルで対戦するであろうウォリアーズに勝つために作り上げたのが、今季のロケッツだ。セカンドラウンドぐらいでつまずくつもりは毛頭ない。

 対するジャズからすれば、そこが唯一のつけ込む隙になるのかもしれない。開幕前にエースのゴードン・ヘイワード(SF/ボストン・セルティックス)を放出し、チーム力ダウンが囁(ささや)かれたジャズだったが、ファーストラウンドではスター軍団のオクラホマシティ・サンダーを4勝2敗で撃破。ロケッツの意識が少しでもカンファレンス・ファイナルのほうに向くことがあれば、もしかして……。

 ジャズで注目すべきは、やはりルーキーのドノバン・ミッチェル(SG)だろう。レギュラーシーズンでは平均20.5得点だったが、プレーオフに入ると平均28.5得点まで上昇させている。サンダーを葬った第6戦では38得点を記録するなど、すでにルーキーという枠では語れない選手だ。

 ただ残念なのは、ファーストラウンド第3戦で26得点・ 11リバウンド・10アシストのトリプルダブルを記録したリッキー・ルビオ(PG)が第6戦で左ハムストリングを痛めてしまったことだろう。10日間ほどの休養が必要の見込みと診断されてしまった。

 ジャズの勢いは認めるものの、ロケッツ有利は揺るがない。不利なジャズが勝機を掴むためには、レギュラーシーズン1試合平均99.8失点でリーグナンバー1に輝いたディフェンス力でロケッツを封じ込めるしかないだろう。ファーストラウンドでサンダーを100点以下に抑えた試合は3戦3勝。無敗を誇っている。今プレーオフ平均110.4得点のロケッツを100点以下に抑えるのは至難の技だが、そこが勝敗を分けるポイントとなるのは間違いない。

ゴールデンステート・ウォリアーズ(2位/58勝24敗)
vs.
ニューオーリンズ・ペリカンズ(6位/48勝34敗)

 ファーストラウンドでは第3シードのポートランド・トレイルブレイザーズ(49勝33敗)を4勝0敗でスウィープ。終盤までもつれるだろうという予想を大きく裏切り、第6シードのペリカンズがあっさりとカンファレンス・セミファイナルに駒を進めた。

 チームを躍進させた主役は、アンソニー・デイビス(PF)とレイジョン・ロンド(PG)だ。ファーストラウンド4試合で、デイビスはリーグナンバー1の平均33.0得点、ロンドもリーグナンバー1の平均13.3アシストを記録。2選手で完全にコート内を掌握し、トレイルブレイザーズを圧倒した。

 対するウォリアーズは、エースのステファン・カリー(SG)を左ひざの故障で欠きながらも、スパーズとのファーストラウンドを4勝1敗で勝ち抜いている。ケビン・デュラント(SF)とクレイ・トンプソン(SG)が好調で、ファーストラウンドではふたりで1試合平均50.8得点を記録する暴れっぷりだった。

 すでに始まったペリカンズとのカンファレンス・セミファイナル第1戦でも、デュラントが26得点、トンプソンが27得点をマーク。またもふたりで得点を積み重ね、123-101というハイスコアゲームで初戦を制している。

 これだけ強いウォリアーズに第2戦から復帰予定のカリーが加われば、ペリカンズのつけ入る隙は微塵(みじん)もないように思える。しかし、そう単純な足し算にはならないのが、バスケットボールの醍醐味なのかもしれない。昨季の覇者ウォリアーズが敗れる可能性は、カンファレンス・ファイナルよりもこのラウンドのほうが高いのではないだろうか。

 3月23日から欠場しているカリーがコートに戻ってくるためには、当然ながらゲーム感や本調子を取り戻す時間が必要となる。また、チームケミストリーの再構築も欠かせず、カリーの復帰初戦からフルスロットルで戦うというわけにはいかないはずだ。

 一方のペリカンズはスウィープで勝ち上がったため、ウォリアーズよりも長く休養を取ることができている。ウォリアーズはデイビス対策としてスモールラインナップを敷くが、アシストに秀でたロンドがいることによって、シリーズ終盤までリーグ屈指のビッグマンを抑え切れるとは思えない。カリー復帰でウォリアーズがバタバタするようなことがあれば、もつれる可能性は十分にある。

 はたして、カンファレンス・ファイナルはレギュラーシーズン成績どおりにロケッツvs.ウォリアーズの2強対決になるのか。それとも、予想を裏切るジャイアントキリングが起こるのか。ウェスタンのセカンドラウンドはどの試合も見逃せない。

(イースタン編はこちら>)

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