男女の仲を深めるのに欠かせない、デート。

完璧だったと思ったのに、うまくいかないときもある。私たちはそんなとき、こう考える。

―あの時の、何がいけなかったのだろうか?

あなたはその答えに、気づけるだろうか。

カジュアルな初デートを楽しんでいた亜利沙。しかし、デート後に態度は急変し、潤はLINEを無視されてしまう。

その答えや、いかに。




それは潤くんと出会った食事会の前日のこと。別の男友達と食事をしていた時に、言われたセリフがあった 。

「金がかかりそうな女とは、結婚したくない。」

その言葉にドキリとした。恐らく私は、典型的な“お金がかかりそうな”女に見えるからだ。

見た目も派手だし住んでいるのは青山で、しかも元モデル。典型的な“怪しい港区女子”に見えるだろう。

実際には毎日必死に働いているし、そんなことはないのだけれど、この見た目と住んでいる場所で損をしていると気がついた直後だった。

「亜利沙ちゃんは、ハードル高そうだよね。同年代の男が声かけるには」

だから潤くんから食事会の席でこう言われた時に咄嗟に出た答えがあった 。

「それ、よく言われる!全然そんなことないんだけどね〜。普段は居酒屋とかにも行くし。」

さすがに居酒屋には行かないが、UberEATSも好きだし、高級店ばかりに行くわけでもない。

「そうなの?それは意外だね。全然そんな風に見えないけど。毎日高級店行ってそう。」

「そんなことないよ〜。カジュアルなお店も好きだよ。逆に、そういうお店が連日続くと疲れちゃうから、家庭的な料理が食べたくなるの。」

これも、嘘ではなかった。連日外食だと自炊をしたくなるし、胃を休めたくなる時もある。

「本当?じゃあ今度デート誘ってもいいかな。」

そう言われ、私はちょっとタイプだった潤くんの前で“いい女”を演じようと決めた。しかし結果として、私は彼に嫌気がさしてしまうことになる。


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A1:初デートくらい、男性が店を決めてほしい


昔から結婚願望が強かったが、26歳を過ぎて一層その思いが強くなってきた。

だからご縁があって出会った相手は大切にしよう、と心に決めていた。

しかしそんな矢先、潤くんから来たLINEを読んで、少しデートに対する期待値が下がる。

-亜利沙ちゃん、何か食べたい物か行きたいお店ある?
-何でもいいよ。お店は、お任せします♪

行きたいお店を初デートで指定できる訳がないし、「何か食べたい物」とざっくり聞かれても返答に困る。

だから店は、男性が選んで欲しい。

気を取り直して連絡を待っていると、麻布十番にある老舗の洋食屋さん『エドヤ』のリンクが送られてきた。




麻布十番に昔からある『エドヤ』は、まさに“街の洋食屋さん”という雰囲気で、一歩足を踏み入れた瞬間から、私はすぐにこのお店が好きになった。

しかも味が抜群で、エビフライを一口頬張ると衣はサクサク、大きな海老はプリッとしていて、思わず頬が緩む。

「私、本当はこういうお店が好きなんだよね〜。海老フライとか、ちゃんとお店で食べるのは何年ぶりだろう?美味しい〜!」

高級フレンチもいいけれど、子どもの頃によく食べた、こうした家庭料理も大好きだ。

「潤くんとのデート、楽しいなぁ。同じパターンのデートばかりだったから、初デートでこういうのもいいね。」

デートらしいハイエンドな勝負レストランも、もちろん大好きだ。

でもたまには、こういった肩肘張らずに楽しめる、カジュアルなお店もいいものである。

最近、誰とデートしても連れて行ってくれるのは高級店ばかりだったから、逆に新鮮だった。

「喜んでもらえて良かった!」

そう言いながら、意気揚々と嬉しそうにワインを飲む潤くんを見て、可愛いなと思ったし、楽しいデートだった。

2軒目に移動する前までは。


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A2:“カジュアルな店”と“雑多な店”では、大きく意味が異なる


1軒目を後にし、私たちは芋洗坂にある雑多な居酒屋の前でタクシーを降りた。

最初、“ここだよ”と言われた瞬間、咄嗟に足がすくむ。

-え...まさかこの店に、初デートで連れて行くの?

たしかにカジュアルなお店が好きだとは言ったけれど、それは半分社交辞令も含まれている。

それに何より、“カジュアルな店”と“雑多な店”では大きく意味が異なる。酔っ払いのサラリーマンでごった返すタバコの匂いが充満しているお店に来たことを、私は早くも後悔し始めていた。

「靴を脱いで上がるお店だけど、平気かな?」
「うん、大丈夫だよ。」

嬉しそうにニコニコとしている潤くん。

-もうお店に入っている以上、今更嫌だと言える訳ないでしょ...

靴なんて、脱ぎたくない。私が今日履いているのは、一足14万するルブタンの新作のショートブーツである。

-こんな雑多な店で、誰かに靴を間違えられたら嫌なんですけど...

そう思いながら、私は渋々座敷に上がった。




「潤くんって、本当に気取らない人なんだね。このお店、初めて来た〜!」
「そうだねぇ。高級店も好きだけれど、こういう店も案外好きで。中々新鮮でしょ?」

私の思考回路はいつの間にか、“いかに早くこのデートを終わらせるか”という考えに変わっていた。

「うん!こんなお店初めてで、楽しい♡」

とりあえずこの場は上手く取り繕って、無難に終わらそう。そう思い、私はいつも以上にニコニコしながら、“楽しい”を繰り返した。

例え心の中で“つまらない”と思っていても、一対一の食事中にさすがにそれは言ってはいけない気がする。

時として、優しい嘘も必要だ。

「亜利沙ちゃんのイメージが変わったよ。もっと気取っていて、ツンケンしている人かと思っていたから。」

たしかに、金がかかる女というイメージを払拭させたくて、男性ウケしそうなセリフを言ってみたが、これは少し意味が違う。

「カジュアルなお店も好き」と言うのは、前提として高級レストランの良さも知っているからだ。

-私、この程度の女って思われた…?

それはそれでショックである。

「ちょっと雑多な店だけど、大丈夫だった?」

「楽しいよ!私、こういうお店も大好きだから。」

初デートで、これはない。私はタバコ臭くてうるさいお店から一刻も早く出られることだけを望んでいた。



「潤くん、ありがとう。今日はとっても楽しかった♡」

もう会わないと思うから、最後くらい良い印象で終わらせておかないと。そう思いながらとびきりの笑顔でお礼を言い、タクシーを降りた。

その後、何度も潤くんから連絡が来ているものの、私は一切返事をしていない。

店選びのセンスがない人は、生きるセンスもない。
この法則は、間違っていないと思う。

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デートの答えあわせ【Q】:特に今の季節に気をつけたい。女がやりがちなミス

<これまでのデートの答えあわせ【A】>
Vol.1:「明日、朝早いから帰ります」は真実か?女が2軒目で帰る理由に気づかぬ男
Vol.2:2人きりで食事に行くことの意味。女性がデートの誘いに乗った本当の理由とは?
Vol.3:待ち合わせは「駅or店」どちらが正解?女が思う、ベストな集合時間と場所とは
Vol.4:男がデート中に見ている仕草。女が良いと思っていることが、仇になる?
Vol.5 : 男が勘違いしがちな“無駄な優しさ”。メニュー選びに潜む罠
Vol.6:店選びで女が見ている点。女が男に求める気遣いと、欲する一言とは
Vol.7:女は出す“フリ”をすべきなのか?会計時に男が女に求める行動とは
Vol.8:女だって、恥ずかしい。デート中に、好きな男性にだけ見せる仕草とは
Vol.9:あゝ悲しき男の勘違い。女が仕掛けてくるボディタッチの真の意味