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●「M」海外販売のいきさつ

NTTドコモの2018年冬春モデルで注目すべきは、2画面スマホの「M」だ。ドコモが企画、ZTEが製造するこの端末は国内のみならず、海外でも販売される。ドコモは通信の会社であり、スマホメーカーではない。スマホ開発を通じて何を狙っているのか。

○米国と英国でも販売される「M」

ドコモが新たに発表した2画面スマホの「M」。2つのディスプレイで別々のアプリが利用できるマルチタスクに対応したスマホだ。2つの画面に1つのアプリを表示させ、たとえばグーグルマップのみを表示して地図を大きく見やすくするような使い方もできる。

かつて同様のコンセプトを持つスマホとして「MEDIAS W」があった。それを復活させたのがドコモであることは別に記したが、興味深いのは「M」が海外でも販売されることだ。

現在、「M」の取扱いを表明するのは、米国のAT&T、そして英国のVodafone。AT&Tでは「Axon M」として売り出すが、「M」はドコモにとってのグローバルモデルとし、AT&TやVdafoneからは販売台数に応じたロイヤリティを手にするようだ。ちなみに、自社企画のスマホが海外で発売されるのは初になるという。

何か腑に落ちないのは筆者だけではあるまい。販売台数に応じたロイヤリティが得られるにせよ、ドコモは通信会社であり、どういった経緯でこうなったのかは気になるところだ。

○大本にあるスマホへの不満

「M」誕生の背景を探り浮かんでくるのは、iPhoneを含むスマートフォンへの不満だ。「5インチディスプレイを備えた長方形型のモバイル通信端末」という括りから、大きくそれることはないのが、今のスマホだ。

新商品もチップやカメラの性能がわずかに向上し、デザインが少し変わるだけで、大きな変化がない。それを残念に思っているのが世界のネットワークオペレーターというわけだ。

多くの海外のオペレーターは、利用者に新たなスマホの選択肢を提供できずにいるという不満を抱えていた。それをドコモは認識していた。海外のオペーレーターからはかねてより、意欲的な取組みをする際には、是非とも紹介して欲しい、と言われていた。かねてからの付き合いが「M」の海外販売につながっていったわけである。コンセプトを記した企画書とモックをもにMの特徴を説明、そう時間がかからず採用が決まったという。

「M」の海外販売はまだ2社だが、多数の海外オペレーターと交渉をしており、取り扱いは今後も増えていきそうだ。ドコモは「M」以降も、引き続き特徴的な端末の開発に取り組んでいくとしており、iPhoneとその他大勢というスマホの現状をわずかながらも変えることになるかもしれない。

●ドコモの戦略が変わるかも

○キャリアの戦略を変える力も?

ところで、ドコモにとって自社企画のスマホはロイヤリティ収入にとどまらない大きな意味を持つ。ドコモを初め大手キャリアが抱える課題として、格安通信のMVNOにいかにユーザーが奪われないようにするかがある。その対策のひとつが「M」となるように思われるからだ。

通信事業者を選ぶ際、かつては大手キャリアを選ぶべき理由があった。Xperiaを使いたいならドコモがいい、iPhoneを使いたいならソフトバンクがいい、と人によって様々だったはずだ。しかし、どのキャリアも同じような端末を扱うようになり、選ぶ理由はほぼなくなった。

さらに、総務省のガイドラインにより、端末の実質負担額をゼロにすることは許されなくなり、SIMロック解除までの期間も短くなった。つまり大手キャリアを選ぶ理由が年々薄れているのが現状である。通信料金の安いMVNOに乗換えが進むのは自然なことだ。

「M」の登場はこうした現状を少しでも変えるための戦略と考えられそうだ。尖ったコンセプトを持ち、万人ウケすることはないだろうが、響く人には響く端末となるだろう。そうした選択肢はドコモを選ぶ理由にもなるわけだ。とはいえその効果がわかるのは、発売予定日となっている2018年1月以降となる。「M」のような尖った存在は、ドコモにとって新たな戦略となりうるだろうか。