格安スマホの新プラン発表相次ぐ。「制限後も1Mbps」の楽天、「コミコミ」のIIJmio:週刊モバイル通信 石野純也
大手MVNO(格安スマホ)が、相次いで新料金プランを発表しています。

バラバラに契約するより安い「コミコミプラン」


IIJmioを展開するIIJは、キャンペーンとして「コミコミセット」を導入。11月30日までの期間限定で、テスト的な実施という位置づけですが、端末と3分間の通話定額、料金プランがセットになったプランで、それぞれをバラバラに購入、契約するより、安く上がるのが特徴です。端末に「VAIO Phone A」や「ZenFone Live」を選んだときの1年目の料金は、1880円からとなります。

2年目からは料金が上がり、2880円になりますが、端末の割賦が終わると再び料金は下がって2200円に。ここからは、1年目の料金を抑えられるよう、設計された料金プランであることが分かります。VAIO Phone A、ZenFone Live以外では、シャープの「AQUOS SH-M04-A」と富士通の「arrows M04」を用意。これら2機種を選んだときは、端末価格が高いぶん、1年目が2480円、2年目が3480円、3年目が2200円になります。

IIJmioがキャンペーンとして導入した「コミコミセット」

セットプランというと、これしか選択肢がないように思われるかもしれませんが、上位のプランに変更することも可能。上記の金額は、月3GBまで使える「ミニマムスタートプラン」がベースになっていますが、これを6GBの「ライトスタートプラン」、10GBの「ファミリーシェアプラン」にしてもいいというわけです。簡単に言えば、料金プランで3つ、端末で2つの選択肢があり、その組み合わせで合計料金が決まります。


セットプランだが、ベースとなる料金プランを上位のものに変更することは可能

通信制限後も1Mbpsの「スーパーホーダイ」


新料金を発表したもう1社が、楽天の楽天モバイル。こちらは、元々端末や通話定額がセットになったコミコミプランを提供していましたが、これよりもシンプルな、「スーパーホーダイ」を発表。9月1日から提供を開始します。スーパーホーダイの料金は、最安の「プランS」で、1年目が1980円。高速データ通信が2GBまで利用できます。また、6GBの「プランM」は2980円、14GBの「プランL」が4980円に設定されています。


1年目1980円からの「スーパーホーダイ」を発表した楽天モバイル


高速通信をより多く使える「プランM」「プランL」も用意

楽天モバイルのスーパーホーダイも、いわゆるセットプランの形になっており、5分までの通話定額が含まれています。スーパーホーダイの名前の由来は、高速通信容量を使い切ったあと、制限された速度も比較的高速なこと。

通常のキャリアだと、128Kbpsや速くても300Kbpsに制限されるのが一般的ですが、楽天モバイルのスーパーホーダイの場合、この速度が1Mbpsになります。1Mbpsあれば、Webの読み込みがスムーズなだけでなく、画質をある程度絞れば動画を見ることも可能。従来型の容量別プランと、速度を絞った使い放題プランを組み合わせた料金プランと言えるでしょう。


高速通信を使い切ったあとも、下り1Mbpsと速度制限が緩い

ただし、MVNOの通信がもっとも混雑する12時から13時、18時から19時の2時間だけは、最大の速度が300Kbpsに制限されます。帯域に余裕がなくなってるMVNOの場合、この時間帯だと1Mbpsを切ることもあるので、仕方がない措置と言えるかもしれません。むしろMVNOの傾向を見ていると、300Kbpsも出れば御の字です。

また、楽天モバイルのスーパーホーダイは、IIJmioのコミコミセットとは異なり、この料金に端末代は含まれていません。ネットではその大胆な端末割引に"三木谷割"という愛称がつくほどの楽天モバイルなのに......と思った方もいるかもしれませんが、こちらに関しては、別途「長期優待ボーナス」を用意しています。

スーパーホーダイは、最低利用期間が通常だと12カ月に設定されていますが、あえてこれを24カ月に延ばすと、端末代が1万円割り引かれます。36か月だとこれが2万円に増加。ミッドレンジモデルで安価なものを選択すれば、事実上、端末代がタダになるという仕組みです。


最低利用期間を延ばすと端末割引を受けられる「長期優待ボーナス」

いわゆる"三木谷割"は突発的に実施されることも多く、いつでも利用できるものではありません。これに対し、長期優待ボーナスはきちんと料金プランに組み込まれているため、時期や端末の種類を選びません。この点で、長期優待ボーナスはより民主的な仕組み。三木谷割ほどの大胆さはありませんが、常時メリットがあるという点では、"真・三木谷割"と呼んでもいいのかもしれません。

背景に大手キャリアのサブブランド


IIJmioと楽天モバイル、2社の料金プランは、味付けこそ異なりますが、共通点も少なくありません。1つ目が1年目に限って料金が安いこと。IIJmioは1880円、楽天モバイルは1980円からと、最低料金が2000円をわずかに下回る設定になっているのも、似ているところです。3分と5分という違いはありますが、通話定額がセットになっているのも共通点です。

こうした料金設定からは、大手キャリアのサブブランドである、ワイモバイルやUQ mobileの影響が見え隠れします。どちらのキャリアも、1年目の料金が1980円から。通話定額がセットになっており、2年目の料金が上がる点も同じです。2社とも、大手キャリアの強力な販売力や資金力を背景に、契約数を急増させており、MVNOにとっては脅威になっています。IIJmioも楽天モバイルも、マーケティング的にあえて価格帯を近づけ、この2社と同じ比較軸に乗りたいという思いがあるように見えます。

実際、MVNO最大手のIIJにも契約者数には伸び悩みの傾向が出ており、同社の代表取締役社長COO、勝栄二郎氏も決算会見の場で、ワイモバイルやUQ mobileの影響があることを認めています。MVNO、特に大手にとっては、ここに対抗する必要性があるというわけです。

一方で、IIJは「端末の販売は増えている」(同)といい、利益は増加傾向。コミコミプランが成功すれば、この利益傾向に拍車がかかるかもしれません。新プランを投入する背景には、サブブランド対抗と経営的な成長を両立させるという、2つの目的がありそうです。


サブブランドのあおりを受け、回線数の伸びが鈍化傾向にあるIIJmio


IIJの勝社長は、端末販売が伸びた結果、利益を押し上げていることを明かした