「新しい中盤の構成は悪くなかったと思うけど…。ピッチから出てしまったら、もう何も助けられない。助けられないのがもどかしかった」と早い時間帯に下げられた原口は悔しさを露わにするしかなかった。リオ世代のボランチコンビとの連携に手ごたえをつかみかけた矢先の井手口のアクシデントはまさに不運としか言いようがなかった。彼自身もまだ動ける状態での交代に納得いかなかった。最初の3人がもう少し同じピッチでプレーできる状態だったら、試合展開も変わっていたかもしれない。そこは悔やまれるところだ。

 とはいえ、アルベルト・ザッケローニ監督時代から中盤の軸を担ってきた長谷部・香川不在の中、新世代の中盤トリオが新たな可能性を垣間見せてくれたのは、前向きな材料と言っていい。右スネ打撲の影響から出番なしに終わった山口蛍(セレッソ大阪)、コンディション不良で今回の代表メンバーから外れた清武弘嗣(C大阪)らも加わって、より多彩な中盤が構成されるようになれば、日本はもっと戦い方のバリエーションを広げられるはずだ。

 ハリルホジッチ監督は「長谷部の穴はなかなか埋まらない」と嘆いていたが、33歳のベテランにいつまでも頼り続けるわけにはいかない。イラク戦は悔しい結果に終わったが、遠藤や井手口がある程度、やれることを示したのは大きな前進だ。原口にしても香川や清武とは異なるトップ下像の一端を示したのではないか。この3人がオーストラリア、サウジアラビアとの最終予選ラスト2戦で本物の戦力になってくれれば心強い。過酷な環境で体感したものをどのように未来につなげていくのか。そこが何よりも肝要だ。

文=元川悦子