レアル・マドリーがユベントスを4−1で下し、初の2連覇を飾ったチャンピオンズリーグ決勝。

 開始7分にピアニッチがゴール正面から、アウトに掛かるインステップで放った右足弾は、ポストの外側から巻いて入る高度な一撃だった。

 これをマドリーGK、ケイラー・ナバスが超美技で止めていなければ、つまり、ユーベが先制点を奪っていれば、試合はどんな展開になっていただろうか。

 また、カルバハルの右からのマイナス気味の折り返しを、クリスティアーノ・ロナウドが決めたマドリーの先取点のシーンで、そのシュートがユーベDFボヌッチの右足に当たり、コースが変わっていなければ、それはGKブッフォンに阻止されていたのではないだろうか。

 決勝ゴールとなったカゼミーロの一撃もしかり。シュートは、ケディラの足に当たりコースが変化。ゴール枠内に飛び込んだが、当たる場所が少しでも違っていれば、ボールは異なる方向に跳ね返ったはずだ。ゴールは決まっていなかった可能性がある。

 サッカーは結果に対して運が3割影響すると言われるが、この決勝戦はどうだっただろうか。下馬評では、マドリーわずかに有利。接戦の範疇に収まる予想だった。4−1のスコアを予想する人は少数派だった。

 そのスコアには、運が多分に絡んでいた。だが、試合が終わったいま、多くの人がスコアに妥当性を感じていることも事実。レアル・マドリーは強かった。そうした感想に異論がある人は少ない。

 サッカーの面白いところだ。もしピアニッチのシュートが決まっていて、ボヌッチの足にも、ケディラの足にもボールが当たっていなければ、あるいは異なる場所に当たっていれば、ユーベは2−0リードの状況で、残り30分を迎えていただろう。

 それでもマドリーは、勝利を飾ることができただろうか。同点が精一杯。敗戦の可能性は6割以上だと思う。絵空事ではない。十分にあり得る話だ。

 ユーベはバルセロナと戦った準々決勝第1戦で、3−0の勝利を収めた。その前の決勝トーナメント1回戦で、パリSGを第1戦0−4から、第2戦で6−1とし、通算スコア6−5で勝利していたバルサだが、2戦続けての大逆転劇はさすがに難しかった。

 相手が手堅さには定評のあるユーベであることも輪を掛けたが、その第2戦の途中からは、半分諦めムードが入っていた。ユーベ3−0バルサ。この結果が、決勝戦対マドリー戦の下馬評に影響していたことは確かだ。

 バルサに3−0で勝った今年のユーベは強い。マドリーとの決勝は接戦になるに違いない。そうしたムードに支配される原因になっていた。だが、3−0というスコアは、バルサとユーベの正統な力関係を示すものではなかったはずだ。トーナメント戦ならではの結果と言うべきだった。

 決勝戦を終えたいま、世の中は「マドリー強し」一色に包まれている。92−93からスタートしたCLでは、2連覇は初。チャンピオンズカップ時代を含めると、88−89、89−90のミラン以来、27シーズンぶりの快挙になる。通算の優勝回数も、12回(CLは6回)に伸ばした(2位はミランの7回)。

 わずか90分の試合を経て、ストーリーはガラリ一変した格好だ。その中にはユーベにとって不運な要素、マドリーにとって幸運な要素が少なくとも3箇所、含まれていたにもかかわらず。ユーベ2−0リードで後半の佳境を迎えていても不思議はない試合だったことは、すっかり忘れられた状態にある。

 それでもユーベが勝つことがある。マドリーも負けることがある。それがサッカーだ。結果はとても重要だが、結果に頼りすぎるのは問題。真実を見落とす危険がある。結果と内容を勘案しながら、フラットな目でバランスよく眺める必要性をあたらめて痛感させてくれた16−17のCL決勝だった。

 とはいえ、フラットな目で思う。マドリー強し、だと。アヤックス(70−73)、バイエルン(73−76)に続く3連覇も十分狙えるーーと言いたくなるが、ひとつ間違えば失速もあり得るのがこの世界。マドリーは01−02に優勝を飾った後、13−14まで12シーズンもの間、決勝にさえ駒を進めることができなかった。メンバーは豪華だったにもかかわらず。

 運がなかったでは済まされない、サッカーの質にかかわる問題が含まれていた。その気配は01−02の決勝戦で感じることができた。今後への不安を感じさせる優勝ーーとの予想は、手前味噌で恐縮だが、見事的中した。

 勝っても悪い匂いを感じるときがある。負けてもよい匂いを感じる事がある。サッカーを見える上で、大切にしたいのはこの感覚だ。その点、今回の決勝はどうだったのか。負けたユーベに特段、よい匂いはしなかった。少なくとも来シーズン、こうしたら勝てるというイメージは湧かなかった。対するマドリーは、悪くないという印象。マルコ・アセンシオがマークした最後の4点目に象徴される終わり方のよさが目に付いた。3連覇の可能性は40%。僕はいまそう思っている。