最近は、立会分娩・無痛分娩・フリースタイル分娩・水中分娩などお産の仕方も選べるようになりました。分娩は命を産み出す大きな仕事。二人分の命が関わっていることですから、情報を集めて夫婦でしっかり話し合うことが理想です。今回はよく聞く「無痛分娩」と「陣痛促進剤」についてご紹介します。

無痛分娩って痛くないの?

「無痛」という言葉から全く痛くないと勘違いしてしまいそうですが、無痛分娩でも痛みはあります。お産の痛みは個人差がありますが、やはり赤ちゃんを産むことは痛みや苦しさを伴います。無痛分娩は麻酔で痛みを和らげてくれるお産の方法です。陣痛による痛みを緩和するのが目的で、意識もありますし陣痛のいきみもちゃんとあります。欧米では無痛分娩が半数以上と一般的ですが、日本ではまだ対応している産科もあまり多くはないのが実情です。

無痛分娩には二種類あり、計画出産で分娩日を決めて当日に子宮口をゆっくり開き、陣痛促進剤で陣痛を誘発し、麻酔で痛みをコントロールする方法、陣痛が起こってから麻酔で痛みをコントロールする方法があります。いずれも麻酔科医と産科医の協力が必須で、緊急時でも分娩・手術ができる体制が整っている病院でないと難しいため、あまり多くないのです。無痛分娩での事故はほとんどが麻酔によるもので、無痛分娩=危険というわけではありませんが、陣痛が弱くなるために分娩に時間がかかり過ぎたり、吸引分娩(赤ちゃんを吸引して引っ張る)になるリスクもあります。

陣痛促進剤とは? 誘発はしないほうがいいの?

陣痛促進剤とは、まだ起きていない陣痛を人工的に起こす場合と、陣痛が弱く(微弱陣痛)分娩が長くなったり母子の体力が著しく低下する恐れがある時に陣痛を強くするために使います。妊娠41週までの正産期を過ぎると、赤ちゃんの体重が増えすぎてしまい分娩のリスクが増えるため、陣痛促進剤で陣痛を誘発する方法が検討されます。母体や胎児の状態が著しく弱っていて、妊娠状態を長引かせると危険になる場合にも陣痛を誘発させるために促進剤を使います。

陣痛促進剤を使うと、自然分娩に比べて陣痛の開始から出産までの時間が短いために痛みが強いと感じることもあるようですが、陣痛の痛み自体が強くなるということはないようです。子宮口の開き具合、陣痛の強さ、母子の体力などに注意しながら慎重に投与する必要があるため、量を間違うと過強陣痛や子宮破裂、頸管裂傷、胎児の仮死状態などの事故に繋がるリスクもあります。

必要なケースだってある。事前によく調べておこう

分娩に耐えられる体力が少ない場合や合併症を併発している場合、胎児が弱っている場合などには無痛分娩をすすめられることもあります。痛みが強い場合や疲労が強い時、母体も体力を消耗しますが胎児も酸素が少なくなったり体力が弱ってしまうためです。

それでも自然分娩が難しい場合には、緊急帝王切開になることだってあります。分娩は一人一人、経産婦でも毎回違うもの。何が起こるかわからないのです。無痛分娩も陣痛促進剤も、基本は母子の安全を確保しながら分娩するためのものですが、リスクもあることを把握し、経験者の話や病院の実績なども考慮することが大切です。


writer:しゃけごはん