「サウジアラビアの中盤にはけっこう速くてドリブルが好き、という選手がいるので、そういう相手に対してボールを奪う能力が求められているのかなと。(山口)ホタルや井手口、永木もそうですけど、どんどん前へ、時にはゴール前にも入っていく。ボールをポゼッションしてリズムを作る、という選手が今回のボランチに選ばれているわけではないけど、それでも自分たちの特徴を生かしつつ、ゲームをコントロールすることも自分を含めた4人はやらなきゃいけない」

 故障や不慮のアクシデントなどが重なり、アジア最終予選でまだピッチに立っていないDF長友佑都(インテル)は外から見る時間が増えた分だけ、代表チームに対して少なからず違和感を覚えるようになったという。

「W杯に行かなければいけない、というプレッシャーを一人ひとりが感じているというか。やっぱり躍動感というか、みんながサッカーを楽しんでいるのかというか…。そういう勢い的なものが落ちているのかな、というのが正直ある。それ(勢い)がないと相手に対する怖さも出ないし、いい時の自分たちの躍動感というか、怖いモノなしというようなメンタルをもう一度みんなが持って、チームを作っていかないとちょっと厳しいのかなと」

 躍動感を生み出すのは自信。それが少しずつ萎んできたのか。長友によれば、さかのぼればグループリーグで1勝もできずに敗退したブラジルW杯に行き着くという。そして、昨年1月のアジアカップ2015でも準々決勝で敗退し、アジア王者の肩書を失ったことで負のスパイラルに拍車がかかった。

 A代表に名前を連ねて9年目。無名の存在から不動の左サイドバックとして一時代を築いた長友も、9月には30歳になった。だからこそ、その胸中にはさまざまな思いが行き来する。

「長く代表でプレーさせてもらっている選手たちの経験から来る落ち着きも大事だけど、若い選手たちには遠慮なんてせずにガツガツと、チームの中心になって引っ張ってやるんだ、というくらいのギラギラしたメンタルを持ってほしいですよね。そういうメンタルは必ず彼らを成長させる。僕自身もそうだし、(本田)圭佑もオカ(岡崎慎司)も、同世代の選手たちは自分たちが上り詰めるんだという思いを常に抱いていたから。もちろん、今も僕たちにもありますよ。僕らもギラギラしたものをもう一度、心の底から出す気持ちも大事だし、そういうベテランを見ることで若い選手もついてくるんじゃないかと」

 体調不良で前日練習に姿を見せなかった長友は、オマーン戦を欠場する可能性が高い。それでも9日の練習後の取材エリアで解き放ったパッションと日の丸へ寄せる深い愛情は“言霊”となって、チーム全体へと伝播していくはずだ。

 そして、FW本田圭佑(ミラン)は、指揮官の言う「ヨーロッパで出場機会の少ない選手」の代表格となる。リーグ戦はわずか3試合、81分間とトータルの出場時間が1試合に達していない。10月25日のジェノア戦で初先発を果たしたものの、見せ場を作ることなく62分にベンチへと退いている。

「1試合チャンスがあったんですけどモノにできず、その後はそのまま(リザーブ)という感じですね。結果がついてこなかった点に関してはもちろん改善しなきゃいけないけど、まったく悲観はしていない。何を言ってもこの世界は結果で判断されるので、いい結果を出せるように、最大限の準備をしていきたい」

 代表チームに招集されるたびに、今シーズンのミランにおける厳しい立ち位置を問われる。それでも強気な表情を崩すことなく代表戦のピッチに立ち続け、肉体的だけでなくメンタル的にもタフなことを証明してきた男は、11月シリーズを「テストマッチを挟めることで、時間的に余裕があると感じる。それをしっかり生かさないといけない」と明言。チームが目指す方向性に修正を施せるチャンスが、オマーン戦になると力を込めた。