宇佐美も能力の高い後輩をかわいがり、練習時間はもちろん、それ以外の時間をいかに有効に使うのか等々、プロとしての心得を説いた。
 
 宇佐美がアウクスクスブルクへの移籍を決めてG大阪を去る時、井手口はサッカーうんぬんではなく、「しっかりパパやれよ」と私生活についての助言を受けたという。それは、宇佐美が井手口のサッカーに対する姿勢をすでに認めていからに他ならない。
 
 また、「いつか代表で一緒にやれたらええな」とも言われた。G大阪では井手口自身がなかなか試合に出れず、一緒にプレーできなかった。それだけに、その言葉はしっかりと胸に刻んでいる。今回、宇佐美は代表から外れたが、井手口が確固たるポジションを築けば来年以降、そのチャンスが訪れるだろう。
 人への強さ、守備のしつこさ、攻撃のスピードと左右のミドルシュート。現代表のボランチが持っていない確かな力を井手口は兼ね備えている。人見知りな性格で先輩とのコミュニケーションが円滑に進むかどうかの不安はあるが、キャラ的にかわいがられるタイプ。馴染めば、自分のカラーをより良さを出せるだろう。
 
 そのためには、ぜひオマーン戦で起用してほしい。
 G大阪では今野とのカップリングが非常にバランスがいいが、井手口の良さはパートナーを選ばないこと。相棒の能力に合わせて上手くプレーができる。「これまで緊張したことがない」という物怖じしない強靭なメンタルの持ち主なので、代表の試合に初出場しても気負って空回りすることもない。他選手との異質さを大いに発揮して、チーム内に波風を立たせ、かつチームの力になれること証明してほしい。
 
文:佐藤 俊(スポーツライター)