写真撮影/榎並紀行

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不動産会社の営業スタッフといえば明るく快活なイメージ。まあ、暗いよりは明るいほうがいい。だが、筆者が先日引越しをした際、担当スタッフの「快活の域を超えたノリ」に若干戸惑った。言葉を選ばずにいうと、とてもチャラかったのだ。彼は極端な例だとしても、そういえば不動産会社、特に賃貸の営業スタッフにはそっち寄りの人が多い気がする。業界特有の文化なのだろうか? 真相を探った。

業界全体が“怖い”から“親しみやすい”にイメチェン

なお、彼の仕事そのものは誠実で抜かりなく、おかげで良い部屋を好条件で借りることができた。ただ、醸し出す雰囲気や話し方がどうにもチャラく、語尾は終始「っス」だった。特に不快には思わなかったが、その軽すぎるノリに不安を覚えたのは事実だ。

しかし思い返してみれば、過去に部屋を世話してもらった不動産会社の人も、程度の差こそあれ若干のパーティーピーポー感は醸し出していたような気がする。業界的にチャラいノリを推奨する文化でもあるのだろうか?

「いえいえ、そんな文化はありませんよ。ただ、“チャラい”はともかく、“元気で明るい”というのは、不動産会社営業スタッフの必須条件のひとつではあると思います」

そう教えてくれたのは、ヘヤギメ!六本木店の西林店長。(※なお、前述のチャラい営業スタッフはヘヤギメ!と無関係です)

「ヘヤギメ!で営業スタッフを選考する際も、元気があること、自分の意思を快活に伝えられること、この2つは重点的にチェックします。面接の段階で自分を明るくプレゼンできないと、家を売ったり勧めたりするのは難しいですからね」(西林店長、以下同)

【画像1】ヘヤギメ!六本木店の西林店長(左)と内田チーフ(右)(写真撮影/榎並紀行)

「それが前提にあって、さらに最近は業界全体が明るいお店づくり、気軽に相談できる雰囲気づくりを意識しています。昔の不動産屋さんってちょっと怖いな、入りづらいなっていうイメージがあったと思うんです。でも、近年は業界全体としてクリーンで親しみやすい方向にシフトしています。例えば10代の女性のお客様などの場合は、こちらがかしこまって対応すると、かえって居心地が悪いと感じられてしまうこともある。その場合、あえてタメ口に近いフランクな話し方をさせていただくこともありますね」

なるほど、一見チャラついたフランクな物言いも、相手に応じたキャラづくりと思えば合点がいく。となると件の営業マンは、僕を10代の女子大生だと思って接客していたのだろうか。実際は35歳のおっさんなのだが。

ちなみに、かくいう西林店長ご自身はというと、チャラさとは真逆の落ち着いた物腰。語尾もきちんと「です、ます」だ。ただ、気になるのはその外見。細身のスーツをピシっと決め、オシャレなヒゲをたくわえたスタイルはまるでモデルのようである。よく見ると、ほかのスタッフのみなさんも不動産会社には不釣り合いなほどシュっとしている。見た目的には、ビジネスよりもややパーティー寄りである。

「うちの場合、ダサい服装がNGなんですよ。ひと昔前の“ザ・不動産屋”みたいな、ダボっとした感じのスーツとか絶対許されないですね。会社から表だって言われているわけではないですが、上層部が服装に気を遣っているので、現場もおのずとそうなっていくというか。暗黙の了解ですね。あと、当店は六本木という土地柄もあって、おしゃれな部屋を探しているお客様が多くご来店されます。ダサい人にかっこいい部屋を勧められても説得力ないですよね」

【画像2】「だから、スタッフ同士のファッションチェックもけっこう厳しいですよ」と西林店長。「その靴下ないでしょ!とか、僕もけっこう突っ込まれます。店長なのに」とのこと(写真撮影/榎並紀行)

というわけで、不動産会社の営業スタッフのみなさんは、我々が思う以上に外見も中身もセルフプロデュースしているようだ。そうしたキャラづくりが度を超すと、冒頭の彼のようなスタイルに行き着くのだろう。いや、もしかしたら彼だって、本当は暗いのに無理してチャラ男を演じていたのかもしれない。

不動産会社の営業スタッフって、モノを売るというよりサービス業に近いと思うんです。だから、普段の性格がどうであれ、お客さんの前で切り替えができないと仕事にならないですよね。うちの場合は新人時代にかなり濃い研修をやって、そのあたりを叩きこまれます。受付業務のロープレも厳しくて、そこでたいてい今までつくり上げてきた自分が一度ぶっ壊れる感じですね」

そうした努力を経て、今日も明るい笑顔で店頭に立つ営業マン。多少チャラかったとしても、許してあげてほしいっス。

●取材協力
ヘヤギメ!