世田谷で人気なワインと焼き鳥を楽しめる店といえば、ミシュランのビブグルマンにも認定された『床島』。ワインデート向き焼き鳥の先駆けのひとつと言える名店だ。

育成から関わった極上の鶏を丸鶏で仕入れ、チョウチンや、丸ハツ、シビレ(胸腺)やアズキ(脾臓)などの希少部位を含める二十数種もの焼き鳥が堪能できる。

さらに、ひそかな人気メニューに一日四名限定の「水炊き鍋」があるのはご存じだろうか?鶏肉の名手の揺るぎない技に酔いしれよう。



左からつくね、レバー、シビレ、うめしそ、ねぎま。奥は燻製したスカモルツァチーズ。焼き鳥の専門店らしい大きめのポーションが特長。価格帯は1本¥300〜400台が中心
焼き鳥の境地!育成から関わる“床島ブランド”の鶏の希少部位を堪能

食通もうなる飲食店が多い三軒茶屋でもひときわ有名な焼鳥店『床島』は、通りから一本入った閑静な場所に一面ガラス張りのモダンな外観で涼やかに佇む。こだわりは肉の鮮度と焼きの技術。

食鳥処理事業許可証を持つご主人・床島正一さんが、フランスの血統の中から焼き鳥に合うよう改良した“床島ブランド”の鶏を、当日の朝店で捌いて、焼き場に立つ。

その肉質ゆえ味わいは抜群。舌の上でトロ〜ッととろける臭みゼロのレバーや、生後80日程度の若鶏からしか取れない希少なしびれ(胸腺)の濃い旨みに舌を巻かざるを得ない。



卵白をメレンゲ状に仕立てた卵かけごはん¥650
焼き鳥はもちろん、メレンゲ状の卵かけごはんも外せない!

是が非でも食べてほしいのは「ねぎま」だ。ジューシーな肉汁を蓄えた肉はモチッ、対して皮はパリッ、な新食感は衝撃モノ。絶妙なクリスピー感は、東京広しといえども『床島』でしか味わえないだろう。

一串を一品の料理と考えるため、一切れのサイズは大ぶり。それゆえ、皮の食感、中の肉の弾力、上質な肉質の味わいを口いっぱい頬張れる。

そしてこちらも外せないのが絶品の卵かけごはん。味付けには焼き鳥用と同じ秘伝ダレを使用。白身をメレンゲ状に泡立てているのは「〆にもサラッと召し上がっていただけるように」という床島さんのアイデアから生まれた一品だ。



鍋から放たれる芳香に胃袋もつい反応してしまう。まず1杯目はスープと鶏肉だけでいただく
冬のみならず一年中食べたい! 人数限定の水炊き鍋

焼き鳥を専門とする『床島』だが、一日四名限定の「水炊き鍋」も高い人気を誇る。クツクツと沸く鍋のスープは、茨城産の飼育日数が浅い鶏のモモ肉をじっくり炊いたもの。しっかりとした弾力で舌と歯を楽しませる焼き鳥用とは異なり、柔らかな質感を重視するという。

まずはスープを一口。そっとすすると、身体の奥から深い「はぁ〜!」が漏れる。細胞膜にすうっと浸透するようなしみじみとした優しさと高純度のコクが共存した、聞きしに勝る味である。肉も負けじとすごい。

箸を入れた瞬間、しっとりした身はほろっとほどけ、皮はとろんと踊る。ほふほふと湯気を逃がしながら、しばし悦楽に浸る。完全無欠の鍋に骨抜きにされてみてはいかが?



水炊き鍋は選べる串3本と〆がつくコースのみの提供。1人前¥5,400(2人前から〜)

店を取り仕切る床島正一さん。焼き台脇の赤い壺は、創業当初から継ぎ足しで旨みを重ねてきた、お店の命のタレ。東北大震災の際、これを最優先に守ったスタッフがいるほど

スタイリッシュな空間でワインに合わせて絶品焼鳥をいただける



日本酒に造詣の深い床島さんが太鼓判を押した厳選の50銘柄が、今か今かと出番を待つ

合わせる酒も、思わず目移りするラインアップ。日本酒に造詣が深いご主人が厳選する「風の森」や「神亀」などの銘柄や、はたまたソムリエ資格を持つスタッフおすすめのワインに身を委ねるのもいいだろう。



清潔感あふれる客席。コの字型カウンターのみの空間が潔い

オープンしてはや7年。当時はまだワインと一緒に焼鳥がいただけるお店もなかった時代だったが、いまやデートにも焼鳥が一般化。『床島』もビブグルマンに掲載され、押しも押されもせぬ有名店となった。

世田谷エリアでこの店を知らないなんてグルメとして失格だ。一度は足を運んで欲しい名店である。