誤ってダウンロードも許されない?

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児童ポルノの単純所持でついに摘発者が出て、ネット上で、「今後はどうなるのか」と波紋を広げている。誤ってダウンロードしてもダメなのか、といった不安があるようだ。

児童買春・児童ポルノ禁止法改正が2014年7月15日に施行され、単純所持でも1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるようになった。

「姪っ子と風呂入ってる写真もNGなん?」

その後、罰則適用まで1年間の猶予期間が設けられ、警察などは、この間に児童ポルノの画像や動画を廃棄するように呼びかけていた。その猶予が切れて1か月が過ぎたところで、いよいよ最初の動きが出た。

ネットで集めた5〜11歳の外国人女児の全裸画像10点をスマートフォンに保存していたとして、沖縄県警が15年9月1日、那覇市内の無職の男(21)を単純所持の疑いで那覇地検に書類送検したのだ。

報道によると、きっかけは、男が8月2日昼過ぎ、市内のプールで自分のスマホを使って子供の写真を撮るような動きをしていたことだった。その挙動を不審に思った人が110番通報し、駆け付けた警察官が男のスマホを調べたところ、わいせつな女児の写真が見つかった。男は、調べに対し、画像は13年冬から15年8月にかけてネットで手に入れたとし、「子供の裸に興味があった」と容疑を認めているという。

こうした内容のニュースが流れると、ネット上では、「いよいよ来るべきものが来たか」「これからは職質で見ようとする警官が増えるのかな」と反響が広がった。真偽は不明だが、中には、自分の画像などを削除しよう、どうしたら摘発を回避できるのか、といった書き込みまであった。

法改正審議の段階からえん罪などへの不安が出ていただけに、「俺のパソコンは大丈夫だよな・・?」といった声は目立っている。

「姪っ子と風呂入ってる写真もNGなん?」
「16〜18歳はパッと見ても判別出来なくね? この場合はどうなるんだ」
「敵対してる関係者に送りつけて犯罪者にするとかいう荒業が流行りそう」

弁護士は、えん罪のリスクが残る可能性を指摘

こうした具体例を挙げ、警察のさじ加減でどうにでもなるのではないか、といった危惧も相次いでいる。

児童買春事件などに詳しい奥村徹弁護士は、6月13日のブログ記事で、児童ポルノの画像などが送りつけられてきたり、間違ってダウンロードしたりした場合、すぐに削除してもキャッシュが残る問題を挙げる。すると、単純所持の疑いをかけられる恐れがあることになる。ただ、「所持の認識が無いこと」などの理由で、罪からは逃れられるかもしれないともした。

また、奥村弁護士は、日刊スポーツの8月17日付記事で、わが子の成長記録としての入浴写真なども気をつけるべきだと指摘した。「親は処罰の対象にならないが、少し縁遠い人が持っていたとしたら性的好奇心があると疑われる可能性もある」というのだ。

児童ポルノ被写体の年齢については、13歳ぐらいまでは身元が分からなくても摘発の対象になるようだ。小児科医などが第1次性徴などを見るタナー法を採用する警察が多い。今回の事件についても、沖縄県警は、データ化されている画像を調べたか、タナー法を使って判定していたかの可能性がありそうだ。ただ、奥村弁護士は、09年11月13日のブログで日本人は見かけから年齢が分かりにくく、えん罪のリスクが残る可能性を言っていた。

奥村弁護士は、15年9月1日のブログで、捜査権の濫用防止のため警察庁から事前に協議するよう通達が出ていると明かしており、沖縄県警もこうしたことから摘発まで1か月もかかったのかもしれない。今回、書類送検だけで逮捕しなかったのも、濫用防止規定が効いているためではないかと奥村弁護士は見ている。もっとも、8月31日のツイートでは、「弁護士にもわからないことが多い」としており、今後の警察の出方は不明だ。

摘発の経緯などについて、沖縄県警に取材したが、広報室では、「うちは、ネットニュースの取材には対応していない」と答えるだけだった。