サーモンは日本固有の寿司ねたではない!?

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 日本人と言えば寿司! 私も寿司は好きでたまに食べに行くこともありますが、個人的に意外と好きなネタの一つにサーモンがあります。最近は、炙り物やトッピングものまで、バラエティ豊かに進化し、代表的な寿司ネタとして、かなり定着してきた感じもしますが、実は、このサーモン寿司、元ネタはノルウェーの水産業者による啓発事業の成果なのだそうです。

 一見、「えっ、そうなの?」とビックリしてしまいそうだが、よくよく考えてみれば、私がサーモン寿司をデビューしたのが、香港という海外に生活をしていた頃の話だった。何よりさまざまな寿司ネタの中で、同じ魚類でありながらも「サーモン」は「鮭」とは表記されません。そう、「サーモン」と「カタカナ」で表記しております。

 厳密に言えば、その生物学的分類上でも両者は必ずしも同一とは言えないようで、食材としてみても、生食に適さない天然の「鮭」と生食で行ける養殖の「サーモン」とでは、その意味自体がかなり違うようなのですが、いずれにせよ、カタカナ表記のネタという時点で、そうした違和感があるハズなのに、慣れてしまうとそうした疑問にも至らないから不思議なものです。

 とにかく、そう思うと、サーモン寿司はある意味「和洋折衷」的な進化を遂げた寿司の一つと言えるのかもしれませんが、ただ、海外にいると、たまにこうした変遷とは関係なしに和食文化が勝手に悪用されることも少なくありません。

 そう言えば、来月より米国ニューヨークでは生魚の刺し身や寿司の提供が禁止されることになったと言いますが、レコードチャイナでは、これを受け、韓国のネットユーザーの間では、ニューヨークの和食店の9割以上は韓国人経営で、これをターゲットにした日本側のロビー活動の成果だろうと日本に対する批判的なコメントもみられたとありましたが、個人的には、この食材の処理の方法の変更よりもまず「9割以上が韓国人経営」という点に驚きを隠せません。

 いや、香港にいた時も当時から怪しい和食レストランは数多く見ておりましたので、実際、こんなものなのかもしれませんが、以前、ロサンゼルスで韓国人が経営する和食店において日本で有害扱いされている魚を「ホワイトツナ」と称して提供していたことが問題視された時も、訴訟対象に上がっていた韓国人経営の和食店だけで100店舗以上と上がっておりましたので、やはり、相当の和食まがいの和食屋さんが海外には多いのだろうというのは分かると思います。

 そう思うと、海外とのクロスオーバーから和食文化が進化するというのは大変喜ばしい反面、やはり、こうしたまがいものによる誤用は頂けませんよねぇ。この点においては、きちんと何かしらの解決策を期待したいところですが、和食はユネスコの無形文化遺産にも登録されましたので、伝統を守りながら、この世界の中でどのような進化を遂げていくのか、非常に興味深いところではあります。近年、回転寿司でも、いわゆる「代用魚」としてこうした外国魚や深海魚が用いられることも少なくないようですので、もしかしたらこれらの中に、第二のサーモンが登場するのかもしれませんね。

著者プロフィール

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

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