ダイソー「100円本」のクオリティがすごすぎる! 100円で作れるワケを中の人に聞いてみた

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全国に約2800店舗を持ち、海外にも25カ国、840店舗を持つ(2014年3月現在)、超有名100円均一ショップである「ダイソー」。取扱商品は7万種類(アイテム)あり、月に700種類ずつ新しい商品を増やしているそうです。いつ訪れても私たちを楽しませてくれる100円均一ですが、実は「本」も販売しているって知っていましたか?

ダイソーは、ナンプレブックやパズル雑誌、幼児向けと小学生向けの学参商品など、様々な種類の書籍を取り扱っており、累計発行部数は約2億冊(年間約1,700万冊)を超えるのだとか!

しかも中身も、100円とは思えないほどのクオリティの高さで、読み応えもたっぷり!
なぜこれが100円? 本当に100円で良いのですか〜!?

以前からダイソー本のファンであった筆者は、いてもたってもいられず、本を出版している「大創出版」さんにお話を伺いに行きました。今回は、ダイソーの「100円本」の魅力をたっぷりお伝えしたいと思います!

【100均】安いからと侮れない! 手軽にオシャレな部屋に生まれ変わる「100円ショップ」活用裏ワザ

ダイソー本の魅力とは?

まず、インタビューの前に、ダイソーの100円本の魅力を、筆者の独断と偏見でお伝えしたいと思います。

27歳女、職業“へっぽこフリーライター”が、ダイソーで販売されている数ある本の中で、特に気に入っているのが以下の3冊です。

筆者は、大人のドリルシリーズ?『間違ってませんか? 小学校で教わった日本語』、英会話ブックシリーズ?『はじめての英会話 基本フレーズ575』、新書判シリーズ?『品格のある気づかいのススメ』、こちらの3冊が特にお気に入りなのですが、どうです? ライターには必須の3冊でしょう?(笑) 

これは冗談としても、『間違ってませんか? 小学校で教わった日本語』は、大人なら絶対に書ける(はず……)の漢字から、誰もが知っているはずの日本の文学、ことわざ・敬語までを問題集の形で網羅しており、この一冊があれば、大人として正しく美しい日本語が使えるようになります。小学校で習ったはずの漢字でも、意外に思い出せないもので、丁寧な解説付きの問題集で、しっかりと復習することができました。

また『はじめての英会話 基本フレーズ575』は、あいさつなどの基本表現を始め、ショッピングやオフィスを舞台にした簡単な対話の練習もでき、なんと本書に掲載されている会話例文の音声は、一冊丸々大創出版のホームページより無料でダウンロードすることが可能です!
そして3冊目の『品格のある気づかいのススメ』は、大人の常識&マナーを49個、丁寧に教えてくれる一冊です。間に挟まれているキャビンアテンダントさんのコラムも魅力的で、ちょっとした工夫で「大人力」がググッと上がる魔法の本です!

なぜ、100円の本を販売することに?

このように、一冊一冊、とても細かく、また読みやすく作られているダイソーの100円本ですが、そもそもなぜ、100円の本を販売することになったのでしょうか?

大創出版の専務取締役 西田大さんにお話を伺いました。

西田大さん(以下、西田):「弊社の社長は、元々教科書会社の出版社に勤めていました。ですが、“少子化”の問題が深刻になり、新しい販売先を探していたところ、知人から100円ショップの話を聞いたらしく、「ダイソーはすごくたくさん量を売る会社だよ」ということを教えて頂いたのだそうです。その当時ダイソーは、「本」という分野が全くなかった。そこで提案して制作したのが今も大人気の「ミニミニ辞典」(現在はミニ辞典)シリーズです。これがほぼ第一弾。「ミニミニ辞典」シリーズを本の分野でやったところ、非常に反響があり、メディアにも取り上げて頂いて、おかげさまですごく売れました。

ですが、相当の量をつくらなければ、この頁(208頁)数で100円というのは難しい。当時ダイソーの中でも非常に大きな発注になり、約1200万冊をトラック20台くらいで何日間にわけて納品しました。」

―――結果的に、非常に大きなビジネスになり、それを機に、いくつか「本」というテーマを提案するようになったのだとか。

西田「それを機に平成13年、大創出版が設立されました。そこからはもう、ミステリーやロマンス小説まで、実に様々な本を制作しました。」

―――ちなみに人気がある商品って……?

西田:「商品の歴史で言うと、「ミニミニ辞典」がすごく売れました。その次は出版とはずれてしまいますが、PCゲームです。その次が「CDで学ぶ会話シリーズ」で、約20刷まで行きました。あとは「学習ドリル」ですね。ドリルって、子どもを持つ親御さんじゃないと買わないので、「売れるのか!?」と心配されたのですが、計算ドリル、漢字ドリル共に非常によく売れました。

ちなみに今人気があるのが、幼児系商品の「幼児のおけいこシリーズ」、 「シールブック」、パズル誌や「ナンプレブックシリーズ」です。」

100円という価格で本が販売できる秘密

―――でもこんなに細かく、また読みやすく、読み応えもたっぷりで作られている本を、100円という価格で販売するのは非常に難しいはず……。一般の本にあるカバーや売上カード(スリップ)、帯、出版案内がないため、少しは製本代が安くなるのかな? また書店には流通しないので、卸業者である取次店と書店の取り分がないからかな? 驚異的な刷り部数で販売しているから? ……と考えても、まだまだ100円で作れるとは考えがたいのですが……。

西田:「100円で本を販売するのは、徹底したコスト管理が必要ですし、正直厳しいです。
例えば「紙」。もっと良い紙を使いたのは確かですが、ある程度コストを合わせなければならないので、シリーズが違っても、統一した紙を使っています。サイズもある程度合わせています。

あと、「印刷」ですが、書籍って、16の倍数の頁数で作るのが基本ですよね。ですが、うちのメインの印刷会社さんは特殊な機械を使っていて、32の倍数が得意なんです。32の倍数で作れば、16の倍数で作るよりコストダウンができる。

また、取次の会社がいない、というのは確かに大きいかもしれませんが、紙代、印刷代、編集費、一般管理費等、そういうのが全部入って利益を出さなければならないわけで。色々な努力が必要です。

それでも我々編集サイドは、もうちょっと頑張りたいっ! と言うのが本音です(笑)。どの会社もそうなのだろうけど「制作側」と「管理側」の戦いは常にあります。今大人気の「シールブック」も製造会社を探すのに、4年くらいかかったんですよ。」

小売業と出版界の違い

ダイソーは、小売業なので、出版界とはかなり感覚が違ってくると思います。」西田専務は、そのようにおっしゃいました。

西田:「例えば、仕入れた商品は売り切って当然で、何回も増刷するのは当たり前の世界です。初刷3万部だけで終わることはまずないです。3万部では元が取れない。10万部はいかないと! シールブックで30万部、高島易断の暦本で50万部は売っています。入社してすぐの編集部のメンバーも、ミリオンセラーを1年で達成しました。それだけ売っても、まだまだ……(笑)。本屋さんの中のランキングではなく、ダイソー全商品の中のランキングで戦わなければいけないのです。」

―――書店で販売するわけではないので、色々な部分が出版界と異なるのですね。

西田:「企画の立案から、売り方まで。「自分が作ったものが、お店でどう売られているのか?」そこまでちゃんと考えなければならないのが編集部の基本スタンスです。100円だからこそ、すごくシビアな世界ですが、「100円だからこんな(質の低い)本なのね〜」と思われるのはすごく嫌で……。みんな「良い物を作る」という熱い思いは一緒です。

うちは基本、シリーズで制作しているのですが、一人一人それはもう、様々なジャンルを担当していて、20タイトル同時進行+別のシリーズを担当……なんてこともあります。これだけたくさんの量をこなすとなると、それだけ全部に目を通さなければならず、企画、デザイン、売り方、校正など同時進行でこなしているのが現状です。部員は6名おりますが、みんなでフォローしあって、みんなで頑張っています!」


「活字は日本の文化」。この言葉を大切に、日々本を制作している大創出版の方々は、皆さんそれぞれ「もっと良くしていこう!」「もっとお客様に喜んでいただくものを作ろう!」と、試行錯誤しながら熱い思いで本を作っておられる様子が、取材を通して伝わってきました。実際、100円で本を販売するのはかなり大変だそうです。

ですが、「100円の本を作ろう! という感覚はなくて……。普通に書籍を作って、前の会社ではそれが600円〜700円だったけれど、それが結果的にうちの会社にきたら100円だっただけなんです」と、にこにこしながらおっしゃった編集者の方の言葉がとても印象的でした。

ちなみに、ダイソーで扱う全ての商品に言えることですが、ダイソーの本は「一期一会」なのだそうです。大創出版では直接販売をしておらず、また、次々に新シリーズも刊行されるため、入れかわりも早いのです。また、店舗によって取り扱っている本も少しずつ異なります。もし気になる本を店頭で見つけたらすぐにゲットすることをおススメします! 

皆さんも良かったらぜひ、ダイソーへ行って、本をチェックしてみて下さいね。