宮市はなぜ今もアーセナルにいるのか、と越後氏。クラブ側には手放したくないなんらかの理由があるのかもしれない。(C) Getty Images

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 ひと足先にプレミアリーグが幕を開け、8月第4週の週末にはブンデスリーガやリーガ・エスパニョーラがスタート。そして今月末にはセリエAが開幕と、欧州のサッカーシーンがいよいよ本格的に動き出した。
 
 今シーズンもいくつかのリーグで日本人選手がプレーする。柿谷や原口ら新たに海を渡ってチャレンジする選手もいれば、ハーフナーや長谷部など欧州内で新天地を求めた選手もいる。
 
 ただ、彼らが置かれている状況は、一時期に比べて、段々と厳しくなってきている印象を受けるよ。特にブンデスリーガでは、今も10人以上の日本人選手がプレーしているけど、このリーグはチームの質に大きな差があるよね。
 
 選手としてよりステップアップしたいのであれば、優勝争いができたり欧州のカップ戦で戦えるようなクラブに所属しないことには、あまり意味がないんじゃないかな。レベルが高くないチームにいるぐらいなら、Jリーグでやっていたほうがよっぽど本人のためになるよ。
 
 マンチェスター・Uで3年目を迎えた香川は、開幕戦でベンチに入ったけど、出場はなしと、明らかに苦しんでいるよね。マンUと同様に新監督を迎えたミランの本田も、ここ最近はプレシーズンマッチでゴールを決めているとはいえ、確固たる地位を築けるかは今後の活躍次第。ともに、チーム内での序列を上げるためには、実戦でのインパクトが必要不可欠だよ。
 
 日本のトップレベルの選手たちが、所属クラブで中心的な役割を担えていない。インテルの長友も新戦力の加入で熾烈なレギュラー争いの渦中にいる。たしかに、マンUやミラン、インテルは欧州の強豪クラブだ。そう簡単にスタメンを確保できないのは当然だろうけど、こうした名門クラブで軸になれる選手がいるのかどうかが、海外における日本人選手の「値打ち」として見られるんだ。
 
 改めて認識すべきなのは、エージェントの仕事ぶりが幅を利かせる傾向が強い日本人選手の欧州移籍は、純粋に実力だけで評価されているとは一概に言えないということだ。前回のこのコラムでも触れたけど、エージェントは選手を移動させて利益を得ている側面が大きい。
 
 言うなれば、彼らが生活していくためには移籍が欠かせないんだ。そう考えると、いくら欧州移籍を叶えたとしても、長い目で見れば、本当の意味で選手個々の成長や将来的な日本サッカーの強化にはつながっていないのではないかと疑いたくもなる。
 
 そういう意味で、現在の状況は危機的と言ってもいいかもしれないね。前所属クラブで試合に出ていた選手が、移籍先ではベンチを温めている状況はどうかと思う。スポンサーという「お土産」を付ければ、ビジネスとしてより成功したことにはなる。それも本人の実力の一部として捉える意見もあるし、厳しい環境でレギュラーを奪い取ってこその成長だという考え方も十分に分かる。
 
 とはいえ、限りある選手生活のなかで、試合に出られない時期なんてないほうがいいに決まっているだろうし、ビジネス先行型の移籍は、結果的に選手の成長速度を鈍らせる遠因になっているかもしれない。
 
 エージェント主導でビジネスが優先され、選手の強化に支障をきたす――。そういった現象はブラジルや他の国でも実際に起きていることなんだ。
 
 移籍とは本来、選手の実力だけが判断材料となり、初めて成立するもの。それぞれの値打ちで取引されなければいけないのに、陳列ケースに並べられ「よかったら買ってください」というのは、違う気がするよ。しかも日本人選手の場合は、「オマケ(=スポンサー)付き」でなければ買ってもらえない現状なんじゃないかな。それでは寂しいよね。