10月6日全国ロードショー
監督・脚本:北川悦吏子
プロデュース:岩井俊二
出演:中山美穂 向井 理 桐谷美玲 綾野剛
(C)2012「新しい靴を買わなくちゃ」製作委員会

音楽監督は坂本龍一、音楽はコトリンゴ。

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夢のような恋の映画です。

パリ在住で、街の情報を載せた日本語フリーペーパーのライターをやっているというアオイ(中山美穂)は取材の途中、日本人観光客セン(向井理)のパスポートを踏みつけて破いてしまいます。
センはスラリと背が高く、顔が小さく、とてもかっこいいカメラマン。アオイより年下です。
パスポートを踏んだ拍子にヒールが壊れてしまったアオイの靴を、直してくれる紳士的で頼もしい青年です。
その日、アオイはセンと夕飯を一緒にとることになり、しかもその夜、センはアオイの家に……。
そのまま翌日も翌々日もふたりは一緒に過ごすことになります。
パリの街で行動を共にするうち、ふたりは誰にも言えずにいたお互いの心の内をさらけだしていきます。アオイがパリにひとりで暮らしているわけを。センのカメラマンという仕事をこれからどうするべきかという悩みを……。
たった3日の間に急速に引かれ合っていくふたり。でも、旅行でやってきたセンは帰国しなくてはなりません。
アオイとセンの恋はどうなるのでしょうか。

隅田川に新東京タワーもいいけれど、巨大な新東京タワーは恋を語るにはちょっとマッチョですから、やっぱりセーヌ河にエッフェル塔のほうがロマンチックです。

夢のようなシチュエーションにワク、キュン

夢のような、というか夢です、夢! 夢夢夢ゆめーーーっ!
年下のイケメンと3日間ずっと一緒。Inパリ。
バーで飲み明かし、夜の街を散歩、朝のコーヒーを飲み、一緒に料理を作り、写真を撮ってくれようとするのをやんわり拒否(自分の暗い過去をにおわせる)、エッフェル塔を見てロマンチックな語らい、そして……、きゃー。
中山美穂さんの衣装、部屋のインテリア、キーになるロジェ ヴィヴィエの靴、料理、パリの街並、・・・アイテムのすべてが心地よい。
こんなにもすばらしい展開を描いたのは、監督であり、脚本家である北川悦吏子さん。言わずと知れた恋愛ドラマの大家です。
ドラマ「ロングバケーション」「愛していると言ってくれ」「ビューティフルライフ」などなど北川さんの描く恋には、ハッピーエンドでも悲恋でも、いつもドキドキさせられてきました。
北川さんって本当に自由な人。こんなにも女子にうれしい展開を、草原をハイジがダッシュで走っていくような勢いで、描ききってしまえるのですから。
夢を見るのは自由。見たもの勝ち!と背中を力強く押してくれている感じがします。

映画のヒロイン・アオイも、パリでフリーライターというステキな環境にいるようで(住んでる家もすばらしくセンスが良いの)、ほんとは悩みを抱えていて、でもセンとの出会いによって、自分を抑えつけていたものから解き放たれて、「新しい靴を買わなくちゃ」そして歩き出さなくちゃ、というような前向きな気持ちになっていくのです。
北川さんは、固くなった心をほどいてくれる敏腕マッサージ師のようです。

家で寝ている時間を映画館に行って、2時間、いい夢見ちゃいましょう。
マッサージ2時間やったら1万2千円はしますから、映画料金1800円は
かなりお得です。

とことん王子様の向井理

北川さんの手腕のすばらしさにキャスティングがあります。
なんといってもセン役の向井理さんがいい。
彼はこの映画ではとことん王子様です。
パリの街に立っている姿が清々しく美しいのに、時々、死語みたいな言葉を発する外しがたまりません。
そして、オンナがこんなふうになったらいいな、こんなことしてほしいな、言ってほしいな、と想像したことに、ことごとく気がつく勘の良さと、自然に乗っかってくれる優しさがあります。
男性は採り入れていただきたい。

向井理さんは朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の実直な役で注目された人気俳優。現在30歳。
大学で遺伝子工学の勉強などをしていたという知性派なので、政治経済をネタに理知的な会話をしないとバカにされちゃうかも・・・と緊張してしまいますが、映画の中では、そんな感じを全く見せません。ひたすら優しげです。とことんオンナの夢につきあってくれそうです。
向井さんは大学卒業後、俳優になる前はバーに勤めていて、そこでスカウトされたそうなので、バーではきっとオンナの話をカウンター越しに、うんうん、と聞いていたに違いないと想像してみます。オンナに合ったオリジナルカクテルなんか作ってくれたりもして。
そう、そんな人だからこそセン役にピッタリなんですね。

そうそう。北川さんの妄想パワーのすごさを感じたのは、センがアオイの家で眠る場所!
ファンタジーです。
王子様がこんなふうに目の前で眠っていたら、エッフェル塔を一気に駆け上がるほどテンション上がりますよ。

さらに、向井理さんのほかにもうひとりステキ男子が出てきます。

振り回し系の綾野剛

もうひとりのステキな人。それは綾野剛さん演じるカンゴというパリ在住アーティストです。
彼はセンの妹スズメ(桐谷美玲)の恋人。
センがパリにやって来たわけは、彼に会いたいスズメのお供だったのです。

カンゴはセンとは反対に、オンナの思い通りにならないタイプ。逆にどんどんオンナを振り回します。でも、さすがアーティストで刺激的な体験をさせてくれるので惹かれてしまうんですね。カンゴの住むアトリエ兼住居がまたステキでね〜。

カンゴの切れ長の瞳の中は見えそうで見えなくてスリリング。スズメの腕からすり抜けて動き回る背中には、羽が生えてるみたいだけど、天使のそれなのか悪魔のそれなのか、わかりません。
そんな役を演じている綾野剛さんも、朝の連続テレビ小説「カーネーション」で人気が上がった俳優。
妻子がいながらヒロインと恋仲になるというちょっとインモラルなシチュエーションの役を演じていました。
デビューは「仮面ライダー555」。ミニシアター系の映画にも多く出演し、映画「クローズZEROII」、「るろうに剣心」などではアクションのキレも見せています。またゲイの役や少女を虐待する役など難しい役にも挑み、芸域の広さのある俳優です。
彼もまた今年30歳。

そう、「新しい靴を買わなくちゃ」を支えているのは、82年生まれの朝ドラ男子ふたりなのです。

向井理 綾野剛の共通点とは!

向井理さん、綾野剛さんは共に朝ドラ男子。NHK朝の連続テレビ小説でブレイクしました。
ふたりとも同じ82年生まれです。
82年生まれの俳優は、82年組などとも言われるくらい、才能ある人が多いんです。小栗旬さん、瑛太さん、塚本高史さん、成宮寛貴さん、藤原竜也さんなどがいます。俳優じゃないですが北島康介も82年生まれです。
その中で向井理さんは2月7日生まれ、綾野剛さんは1月26日生まれで、共に水瓶座という共通点もありました。
朝の占いなどで「今日のラッキー星座は〜〜」なんて言っていて、自分は何座だ? どんな運勢なんだ? と気になるやつです。
誕生日によって12の星座に分けられます。
中で水瓶座生まれの人は、
ベストセラーの占い本、石井ゆかりさんの「水瓶座」(WAVE出版)という本の帯には
「宇宙人とも仲良くなれる。
既成概念にまったく左右されず、
ゼロから思考する人々。」
とあります。
誰にでも偏見なく自分から歩み寄っていくというような人たちということです。
これをさらに押し進めて考えると、
こんなこと無理! NO! とは考えないで夢を自由に見ることのできる人。
だからこそ向井理さんと綾野剛さんは北川悦吏子さんの夢世界にもしっくりハマった。
しかもふたりとも、その世界にちょっとクールな距離感をもって接していて、恋をベタ甘にし過ぎない。
向井理さん、綾野剛さんは、
夢の恋愛ストーリーに新しいフレーバーを加えてくれた、
待ちに待ったオトコたちなのです。

あ。なんと。プロデューサーの岩井俊二さんも1月24日生まれの水瓶座男子でした。
(木俣冬)