正確には、メッシをCFで使ったというよりは、上図のように少し下、中盤寄りであったり、もはや固定されたポジションは無い、という感じで使った、という事になりますが、これによってメッシは幅広く自由に動けるようになり、右サイドにいる時よりも起点を作りやすくなった。そしてその効果として、イニエスタやシャビなどもよりプレーしやすくなり、中盤、特にバイタルエリアでの起点力や突破力が大幅に向上した。

更にそれによって相手を中央に引き寄せやすくなり、サイドに大きなスペースを生み出させるという事に成功した。中央、バイタルエリアのところを起点として、そこからのパスを受けたサイドの選手が斜めの動きでゴール前へ侵入。この攻撃のパターンの完成が、グアルディオラのバルサに黄金期をもたらした1つである、という事が言えると思います。メッシ・システムの完成とも言えますが、これはトータルフットボールの1つの条件であるとも言えます。

トータルフットボールの実現には、ポリバレント性然り、ハイプレスの威力然り、様々な厳しい条件を満たす必要性がありますが、圧倒的な個の力でボールの収め場所となれる、起点となれる、そういう選手が1人は必ずいる、という事も重要な条件の1つとなっていて、メッシがそういう選手であるという事が、グアルディオラのバルサにトータルフットボールへの道を開かせたと言えると思います。メッシを軸として他の選手も流動的に動くバルサの完成ですね。

多くの選手がスタートポジションとは異なる場所で主にプレーする。そのズレを組み込んでしまったシステム。しかし、その出発点となるのは、その実現性の重要なファクターとなっているのは、メッシという選手の存在であり、そのメッシを軸としてグルグル回る、ローテーションする、それがグアルディオラのバルサの変幻自在性の正体であったと言えます。そしてこの事は、バルサ対策が成熟してくるまでの間、まさに鬼のような強さを発揮しました。